多重債務者の交差点
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とつぜん電話のベルが鳴った。それも20時過ぎに。無料電話受付は19時までである。仕事始めは5日から。たまたま事務所にいた。受話器をとったのはかねての習慣からで。「はい○○相談窓口です」と私。電話の声は以前から相談してくるYさん(♀35)だった。彼女の切羽つまった声は「朝早くから申し訳ありません。ちょっとご相談があって」あとに言葉にならなかった。「どうしました」とやんわり応える。「じつは・・・・・・」ヒマなはずが、1/3から難儀な事件が飛び込んだ。Yさんの夫のことである。。せめて家族のため年末年始をすごす、それがYさんの夫として家族に対する義務だった。しかし1/3の深夜、その夫が睡眠薬を飲んだという。要するにYさんの夫が借金で疲れ自殺未遂をしたということである。運よく家族の発見で一命はとりとめたが救急車は呼ばなかったらしい。問題は、そうしたからコトが解決するかということである。するわけがない。借金は死ぬまでついて回る。バカなまねして振り出しに戻っただけのことである。家族の全収入は30万円。全ての生活費(4人)25万円。借金総額700万円。毎月の金利20万円。毎月の約定支払20万円。毎月の赤字35万円。生活できるわけない自転車操業で頑張った夫はA型のマジメ人間だった。事業の失敗からこの苦しみを1年続けたが限度だったらしい。私は過去、なんどもYさんの夫に自己破産するよう伝言した。だが返事は「保証人に迷惑かけられない」と断りだけだった。とはいえそれはそれこれはこれ。自業自得とはいえ死んでしまえば元も子もない。希望という名の標識をみつけプラス思考することが大事なのではないか。おちついたら自己破産申立をはやくしてあげなくてはなるまい。どうやら今年も多重債務者の交差点は忙しくなりそうである。
2006.01.04
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