いつか木を植えたい

いつか木を植えたい

父親とは?


「小さっっ!」が、初感想。赤ちゃんの顔を人差し指でずぞぞぞ~と、なでながら、「小さいなあ」とずっとニヤついていた。

他に何か言う事ないのかなあ、と待っていたが、結局ご主人様の口から「ご苦労様」とか、「ありがとう」という類の言葉は、一切出てこなかった。
出産時の話をしようとしても、「怖いからいいよ」。その「怖い」事をやり遂げた母に、感謝や労わりはないものかね。
じゃあ、と新生児のお世話の話をしてみる。3時間毎の授乳については「強化合宿だね」と。本当にそうだよ!でも、あくまで他人事なのね。


その日、息子に名前をつけた。
どうぞ元気に、ただただ生きていって欲しい、と願いを込めて。




突然だがここで、かつてご主人様が言った、衝撃的な言葉を紹介しよう。
状況は、カップ麺を食べたいと言うご主人様。赤ん坊から手が離せない私。ご主人様は、なんとっ自分で用意を始めた。そこまでは良かったが、さて、次に何と言ったか。
「あれ?お湯って、どうやって沸かすんだっけ?」
・・・・・原始人かっ!?
と、この様にご主人様はホントーに使えない奴である。が、憎めない人柄でもある。と思っていた。ずっと。

ご主人様は、「片付けられない、時間・約束を守れない、忘れ物・失くし物が多い、計画性がなく衝動的、過集中」な人種である。
息子の事を「ADHD」ではないか?と思ったのも、ご主人様が、その様な傾向を多分に持っていた為でもある。これは、決して悲観的に思っていたのではない。むしろ、しょ~がねぇなぁ~、と思っていた。
いやね、私が自身の事を、わりと辛い人生だと感じているのに対して、ご主人様は幸せな人だから。実際の人生経験ではなく、性格としてね。
ご主人様は楽天的でおおらか、私は神経質でマイナス思考という違い。
つまり、ご主人様には、この傾向を持つ方々に多いとされる「自己評価の低さ」が見られないのだ。
我が子に幸せになって欲しいと願うのは、親として当然の事。息子には、私の様にではなく、ご主人様の様に穏やかで大らかな人間になって欲しいと思う。

ただねー、周りにいる人間は、大変だけどね。
生まれ育ちから性格上、他人の世話をする役回りが身についてしまっている私。常に、ご主人様が歩きながら、ポロポロ落としていくモノを拾い、時には先回りして邪魔なモノを除け、必要なモノはポケットに押し込み、いらないモノはゴミ袋に集めていく、という作業をしている。
疲れる。
疲れるが、これに対して文句を言うのは無意味だ。何故なら、ご主人様には「悪気がない」。自分が迷惑をかけているとは、露程も思っていない。部屋を散らかしても気にならない。気になるのは私。だから私が片付ける。物を失くしても平気。済んでしまった事は仕方がない。また買えばいい。素晴らしいプラス思考である。
せこせこご主人様の後始末に追われている自分が、バカみたいに思えてくる。
でもいいの、他人の世話、嫌じゃないし。相手はご主人様だもの。
「ありがとう」と「ごめんね」を言ってくれたらいいな、とは思うけど。



息子が2歳を過ぎた頃から、ご主人様はPCでゲームを始めた。
以前からPCは趣味で、HPを作ったりして、時に「過集中」で、他を蔑ろにしている事もあった。ただ、その頃はまだ、本人自身が悪いと思ってる様子も窺えた。
けれど、ゲームにハマってからは、共に暮らす者の事が全く見えなくなった上に、殆ど悪いとさえ思わなくなってしまった様だ。

とにかく家にいる間中、ゲームをやっている。
平日でも夜中2、3時迄。休日は、寝ている時とトイレ以外はずっとPCの前。
まれに出かける約束をした休日の前夜も、変わらず朝方までゲーム。当然起きるのは昼過ぎか夕方近く。それだけ待たせているにも拘らず、起きると即ゲーム。やっと出かけても、「○時にゲームの約束があるから」と平気で言う。
ご飯に呼んでも、絶対にすぐには来ない。私と息子が食べ終えた頃来て、流し込む様に食べ、すぐまたゲームに戻る。文句を言うと、「急に抜けられないだろう」と逆ギレ。だから、もうすぐ出来るよ、と事前に何度も声かけているんだけど?

仕事が不規則な為、仕方ない面もあるが、常にゲーム中心の生活。
自分1人の勝手な時間軸で生きている。現実の生活よりも、ゲームの方が、ご主人様にとって現実であるかの様だ。

会話も成立しない。
家では常にゲームをしているので、会話をする時間がそもそも存在しない。
大事な話をしようとしても、ゲームをしながらのイライラとした空返事。何度念を押しても、後で「聞いてない」と言われる。メモにしてPCに張っておいても、失くされ忘れられる。
もう、話もしたくなくなる。

勿論、育児も何もしない。時に口だけは出すが。
後追いの激しかった息子が大泣きしている所に、たまたま帰ってきたご主人様は「虐待してるのかと思った」と、さらっと言ってのけたり、息子が怖がりで不安が強いのは、私の育て方が悪いせいだという様な事は、しょっちゅうだ。
夫の放った言葉で最もヒドかったものは、「お前みたいな育て方をしてると、この子はいつかお前を刺すよ」というものだ。
息子が夜泣きをし、私が宥めていても、意に介する事なくゲームを続けている者が。育児放棄しているのはどっちか。



