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2023.06.21
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テーマ: 読書(8559)

書名



ゆうべの食卓 [ 角田光代 ]

目次


■明日の家族
明日の家族/二十歳の新年/私たちのお弁当

■パパ飯ママ飯
パパ飯ママ飯/あたらしい家族/新ユニット結成

■グラタンバトン
グラタンバトン/彼女のお弁当/あの日の先

■それぞれの夢


■はじめての引っ越し
はじめての引っ越し/二度目の引っ越し/最後の引っ越し

■充足のすきま
充足のすきま/相性さまざま/私の流儀

■彼女のレシピブック
彼女のレシピブック/前世と現世と夏/レシピの旅

■ようこそ料理界へ
ようこそ料理界へ/料理界の、その奥へ/料理界、それすなわち

■だいじなのは基本の調味料
だいじなのは基本の調味料/それぞれの日々/いちばんの幸せ

■私の無敵な妹


■私たちのちいさな歴史
私たちのちいさな歴史/青空の下の食卓/食卓の記憶

引用


「わかる、若いときってなぜか極端に考えちゃうよね」野口さんは空を仰ぎながらおおらかな口調で言う。「でもだれも、どっちかにしなくちゃいけないなんて言ってないから。芝居の神さまも家庭の神さまもそんなこと言ってない。だからね、手にしたいと思ったものにはぜんぶ手をのばせばいいんだよ。なんとかなるから。もう無理だって思っても、不思議となんとかなるのよね」


感想


2023年133冊目
★★★

2020年7月2日号〜2023年2月17日号から『オレンジページ』に掲載されていたもの。
タイトルから、てっきり角田さんの食事エッセイだと思っていたら、短編集だった。
「隔週ごと発行の雑誌にあわせ、ストーリーを上下に分け、3ヶ月おなじ登場人物を描く」という連載だったそうだ。

それは面白いだろうなあ。

いろんな人たちのごはん作りの物語。
子どもたちが巣立ったあとの、夫婦ふたりのお節から始まり…。
卓ドンごはん(フライパンに野菜と肉を重ねて蒸し焼きにしてどーんとそのまま出す料理)や、休日に作っておく自家製ミールキット(下味をつけたお肉のキットと、野菜類やきのこ類のキット)も作中に登場する。

卓ドンはやってるなあ。
フライパンはもはやそのままアツアツで出せる皿だと思ってる。笑
ミールキットは、挫折しました。
やったらいいんだろうとは思うんだけどさ…。
朝に野菜のカットを済ませておけば楽というのもわかっているんだけど、できない。
朝はギリギリまで自分の時間を満喫したくて。
結局、帰宅後にバタバタとご飯を作って、食べるの遅くなると寝るのも遅くなって…。

この本の中では、私は、元妻と現妻がレシピブックを通じてかすかに繋がる「彼女のレシピブック」が良かった。
こういう、当人たちの知らないところで、実は世界が繋がっている…という構成が好き。

あとは、やっぱり「ママ」属性の人の話に無条件に弱い。
「彼女のお弁当」に登場する佳苗。
タウン情報誌を発行している制作会社で契約社員として働いている。
娘が小学生の頃は、自分が一生この先ヨガをやったりせずに年老いていくんだと思っていた。
なんでもよかった、自分だけの時間が持てるのなら。
娘が社会人になった今、私はもうなんでも始められる。
なのに、自分だけの時間が持てることが、さみしい。
「さみしいって、ぜいたくな気持ちなんだな。」と、佳苗は思う。

私も今、「ひとり」になりたくて仕方がない。
今年の誕生日に「プレゼント何がほしい?」と娘にきかれ、「ひとりの時間」と答えた。笑
子供の頃からずっと、ひとりでいることが好きだった。
ひとりのときの私の世界は、広く、深く、限りがない。
それは、自由であるということなんだろう。
どこへ行っても、何をしてもいい。
誰かと相対するときに演じる「私」ではない、わたし。
今は制約付きの生活の中で、ひとりになることなんて、子どもが起きてくるまでの朝の時間しかなくてーーー夏はおひさまが昇るのがはやくて大好きだーーー時々発狂しそうになる。
それはもうひとりの「わたし」がいなくなってしまったような。

いつの日か、私はまた「わたし」を取り戻すんだろうか。
今はとてもそんな日が訪れるなんて想像し得ないけれど。
その時私はひとりになって、さみしいと思うんだろうか。
大の字で床に寝転がって、「自由だー!!!」と叫んだあとに。
夕飯をカップラーメンで済ませて、レイトショーの映画を見に行って。
ふと思い立って休日にひとりで遠出して一泊してきたりして。
なんでもひとりで出来るわくわくに胸を高鳴らせたあと、「さみしい」と、つぶやくのかな。
その贅沢を。

引用部は、「それぞれの日々」から。
こちらは、役者を目指すナズナが、芝居をしながら結婚して子育てもしている先輩ベテラン女優にかけられた言葉。

かあさんの暮らしマネジメント [ 一田憲子 ]

の言葉を思い出した。
やれるかやれないかじゃなく、まず「やる」と決めること。
いつか、いつかを待つこともひとつだけど、いつ死ぬか分からんのやし、今は今で大事にせんとな。


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最終更新日  2023.06.21 00:00:25
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