いつか木を植えたい

いつか木を植えたい

卒乳、母太る


それはもうアッサリと乳離れした。元々おっぱいに執着のない赤ちゃんだったし、少し前から母乳自体もあまり出なくなっていて、お昼寝時の添え乳のみになっていた。
おっぱいに吸い付いて一生懸命吸っている時、咥えたまま眠ってしまった時のあの可愛いお顔を、もう見られないのかと思うと寂しい。どんどん赤ちゃんじゃなくなっていってしまうんだなあ、と。

でも、ある面では、よっしゃー!!である。
妊娠中から授乳中、母体最優先で、ヘルシーな食事を心がけてきた。
私の元々の好物は、嗜好品的なモノが多い。
コーヒー。勿論ブラック。妊娠前は1日5杯以上嗜んでいた。お茶請けにビターチョコ2、3コもあれば至福。
辛い物好きで、何にでもタバスコやブラックペッパーをかけて食う。
当然、酒好き。ビールと安い白ワインとウィスキーとジンと・・・。おつまみにチーズ、ナッツ類。
いかにも、母体に悪そうなモンばっかである。
そういったモノを、母として、約2年近くも我慢しておった訳だ。


卒乳が確定した翌日、やっと寝付いた赤ん坊の傍らからそおぉぉ~っと離れ、リビングへ。1、2時間ですぐにまた夜泣きで呼ばれるだろうが、その僅かな時間に、1人缶ビールで祝杯を挙げた。
くうぅぅぅ~っっ、きやがるねぇ!!
1年間、本当によく頑張った、私!えらいぞ、私!
いつ赤ん坊が泣き出すか、ドキドキしながらも缶ビール2本目を開け、つまむモノも欲しいな、と冷蔵庫をあさる。
3本目の途中で、お呼びがかかった。本日はタイムアウト。

翌日、味を占めた私は、再び夜中の1人酒。
翌々日、ビールを箱買い。冷凍ピザとタバスコも。
更に次の日、セールのワインとチーズを買い込む。

昼間は、またコーヒー5杯ペース。3度のまともな食事は、あまり摂らなくなった。胃が痛くて、食べたいという気がおきない。
離乳食作り、捗らない息子の食事に、毎食1時間以上もつき合い、自分の食事に意欲が湧かなくなってしまったというのもある。息子の残り物を台所で立ったまま口にする程度。

その分を夜中に、酒のつまみで埋め合わせる。
・・・・・。
止まらなくなった。酒も、食欲も歯止めが利かない。
いつしか、夜中に泣きながら酒を煽り、つまみを貪り喰う、世にも浅ましき者に成り果てていた。

気持ち悪るぅ、食べ過ぎたぁ、飲みすぎたぁ、と毎晩、夜泣き息子を抱いて寝かしつける。
時には、ごめんね、こんなダメなママで、と泣きながら。
この子は、何故こんなにも泣くんだろう、何故寝ないんだろう、何故ご飯を食べないんだろう。もっとちゃんとしたママに育てられていたら、幸せだったろうに、ごめんね、と。


何が恐ろしいって、その時はまだ、自分が浅ましき姿を晒している事に、全く気が付いていなかった事だ。
単に、涙も酒盛りも、気持ちのいい密かなお愉しみ、としか思っていなかった。普段育児を頑張っているのだから、これ位、当たり前のご褒美だと思っていただけだ。


異変に気付かぬまま、季節は冬へと移る。

あれっ?冬物のパンツが穿けない。これも穿けない。全部縮んだのか?←バカ。
そこで、もしや・・・と思い至った。
体重計に乗る。えええ?体重計も壊れた?←大バカ。

息子が卒乳してからたった3ヶ月で、6kgも増えていた。
妊娠中、出産までに増えた体重は7.5kg。
更に続く3ヶ月で2kg増。つまりは半年で、妊娠もしていないのに、8kgも増えたのだ。
笑うしかない。あははははははははぁ~~ぁ。


母乳ダイエットは、天然にして最強。それを止めた訳だから、太る要素は勿論あった。それにしても、短期間でこの増え方は尋常ではない。


昔から、何かあっても溜め込むタイプだった私。周りに「ヘルプ」を出すのが、とてもヘタクソだった。
独身時代のストレス解消法は、親しい友人と居酒屋で愚痴を言い合う事。大体が、聞き役だった。相手が10話す合間に私も1か2、愚痴る。その、1か2が、とても大切な事だったのだ。

酒なんか、なくても良い。私に必要だったのは、話を聞いてくれる相手と、自分自身の状態を認識して、それを話す意志だったのだ。


自分の気持ちを話せる、親しい友人達とは、遠く離れてしまっている。
新しい土地で、何人かのママ友は出来たけれど、気持ちを曝け出せる程、親密な関係になるのは難しい。
病から完全に回復する事はないであろう実家の母に、これ以上心配をかける訳にはいかない。
ご主人様は・・・・・。


私は、自分にストレスがあるなんて、気が付きもしていなかった。気付きもしない程、必死で頑張り続けてしまっていた。 



息子が3歳を過ぎた頃、ママ友とお互いの子の新生児の頃の話をしていて、母の入院、息子が寝ないで泣いてばかりいた事を話した。何気なく話したが、実は母の事を他人に打ち明けるのは初めてだった。
すると、そのママ友は、「本当なら、産後うつだったんじゃないの?よく頑張ったね」と、言ってくれたのだった。

私は、初めて自分にストレスにあり、そして、それは決して私が「最弱の母」だからでも、母としてダメだからでもない事、だから、他人に打ち明けても責められたりはしないのだという事を、知った。




体重は最大で11kgまで増え、それから徐々に5、6kg減った。今もそのまま小康状態を保っている。

酒は、止めている。
心療内科に通い、薬があるから、酒を飲む必要はなくなった。酒依存から、薬依存に変わっただけの様な気がしないでもないが。
過食はないが、ストレスを感じると、ちょっとまた夜中に食べてしまう。

けれど、今は無理をしない。ストレスを感じる自分を、認めてあげられる様になったから。
疲れたら、休めばいい。休むのは、私が弱いからでもダメな母だからでもないのだ。



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