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2021.12.15
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テーマ: 読書(10233)

本のタイトル・作者



生贄探し 暴走する脳 (講談社+α新書) [ 中野 信子 ] ​

本の目次・あらすじ


はじめに 中野信子

第1章 なぜ人は他人の目が怖いのか 中野信子
「魔女狩り」に見る人間心理の闇
幸せそうな人を見ると、なぜモヤッとするの?
脳は、誰かと比べないと幸せを感じられない
なぜ、「他人の不幸」は蜜の味なのか
世界でもいじわる行動が突出している日本人

あなたが生贄にされないために

第2章 対談 「あなたのため」という正義──皇帝ネロとその毒親
人はいともたやすく正義中毒にはまる
なぜ読者が、皇帝ネロに感情移入したのか
母親や重臣殺害の深層心理
国民のアイドルだった若き日のネロ
自己評価の低さがおデブの引き金に
人の評価が支配する“世間体”という戒律
わが子を自己実現の道具にする毒親
子の苦痛に共感できない親とは?
女は「正義」の使い方を知っている

間違った褒め方がプチネロを作る

第3章 対談 日本人の生贄探し──どんな人が標的になるのか
プチネロたちの脳内
「群れ」に生じる凶暴な安心感
自分の空洞を埋めるための正義

「群れに害をなす」というレッテル
ファッション化する「正義」
匿名で解放された日本人
フェラーリで上がる男性ホルモンの値
息苦しさが表の顔と裏の顔を作る
キリスト教と仏教の救済の違い
攻撃する側の脳内を満たす快感
「得していそうな人」が生贄になる 

第4章 対談 生の美意識の力──正義中毒から離れて自由になる
境目の人々に見えている世界
なぜ混血児は優秀なのか
戦わずして勝つフェデリーコ2世の戦略
「理解してくれる人」を人は根源的に求める
エンタメは負のエネルギーを浄化する
日本人を変質させた歴史のキーワード
「悪」の使い道
「違い」を面白がれる生の美意識
どれほどアートの力が大切か
自分は自分が大事、相手も自分が大事

第5章 想像してみてほしい ヤマザキマリ
「出る杭を打つ」日本を恋しがるイタリア人の夫
思い知らされた「世間体」という日本の戒律
想像力の欠如がヒトを危険生物化する
人からの評価で自分の存在を自覚する
人を脅かし群れさせる「孤独」の正体
自他ともに失敗が許せない時代
敵を味方に変えたフェデリーコ2世と空海の力
本当の「正義」について考えてみる

おわりに ヤマザキマリ

引用



(中略)
このパンデミックが後世、歴史的に何と呼ばれることになるかはわかりませんが、仮に「2020年のパンデミック」とするなら、せめて次世代には、教訓を残さなければと思っています。
危機的な状況が起これば、少しでもはみ出した者から、生贄に捧げられてしまうのだよと。
ヒトは放っておけばそういうことをしてしまう生き物なのだと。
だからこそ、知性でそれを押しとどめる必要があるのだということを。


感想


2021年294冊目
★★★

『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんと、脳科学者の中野信子さんの共著。
おふたりはプライベートで友人で、ラインなどのやりとりがこの本のきっかけになったそう。

どんな話をするのかな、と思ったら、ローマの話や中世の魔女狩りと、今回のコロナの状況、日本人とネットとの親和性について…と多岐に渡り、興味深かった。

「誰かが10万円もらえた、ということを、自分の脳は10万円損したように感じている」

という脳の仕組み、今の子育て世帯への給付についてやいのやいの言うのも、子育て世帯のほうがマイノリティになった今、多くの人は「損した」と感じているからなのかな。
本の中で初めて知った「スパイト行動」(相手の得を許さない、自分が損しても他人を貶めたいという嫌がらせ行動)。日本ではこれが顕著だそう。
だからこその、「世間体」の中で生きる、「空気を読む」サバイバル。

自分のなかにも、この気持ちってあるなあと思った。
「ただ乗り(フリーライダー)を許さない」という気持ち。
正義感のようなそれ。
「自分はこんなに我慢している・負担している」とセットで、憤る。復讐心のように燃える。
「よかったね」と思えない。何でなんだろうね、ほんと。
私は「ドラえもん」ののび太をすごいと思っていて、それは「のび太の結婚前夜」でしずかちゃんのお父さんが「のび太君は、人の悲しみを悲しみ、人の喜びを喜べる人だ」と言っていたから。
無理。そうは思えない。己の器の小ささに絶望する。

本の中に何度も紹介される神聖ローマ帝国のフェデリーコ2世がすごい。
6か国語を喋り、多種多様な教養を身に着け、各国文化にも造詣が深い。
アラビア語を話してイスラム朝と協定を結び、エルサレムを無血開城させる。
財力、教養、カリスマ、活動力を備えたまじやべえ奴…。

ここで言語の有用性について触れられていたんだけど、やっぱり自動翻訳がどれだけ発達しても、肉声で意思疎通することの価値は残るし、機械が進歩するほどいっそう高まるんじゃないかな。
相手の言語を学ぶということは、その文化や歴史、生活習慣もセットで学ぶということだ。
そこに多大な労力を費やすということは、相手に敬意を払っているということに他ならない。
相手の一部を自分の中に取り込み、自分の血肉にすることだから。

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で、どうして英語を学ぶんだろう、と主人公が言う。
自分に英語を教えてくれた夫は、戦争で帰らぬ人となった。
彼が身に着けた英語は、知識は、すべて無に帰してしまった。
それなのに、どうして私は、まだ英語を学んでいるんだろう。
学ぶことをやめられないんだろう。

それに、アメリカ兵(大学で日本語を専攻していた)が答える。
彼が遺したものが、与えた知識が、言葉が、あなたを生かしているのではないですか。

景気が悪くなる。災害が起こる。世の中が閉塞する。
人は、生贄を求め、集団から異質なものを排除しようとする。
私はそれと言語を重ねて見る。
違う言葉を話している人たち。

それでも学び続けるのは、いつか話せる日が来ると信じるからだ。
いつかわかり合えると、その日が来ると、純粋に願っているから。
だって覚えている。
はじめて言葉が通じた喜びを。
簡単な挨拶を交わして、笑顔を返した時のこと。
いつかすべてがうしなわれてしまうとしても。

逸脱者を引きずり降ろそうとするときに。
社会が徹底的に叩いて、世間が打ちのめして、ひとりを死に追いやる時に。
私はどこに立っているだろう。

そして思い出す。
昔読んだ本の「世の錨となれ」という言葉。
みんなが流れていく、その先に何があるのか。
私は止まることが出来るだろうか。

傾いていく秤の反対側に、重石を乗せることが出来るだろうか。
それが小さな小石でも。




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最終更新日  2023.01.01 01:21:22
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