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2020.07.10
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テーマ: 読書(10232)
カテゴリ: 【読書】未分類

本のタイトル・作者



西への出口 (新潮クレスト・ブックス) [ モーシン・ハミッド ] ​
"EXIT WEST"
by Mohsin Hamid

本の目次・あらすじ


「難民で膨れあがってはいるが、おおむね平穏な、少なくともあからさまに戦争にはなっていない街」。
名前のあらわれないその国で、2人は出会う。

両親と暮らし、広告代理店に勤める短くそろえた顎髭のサイード。
保険会社で働き独り暮らしをしている、全身を黒いローブで包んだナディア。

企業価値の創出と商品のブランディングについての夜間授業で出会い、彼らは恋に落ちる。

そんな中、人々の噂にのぼるようになった「扉」。
何の変哲もないある「扉」は、世界中のどこかへの「扉」に繋がっている。
サイードとナディアは、扉を開ける。

ギリシャ、ミコノス島。
ロンドン。
サンフランシスコ。

各地で起こる移民排斥運動と押し寄せる難民、「扉」により国境が消滅した世界。

引用


私たちは、ある瞬間にはいつものようにだらだらと雑事をこなしていたかと思えば、次の瞬間には死にかけているものであり、終わりがつねに迫っているからといって、それで私たちのはかない人生の始まりや歩みが止まることはない。ついに終わりが訪れるまでは。


感想


2020年読書:109冊目
おすすめ度:★★★★★

これ、良かったです。
何なんだろうこれ。すごい。
現実の腐臭、ファンタジーのときめき、SFの不気味さ。
時間を、空間を、飛び越えて。


短い物語だけど、ものすごく長い旅をしたような気持ちになる。
こういうの、大好き。

読んでいる間感じていた違和感を、訳者あとがきが解決してくれた。
道中に重きを置かれる難民の物語を、「扉」という一言で省略していること。
徹底した三人称視点は、物語の中を飛び回るドローンの視点で私たちが彼らを見ていること。


引用部分は、
2019.10.22「 【愛と花、女たちの物語。】ホリー・リングランド『赤の大地と失われた花』 」
の「人生はまえへと進むが、うしろむきにしか理解できない。」を思い出した。

難民の旅路は、
2019.07.23「 ファビオ・ジェーダ『海にはワニがいる』 」
で読んで、彼らがすさまじい道のりを経てきたことを思い出した。

「扉」の登場は、世界をフラットにしていく。
ルトガー・ブレグマン『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』
(2019.05.01「 4月に読んだ本 」)
で、「国境をなくせばいい」と言っていた。
(第9章 国境を開くことで富は増大する)

かつて「先住民」を駆逐した「先住民」が「移民」を排斥するおかしさ。
でも自分の中にも確かに存在する、「自分たち」と「それ以外」を分ける意識。

ファンタジー的な部分では、児童書の
D.J.マクヘイル 『ペンドラゴン』シリーズ
荻原 規子『これは王国のかぎ』
あたりに似たものを感じた。

「扉」が開く。世界がつながる。
浸透圧のように、世界は混ざり合い、均衡化していく。

スマートフォンが、格安航空が、ある意味「扉」になっている。
もうすでに。
もしかしたら、未来はこんな形をしているのかもしれない。

この本は、「新潮クレスト・ブックス」。
「小説、ノンフィクションから、もっとも豊かな収穫を紹介するシリーズです。Crestとは、波頭、最高峰などの意。」らしい。
ほかの本も読んでみたくなった。


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最終更新日  2020.07.10 00:00:21
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