夢と花と風

夢と花と風

2007.01.15
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カテゴリ: エッセー


父が開拓者として彼の地へ居を構えたのは昭和30年5月。

映画・北の零年を観た。
私が見てきた父の開拓は映画で観るより遙かに厳しい現実があった。

映画は映画でしかない。
あくまでも「観る人のための作り物」なのかも知れない。
それはそれでいい、映画なのだから。

食べるものがない。
病気になっても薬も病院もない。

4歳だった姉は肺炎を起こしたった一夜でこの世を去った。
私はそのとき3歳だったが、お葬式の時の光景を覚えている。

お坊さんの後ろに祖父が座り私はその膝に抱かれていた。
父は私の左に、その向こうに母がいた。

部屋の祭壇の左にあった窓から西日が眩しかった。
そんな姉の命日は節分の日。
真冬の寒い日だったに違いないがそのことは記憶にない。

そんな父が切り拓いた土地は今、開拓前のように原野に戻りつつある。
早春の牧場跡にエゾシカが遊んでいた。
夏にはシロツメクサが一面に咲いていた。
でも今はその面影さえ消えた。

私はそれでいいと思っている。
そこにきっと父が戻れるように思うから。
開墾の時のまま父はあの地に棲みつくだろう。



エゾシカ

エゾシカ

廃屋を守かのようにエゾシカがいる。
一定の距離を保ち、なにげない眼差しで。
カタクリの咲く林

父が愛した森に咲く。


シロツメクサ

シロツメクサ。
この地は毛細血管のように暗渠を埋め込んだところ。





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Last updated  2007.01.16 18:47:05
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