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デジプリ繁盛記■お局さん奮戦記（１）

お局さん奮戦記（１）

プルルン
「はい、総務課　橘です。」
「名刺何とかしてよ、明日出張でなくなっているの気付いたの今なんだ。」
その声は、営業課長です。
「では、印刷屋さんに確認してみます」と電話を切った。
夕方に言われても、明日まで間に合うか
「雄飛建設　橘ですけど、今から名刺発注して７時ころまでにできますか？」
「うぅん。営業課長の前作ったのと同じですね。７時にお届けします。」
できませんとは、いえない印刷屋さんが、そこにいました。
そうなのです。総務課の橘といえば、いわゆるお局さんなのです。

「よし。」と独り言を言って、橘里香は、営業課長に電話した。
「７時にできるそうです。総務課に取りに来てください」

時は過ぎ、約束どおり印刷屋さんは、６時５０分に総務課に届け
７時に課長本人が取りに来て、よかった。よかった。

しかし、名刺を確認した営業課長は落胆した。
メルアドが、古いままだ。
新規のお客様に会いに行くのに、どうしよう。
しかたなく、ボールペンで、書き直した。
１０枚ぐらいでいいか。でも、なんだかみっともないよな。

そういえば、自分の名刺の古い情報で使い残し、捨ててるよな。
よく、あるよな。明日必要なのに、前日あわてること。
最悪は、お客様の前で、「すいません。名刺を切らしています。
営業の山田久と申します。」
これもあったよ。

なんとか、ならないのか。
横で、聞いていた橘は、なにか気になり、ネットで調べだした。
「名刺」をキーにして検索すると、出てくる出てくる。
ネット通販での名刺だ。
へぇー。名刺機械もあるのか。
安いじゃない。60万で名刺ができれば、専用のプリンタと、紙を
切って名刺大にする機械と、「私にも使えそう」。
ネットサーフィンで、色々みていると、
「名刺　デジタル印刷」のトップに出ている記事をたどると
http://tb.plaza.rakuten.co.jp/23104tuchida/diary/200406190000/

にたどり着いた。

「うちの会社と同じようなことが書いてある」
「月100万は印刷屋さんに払っていないが、５０万はあったよ」
そうか、６０万の機械もいいな。
ショウルームに行って見ようか。
橘は、総務課の「お局様」だ。課長も一目置く。
総務のカイゼンは、お局様の一言で決まるほどの
影の実力者でもある。それぐらいのことは、自分で仕掛けられる。

数日たち、友達の由香と久しぶりにあった。
仕事変えたと、新しい名刺を差し出す。
写真もついて、デザインされて高そうだ。
裏も見て、といわれて、裏返すと、粒々の印刷がしてある
あぁ。テレビでやっていたあのコード。ＱＲコードとか
いっていたあれが、目の前にある。
「由香、すごいね。名刺にＱＲコード入れて」
「うん。すごいっしょ。自分で作ったの。」
「うそぉ。由香できるんだ。」
よくみると、プリンターらしきに見えるが、
言われないとわからない。
由香が続けていう。
「ヨドバシで１０００枚４７００円で売っているの」
裏表が印刷できて、この手が一番安かったんだ。」
自分とこのインクジェットプリンターですぐできるよ。

さすが、クリエータ。ＳＯＨＯでの智慧だ。
会う人によって、出す名刺が違うようにしている。
１０枚が１シートだから、提案した案件を、裏に
そーっと紹介しておくそのだそうだ。

由香もがんばっているな。

名刺一つに、営業させてんだ。
それに、引き換えわが社は。まだ工夫が足りない。
そう思うお局さんであった。

翌日、総務課に出社した、橘は、
支払伝票から、名刺の印刷にかかる経費の統計を取り出した。
過去２年分にさかのぼり、集計した。
２年前月平均５８万　年額696万　４１００人分の経費
１年前月平均６２万　年額744万　４４００人分の経費
確かに、名刺は、印刷屋さんでとの固定概念か。
まだ、こんなところに、ムダがあったか。

営業経費でみていたので、表に出なかった出費だ。
そして、実際「ヨドバシ」に行って、名刺の用紙を
買ってきた。
１０００枚で４７００円だから　　　　　　１枚４.７円＋２円（インク）
印刷に頼むと片面１７００円で、１００枚　１枚１７円

総務課で出力すると、１枚７円程度　印刷屋さんへ頼むと1枚で17円

明らかに違う。
年間４００万近くの差は、純利の４００万は大きい。
総務課だから、すぐわかる。
純利の４００万稼ぐ売り上げは、うちでは、８０００万だ。
必死に売り上げ上げようとしているのに。

