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2026.06.04
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It's So Hard To Say Goodbye




Vol.1「成希」(富山県・氷見市)
【2024年5月公開記事】

 いま、食通たちが熱い視線を送る富山県・氷見市の「成希」(なるき)。割烹料理と握り寿司で構成される「おまかせコース」(¥15,000~)を提供している

 富山県氷見市は能登半島の付け根にある。このたびの能登半島地震では石川県輪島市や珠洲市、七尾市などが多大な被害を受け、クローズアップされているが、実は氷見市も震度5強に襲われ、断水も長く続いた。

 その氷見市にあるのが「成希」である。氷見市は冬のブリで知られるが、氷見漁港には季節を問わず、富山湾や日本海の海産物が毎日数多く水揚げされ、金沢の料理店も氷見の魚を使うところが多い。富山県は2023年、新田県知事が「10年かけて寿司といえば富山と呼ばれるようになりたい」というプロジェクトを発足した。私も富山県にはずいぶん足を運んでいるが、白エビ、ホタルイカ、紅ズワイがにといった海の幸の豊富さには毎回驚く。

 だが、富山の寿司はなまじ食材がいいだけに、江戸前寿司のように「仕事」といわれる技術でカバーするより、富山産のうまい米のシャリに新鮮な富山湾の魚をのせただけの寿司が多い。それでリーズナブルなのだから、富山寿司の魅力は認めるのだが、この素晴らしい食材に仕事が加わったら、鬼に金棒ではないかと私は思っていた。いまでも県内にそういう店はいくつもあるし、食べログやミシュランでも評価されているが、実数はまだ少ない。そんな中で一部のフーディーが注目し始めているのが「成希」なのである。

 主人の滝本成希さんは氷見で生まれ育ち、音楽関係の仕事をしていたが、イギリスで腕前を試したいと考えて渡英。約6年間暮らす中、アルバイトで日本料理店の寿司部門で働いたことをきっかけに、帰国してから本格的な寿司修業に入った。最初に入った銀座の老舗「久兵衛」では31歳にして一番下。10歳以上年下の先輩から学びを得る毎日だった。

 「銀座本店には60人以上の寿司職人がいて、一回転130人。土曜昼には3回転するような店でしたからスピードをもって仕込みをすることを学びました。8年いましたが、最後の一年はホテルオークラや大阪帝国ホテルで仕込みから握りまで体験しました」

 その後、ミッドタウン日比谷に出来た「鮨なんば」で大将の難波英史さんと板場に立ち、久兵衛とは違う難波スタイルのこだわりを学んだ。そして最後の一年間、新橋の日本料理店で日本料理の修業を積み、2022年7月に生家で開業した。



 「母がコンビニをやっていた場所を改装したので広いんです。こぢんまりとすることも考えたんですが、地方でやるのなら家賃が高い東京ではできない使い方をしたいと思って。でも、いまは半分も使っていませんけれど」

 東京での修業を活かしながらも、氷見や能登をコースで表現したいと考え、魚は氷見港で揚がったものが中心。

 「氷見には庶民的な寿司屋が多い中で、うちは高いほうかもしれません」というが、これだけの内容で15,000円とは、値段がすべてとは言わないものの、東京ではあり得ない。しかも、先述したように富山の魚に江戸前仕事が加わった、鬼に金棒の店なのである。

 この日は、富山産の甘海老に花わさびを和えた酒肴からスタート。白バイ貝の磯部焼、氷見のたけのこ、能登牡蠣のオイル煮など、地元の食材が続く。それは握りに入っても変わらない。これからが旬の白エビや、マグロは氷見で揚がった20キロクラスを漬けと中トロで。だが、白眉は七尾の稚鮎の酢〆。コハダとは違った旨さを堪能した。

 寿司のお供はもちろん富山の日本酒。地元の氷見唯一の酒蔵である曙の純米吟醸「獅子の舞」から始まり、千代鶴「恵田」、三笑楽の純米酒など、東京では入手困難な酒を滝本さんのおまかせで楽しんだ。

 「今回の地震では、うちも一週間断水して営業できませんでしたし、港周辺には赤紙が貼られて解体しなくてはならない家もたくさんあるし、海底の隆起や地滑りで漁港も被害にあっています。1月はブリの最盛期でしたが、地元で消費できずに値段も下がりました。しかし石川県の方々にくらべれば氷見は大した被害ではない。私も炊き出しに参加しましたし、声高に語らないのが富山県人の特性なんです」

 道路の復旧も進み、氷見市の観光客の受け入れ体制は進んでいる。これからはいわしやマグロ、真鯛が美味しくなるし、近辺には温泉もある。成希をデスティネーションレストランとし、冬の氷見とはひと味もふた味も違った旅が楽しめる季節である。

「成希」(なるき)
住所:富山県氷見市幸町32-31
TEL. 0766-74-5151
完全予約制





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Last updated  2026.06.04 00:00:12
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