ETの未来主義ブログ

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2007.05.21
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カテゴリ: 書評
    書評「天ぷら『みかわ』名人の仕事」(早乙女哲也著、プレジデント社、2003)

               名人の処世法


     本というものは、読む側の立場でいろいろな読み方ができるものだ。本書
   もそうだ。グルメの人から見ると、この店の天ぷらは本物なんだ、と感じさせ
   てくれるはずだ。もっとも「みかわ」は既に超有名店である。但し、行かれる
   方、覚悟してください。カウンターの向こうからあなたはすべてを見られてい
   ますよ。


     料理人や飲食関係の人にとっては、料理哲学や料理技術を学ぶ指導書とし
   ての役割をもつのではないだろうか。例えば、早乙女さんの 「材料から始まっ
   て、道具やら自分のテクニックも含んだところまで考えると、チェックポイン
   トなんて百や二百は軽くあるの」
「指先よりもっと鋭敏なものとし
   て扱わなくてはいけないんだ」
というようなコメントを丹念に読んでいけば格
   好の指導書になるのではないか。


     ビジネス書として読むこともできる。例えば 「100%の力を出させられちゃ
   うお客さんなのか、出さなくてもいいお客さんなのかっていう判断はいつもし
   てるんです」
という発言はマーケティング論だ。コストと効果を見合わせて、
   丁度見合ったところでサービスを展開するということだ。


     日本文化論としても読める。早乙女さんの 「無心になれば何一つ余分な所作
   はない。見る側もその雰囲気のなかでは一つも異様に見えないものなんだよ。歌
   舞伎の見得だって本来そういうものでしょ?」
。これは、技術を道にまで抽象化
   する日本独特の発想である。


     本書には他に、早乙女さんのやきもの論や職人・芸術論まで多彩に語られて
   いる。ときに読み直したい一冊である。それにしてもインターネットの評価ブロ
   グに載せる目的でデジカメ持参で来店する客もあるそうだ。ありがたさ半分、迷



     私はこの本を、“生き方論”として読んだ。人いかに生きるべきか、などと
   いうと大げさになるが、名人・達人のもつ価値観や発想の方法などを知ることが
   できる。それらは私たちがいきるうえで礎となるはずだ。本書のなかでも寿司
   「すきやばし次郎」店主である小野二郎さんとの対談は、名人と達人同士の真剣
   勝負の迫力である。以下に、私が感銘を受けたコメントに表題をつけて書き出し



     このように表題をつけてしまうと、陳腐な人生訓のようなものとなってしま
   うような気がする。実際に本書を手にとって文間を読んでいただきたい。読む人、
   ひとりひとりで得るものは異なってくるはずだ。語り言葉のもつ説得力を味わっ
   て欲しい。



                  仕事とは

「リズムがかみ合った充実感というのが、いまオヤジさん(小野さん)の
    言った『ありがたい』ということなんですよ。自分のした仕事と、それを食
    べてくれたお客さんの気持ちががっちりとかみ合うと気分がいい」
 (早乙
    女さん)。


                  こだわり 

「(仕入れたネタの)そのちょっとした差で自分が気に入らないだけなん
    だけど、でもやっぱりこの人にはこれ(最高のネタで)食べさせたかっただ
    けどなあ、というのがあるんですよ。でイヤイヤ仕事していることがありま
    すよ。ノッて仕事していないんだもの」
 (小野さん)。



                  自分らしさ

「ゆうべお客さんがもっと『もっとつまみ欲しい』って言うから、『うちは
    居酒屋じゃないから、つまみはもない』って言ったんですよ。最初から考えが
    違うお客さんがいるわけですよね」
 (小野さん)。


                 トータルバランス

「(小野さんの店は)絵が季節ごとに替わっていたり、やきものが飾って
    あったり、店の雰囲気から清潔感から、そういうものがトータルでオヤジさ
    ん(小野さん)の感性ですから。そこまで味わわないとつまんない」
 (早乙
    女さん)。

 (小野さん)。



                   目利き力

「私なんか人のやつでも『あ、これは天庄の旦那のかき揚げだねえ』って
    すぐわかるよ。うん20何年見てなくたってすぐわかる。人間が全部出てる」

    (早乙女さん)。


                タイミングを逃さない

「要するにみんな同じなんですよ。モノを作るときっていうのはね。絶対に
     ココでモノをつかむんだっていう瞬間があって、それがオヤジさんの寿司に
     もちゃんと現れているんですよ」
 (早乙女さん)。


                    引退観


     頃っていうのは、いま、みかわさんが言ったように、流す仕事っていうのが
     あったんですよ。この頃はそれができなくなってどんどん慎重になってきて
     います。だから私は年とともに仕事のレベルが落ちているなんて思っていな
     いんです」
 (小野さん)。

「いま自分は77になってもやっているけど、自分としてはまだまだそれ以上
     の仕事をしたいっていうのもあるから、ますますおろそかに仕事できなくなっ
     てくる。年とともにどんどん見えてくるものがあるから、だから余計慎重にな
     ります」
 (小野さん)。


「これね、第一条件として、仕事好きな人じゃないとダメだと思うんですよ。
     年とって第一線でやっている人たちって、一日寝なくたって平気で仕事する人
     でしょう?だから単純に仕事が本当に好きじゃないと、40、50になって挫折し
     てくるんだと思いますね」
 (小野さん)。

                                        以上





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最終更新日  2007.05.21 18:27:22
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