稟議を上げて、総務課でやるというのもあるが。
課長で時間がかかり、部長・・・。
やめた。稟議には出さないで、実績・証拠をみせれば即採用だ。
よーし。まずは、実績作り。
ネットで、ラベルプリントのただのソフトをダウンロードし、
会社のロゴは、スキャナーでとり、
イラストレータで、下絵からきれいに作り上げた。
ビットマップで保存して、ラベル作成ソフトを立ち上げる。
自分の名刺を試しにつくるお局さんであった。

ためしに、誰かのをと思い、席を立つ。
偶然にも、総務課に飛び込んできた若者。
営業の、桑田君だ。

「あの、すいません。名刺切らしたのでお願いできませんか」
「今から頼むと、２日後の昼過ぎになりますが。」
「そうですか。」「どうしよう」
「明日、紹介を受けて初めてお客様のところに行くのに、」
「名刺無しでは初対面で、印象悪いよな。」
「どじだよな。資料作りに集中していて、名刺きれていたのを
忘れていた。」
しょぼくてれて、ぶつぶつとひとりごと。

「桑田君、こんなのでよかったらすぐできるけど。」
「えぇっ。」現物を見た桑田君の顔は、微笑返しだ。
「充分充分これでいいです。１００枚なんていいません」
「５枚あれば、急場は凌げます」
「早く作って、橘さん」
「桑田君　裏どうしようか、なんか入れるのであれば入るけど」
「へぇ。裏も作成できるの。そしてら、英語で作って。」
明日のプレゼンは、外資系だから、それもありか。
「はいはい。」
ロゴを貼り付け、氏名、肩書き、部署、電話、メルアドなど
情報を、入力していく。
５分もしないうちにレイアウトが確定し、印刷の調整に入る
Ａ４普通紙に、１０面付けで、出力してみる。
位置ずれがないか、面付け用紙と合わせてみる。
「大丈夫。ずれてない。」
裏面も出力し、面付け用紙と会わせる。
「裏面は、少し狭いので上下左右３mmの余裕を付け直すか」
レイアウト画面で、ちょこちょこといじくり調整する。

「よし。これでいい」と名刺の１０面付けの用紙を、
インクジェットプリンタに、セットし。」
「おっと、裏表間違えると、どじになる。」
「印刷面が上向きだから、まず表を、上にして、リターン」
「よしよし。きれいにできた。」
「用紙を裏返して、天地を変えないでと」
「レイアウトを裏面にして、はいリターン」
出来上がるまで、２～３分か。
１０枚作るのは、そんなにかからない。

台紙から、はがす。よくできている。表面は、前面つながっている。
切れているのだが、台紙ではつながっているので、
なるほど、インクジェットプリンターは、紙に圧力がかからないから
こんなことできるのだ。
穴あき台紙のほうにのりがついていて、名刺の紙がくっついている。
「そうか。名刺専用機は、カッターで紙を切る。この手間無しか」
「なるほど、由香が使うだけの事はある」
１０枚をはがし、桑田君に渡す。
「桑田君。どうぞ」
さっきの落ち込みどこへ、いったんだろうか。
名刺ができるのが楽しくてしょうがないみたいだ。
「ありがとうございます。明日がんばってきます。」
と、挨拶して、桑田君は帰っていった。

うん。なかなかなもんだ。印刷屋さんに出さなくてもいいね。
自分自身で、納得するお局さんであった。

「橘さん。」元気よく総務課に入って来たのは、プレゼンを
終えて、帰ってきた桑田君であった。
「ありがとうございました。」
「うまくいきました。」
「見積もりだせるようになりました。」
「それと、名刺が話題になりました。」
「お客様のところでも、困ってるそうです。」
「正直に、急場しのぎで総務課で作ってもらったのですと話しました」
そうすると、
「自分たちでできるんだ。印刷屋さんに頼まなくて。」
と、関心されました。
「どうも、総務課が、ここまでやる先進企業と認識したみたいです」
「ありがとうございました。」と桑田君は、
べらべら言いたいだけしゃべって、帰っていった。

よし。いいぞ。ゲッツ。これで、桑田君は、課長に報告するだろう。
楽しくなってきたぞ。お局さんは、仕掛けを作り、
自分の思い通りにことを進めることに、楽しみを見いだしている。

会社の中での、裏の実力者なのだ。

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