ある晩、息子を寝かしつけた後で、私は、ご主人様に暴力を受けた。
きっかけは、私がご主人様の生活態度について、文句を言った事。言い争いになった。私も激しく口汚くののしった。ご主人様は、殴ってきた。
翌日、ご主人様は謝った。少しゲームを減らすから、と言った。私は、許した。
それから1週間位、殴られた所が痛み続けている間位は、食事の時間にも遅れなかったし、息子の相手もしてくれた。
しかし、2週間もするとまた元に戻った。私は、そうなるであろう事を知っていた。
ご主人様は、反省したり、反省した事を覚えている事が、出来ない。

3週間後、また同じ事が繰り返された。
約束はどうなったのかと、私が文句を言う。逆ギレしたご主人様が殴る。



育児にも、家族にも、殆ど無関心なのにも拘らず、「オレは子どもを怒ったりもしないし、良い父親だと思う」と言われたのには、心底驚いた。本当に信じられなかった。許せないというより、理解できない。全く状況が見えていないのだと、その温度差にただ驚くばかりだ。
ご主人様に対して、私の気持ちは完全に冷めきっているのに、その事にも気付いていない。ご主人様が働いてきてくれ、そのお金で生活させて貰っている。だから私は、家政婦をしている。
表面上変わらず家事をし、ご主人様の世話を続ける。それは、愛からではない。役割上やっているだけだ。
ゲームについて、あまり文句を言わなくなったのも、はっきり無駄だと悟ったからだ。時間と労力の無駄。


子どもがいるから、そして、私もずるくて、ご主人様に経済的に依存しているから、耐えるしかないと思ってきたが、一生我慢し続けるなんて、出来るだろうか。
本当にこのまま、擬似結婚生活を続ける事は、子どもの為になるのだろうか。

息子の為にも、精神的に安定していたいのに、ご主人様がいるとそれが適わない。
感受性の強い息子が、こんな夫婦仲の悪い親の間にいて、余計に不安になってしまうと思うと、本当に申し訳ない。

夫婦の問題だけならば、構わない。仕事をして、残りの時間は全て自分の好きな様に使う。いいだろう。
でも、子どもがいるんだよ。
お金を稼いできて家に入れる、それだけでは、子どもは育たないんだよ。
ほんの時々、自分の気が向いた時だけ、子どもの相手をしてやる。そんなの自己満足に過ぎない。それだけの付き合いなら、ご主人様の言う通り「怒ったりしない」ですむよ。
でも、そんなのは、育児とは言わない。
父親とは、認められない。


別れよう、と思った。


「たかがゲームで」である。
ゲーム依存の者を、身近に持った事のない人にとっては、「たかがゲームで」である。義母にも言われた通り、「あの子の事は諦めて。あなたも好きな事をすればいい。外で遊んでいる訳でもないし、仕事も大変なんだから」。
そう、外で女と遊ぶでも、酒を飲むでも、ギャンブルにハマるでもない、「たかがゲームで」。
でも、家庭生活を脅かすほどの「過集中」でも、「たかが」と言えるの?家族として、一緒に暮らしている意味がない。子どもにも、悪影響しか与えない。家政婦ではない、妻に暴力を振るってもいいと思い込んでしまう程、ゲームの世界にハマリ込んでいても?

もう、疲れた。
もう、解放して欲しい。

私は息子を連れて、実家へ帰った。

それで解かった事。
いいじゃん、もう、利用してると思えば。ご主人様=夫ではなく、文字通り金を稼いでくる同居人だと思えば。
妻子が黙って実家に帰った事に、全く危機感の欠片すら感じない者を、家族とみなす必要はないだろう。心配や後悔の電話1本掛けてくるでない者を。
どのみち見ているのはPCの画面。同居人が家にいようが、どこか他所に出て行ってしまおうが、見ているのはPCの画面だけ。家族の姿など、元より見えていないのだから。
私が割り切ればいいだけだ。ご主人様が私を、家事育児ロボット位にしか思っていない様に、私もご主人様はお金を持ってくるだけの人だと思えばいい。

幼稚園も始まるしね、2週間で息子を連れて戻った。
何事もなし。
今でもご主人様は、ただ久しぶりに里帰りしただけだと思っている。よもや離婚寸前までいっていたなどとは、夢にも思っていない。幸せな人。



ご主人様が、ゲームの世界に行ってる間に、「赤ちゃん」から「男の子」に成長した息子。
息子は、「パパ」とどう接して良いのか、わからないでいるふしがある。当然だ。でも、ご主人様に言わせると、「お前がその様に仕込んだ」だって。


息子の発達障害、私のうつ病を、話した。
初め、ご主人様は認めなかった。今でも、全面的に認めている訳ではない。
だが、さすがに歩み寄りを見せてくれた。
この期に及んで「何事もなし」なら、本当に離婚していた。


2人の間に産まれて来てくれた息子への、感謝の気持ちを忘れる事なく、最愛の息子の成長を夫婦で見守っていけたらと、思っている。
ご主人様には、「父親」として、息子の存在を、どうか忘れないでいて欲しいと、ただ願う。



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