宵闇姫

宵闇姫

記憶


無鉄砲で、朗らかで、好奇心のままに動き回っていた子供の頃。

転び、ぶつかり、どうすれば怪我をし、どうすれば痛いか、
そしてどうすればそんな思いをしないで済むか、そんな事を少しずつ覚え。

恐怖心に身を竦ませることも覚え。

そして、何時の間にか記憶に蓋をすることも覚えた。

ゲームのリセットボタンのように。

人生にはそんなものはないのに。
それを、今になって、ようやく、もったいない事をしていると思うようになった。

どんなに痛い思いをしても、同じ痛みはない。
私は、同じ状況でも同じ痛みを感じないで済むよう、よけ方を覚えたから。
私は、同じ痛みを味わせない。
どうしたらそんな痛みが生まれるか知っているから。

もし、内臓を引きちぎられるような痛みを味わっても、
気が狂うような喪失感に襲われても、
私はそれを忘れない。
だから私は同じ痛みに出会わない。

忘れない。
全ては私の中で、私自身になる。今の私を、私は否定しない。
否定しないからこそ、私は罪は贖い、喜びを感謝できる。
どう伝えていこうか。
それを考えていく事さえ出来る。
私は何が出来るだろう。
何を、したいだろう。

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