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伊波泰志


伊波「柱のない家」



大雨が降り続いて、
大洪水になって、
家が流されてしまえば、
竜巻が起こって、
家が吹き飛ばされてしまえば、
新しい家を造ろう、
柱のある家を造ろう、
でも今は時折風がなびくだけ、
柱のない家を壊すきっかけがない
                 ――「柱のない家」より抜粋


伊波泰志の詩集「柱のない家」。
2002年12月28日発行。
詩23篇でA5判全74ページ。定価1000円。
残部の有無は管理人までメールを。
伊波は1981年生まれ。沖縄県生まれ、同在住。
詩集は沖縄国際大学文芸部在籍中にまとめた。

ちなみに右上に写っているのはトラッキー。
伊波は阪神タイガースファンではないので、やっぱり詩集とはまったく関係がない。(紹介者:管理人miya-zy 2007.12)











サヴァイブ/伊波泰志


いつだって どこでだって
きみを呼ぶときには
きみの名前を声にしたくて
声にしたくてたまらないというのに

歩き慣れた舗道の上
人に化けた悪魔が獲物を狙っている
長い耳をそこら中に傾け
少年の名を盗み出そうとしている

いつだって どこへだって
きみを連れて
きみの笑顔の生まれる瞬間を見たくて
見たくてたまらないというのに

通い慣れたスーパーマーケットの中
人に化けた鬼が獲物を狙っている
特注でこしらえた斬首刀
少女の血の味を知りたがっている


夢にうなされ ぼくら寝言で口走る
“アイ・ウィル・サヴァイブ・イン・ジス・ライフ”
目覚めたらツナ缶握りしめて
人に化けたモンスターを殴りつける特訓積まなきゃ

問うてみても
悪魔ですと名乗る奴なんていないから
疑うしかないんだよ みんな
疑わない奴から殺されていくんだから


袋小路に大量発生する空虚
そこから本物の悪魔がこちらを覗いている
哂っている










リザード/伊波泰志


たぶん俺の前世は
切り離されたトカゲの尻尾
敵を欺くために
意志なき意思で
身をよじらせ よじらせている

現世も大概似たようなもんだが
あいにく 人間の体と脳みそ持ち歩いている

春先の雄猫みたいに喚いてみる
本体は誰だ
敵って何だ
俺は尻尾のままなのか
冬の始まりの空には
オリオンが愛想よく笑うだけで
求める答えがまたたいているはずもない







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