リカの健康おたく日記♪(多発性硬化症です)

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7.噂をすれば影





7.~噂をすれば影~


平成8年10月末



パン!パン!パン!・・・神経内科病棟の朝はこんな音で始まる・・。

大竹:「あ~しかし何で採血するだけでこんなにも苦労しないといけないのかしらねえ~?」

私:「ホントにね・・?」(--;)

そう、この音は神経内科の患者達が自分の腕を叩いている音なのだ。
少しでも自分の血管を浮き上がらせて主治医達が採血しやすいようにという患者達の心配り?なのである。
そうしないと注射が入らず、痛い思いをするのは自分達なので少しでも注射の針がスムーズに1回で入って欲しいという一心の行動だった。

そこまでしないといけないほど神経内科の今年の新米医者3人は注射が下手だった。
今年4月に医者になったとして、もう10月末なのだからそろそろ上達しているはずなのだが・・・看護婦達に言わせると「今年は3人とも下手!!(笑)」なのだそうである・・。

しかし患者達にとっては笑いごとではない。たかが採血、されど痛い思いをする採血なのである。看護婦がやれば1回で済むものを慣れてない新人の医者がするのだから何度も何度も痛い思いをしなければならない。
しかし病院の規則で医者だけが採血するように決められてるらしく、患者達にとっては試練だった。

大竹:「もお~!田村先生、また失敗ですよ~?(涙)」

大竹姉さんの主治医の田村医師は女医さんで小柄で可愛い感じの先生だった。
私の主治医の奥田医師は男性で、もう一人の石田医師も男性だった。
この今年同期3人組が各神経内科病棟の患者達を分担して受け持っているのだが3人とも注射の腕はどっこいどっこいという感じだった。
しかしそれでも、私達と年が近く若い先生達という事もあってか、友達のように親しみやすい会話で接してもらっていた。

私:「奥田先生~私の血管って人より細いし、入れるの難しいから最初から看護婦さんにお願いしてもらっても良いですか・・?(涙の訴え)」

毎回、主治医に5~6回は刺しなおされた後、どうしても入らない時は看護婦さんにやむを得ずしてもらい、1回で成功するので最初からそうして欲しいとお願いしてみた。
私の場合、手足の神経がしびれていて痛いので注射を何度も失敗されると体が緊張してしまい余計に体のしびれがきつくなって辛かったからだった。

奥田Dr:「リカさん、今日は僕、自分の腕で練習してきたんですよ・・。一応、チャレンジさせてください・・ね?」

私:「・・・そしたら1,2度は痛い思いをするんですね?(--;)」

奥田Dr:「そんな(^^;)」

奥田医師のアザだらけの手の甲を見て努力の後が見て取れた。
それでしぶしぶ承知したが・・やはり4度刺しても失敗したので結局看護婦さんにやり直してもらうハメになった。
(TT)

大竹姉さんも隣で何度か注射を失敗されて今やっと無事に済んだとこだった。

大竹:「あーストレスだわね~?ただ採血の注射するだけなのに~!ねえ、リカさん!私、昨日こんなモノ1階で見つけちゃった♪」

そう言って大竹姉さんは笑いながら1枚の用紙を取り出した。

私:「なになに・・?『・・私の主治医の女医田村医師はとても意地悪でいつも注射を何度も刺しかえるし、私が痛い!というと笑ってます。リカさんの主治医の奥田医師は気のせいですよと言って冷たく横であしらいます・・』これは・・?(笑)」

大竹:「うふふ・・♪何か1階に置いてあったから持ってきちゃった!これに病院での不満とか書いていいみたいだよ?目安箱みたいなもんだね、きっと♪」

そう言って大竹姉さんは笑いながら主治医達にそれを見せた。

大竹:「ほらほら~♪先生、見て!こんなの書いちゃった~(笑)」

もちろん、大竹姉さん流の軽いうけをねらったジョークだったのだが、主治医達には通じなかったようだ。読むなり顔がみるみる真っ青になった。

田村Dr:「これは・・・(絶句)」
奥田Dr:「あの・・困りますね・・?」

私:「そんなに困るものなんですか?それって・・・」

奥田Dr:「そうですね・・昔この用紙に書かれた看護婦が飛ばされたとかいう噂があります・・。もし出されると僕の出世にも響くし・・ブツブツ・・(汗)」

大竹:「そんなあ~!ジョークに決まってるじゃない!ホントに提出する訳ないでしょお~?!(汗)」

大竹姉さんがそう言った後でも深刻そうな顔をして主治医達は去っていった。
うけと笑いが欲しかった大竹姉さんはそんな主治医達の反応にすっかり引いてしまっていた。普段のように笑い飛ばしてもらいたかったらしい。

大竹:「なんだったのよお~!びっくりするよね?マジで受け取るなんて・・・私引いちゃったー(汗)」

私:「でもそんなにこの紙って威力があるんだねえ~?」
何か本当に緊急な事があった時には使えるな・・と密かに思ってしまった。
もちろん、現在までその紙を使った事はありませんが・・念のため。

夕方、友人達がお見舞いに来てくれたので病院のレストランへ行った。
友人達はそこで夕食をして、私は病院食があるのでパフェを食べた。
そこで入院生活の事を聞かれ、ついつい主治医達の噂話で盛り上がってしまった。

私:「・・・そうなんだよね、注射が下手で。毎回失敗するから部屋の人達皆ストレスでさあー。私なんて1回の点滴で、13回もやり直しで針を刺されたんだよお~涙」

友人達:「へえ~そうなんだ・・大変だね~?」

調子に乗ってしゃべっていると後ろから聞きなれた声がした。

「さ、じゃあ行こうか・・」

(え?今の・・もしかして・・?汗)

おそるおそる振り返ると・・何とあの新米主治医3人組だった!!
(何で~?!ずっといたの?今まで?後ろの席に~?周りはガラガラなのに何故にこんな真後ろに座る~?(@@;))>パニック

3人組はちょうど食事が終わり、レストランから出ていった。

私はすっかり動揺して友人達に訊いた。
私:「ねえ、ねえ、今の先生達いったいいつから後ろにいたの?全然気づかなかったよ~!さっきの話どこから聞かれたかなあ・・?涙」

大丈夫だよ、と友人達は慰めてはくれたけど・・やはり
「噂をすれば影」・・。
他人の噂話は言うものではないですね・・?(反省)



リカの難病入院日記8へ続く

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