2-44 どうしても好き



「ふぅ~・・・」

ため息をつくと、エミは頬杖をつき、デコレーションされてキラキラ輝いているピンク色の携帯を眺めた。

あれから全然、音沙汰がない。

本当に私のこと、どうだってよくなったのかな。・・・ゆう。

ぼんやりと考えているうちに、手から頬がかくっ、と落ちた。エミが慌てて周囲を見渡すと、他の男子学生何人かが笑った。彼女が思わず苦笑いをすると、何人もの暖かい微笑が返ってくる。

・・・ここが大学だってこと、忘れてた。

エミは少し乱れた髪を直した。真っ直ぐな長い黒髪が少しはねている。ストパ、かけ直さないとダメだなぁ。ゆうは・・・髪真っ直ぐの方が、好きだから。

そこまで考え、エミは暗い気持ちになった。振られたのに。きっぱりと、はっきりと振られたのに。・・・なのにダメ。どうしてもゆうが好き・・・。

エミは少しはねた毛先を弄びながら考えた。私をかわいいと言ってくれる人はたくさんいる。私とエッチしたいと思ってる人だってたくさんいるだろうし、私ほどの女に誘われてイヤな気のする男なんているはずがない。

なのに・・・ゆうは私を拒絶した。エッチの最中に他の女の名前を呼んだ。

“ごめん、お前のことは抱けない”

ああ言ったってことは、私じゃなく・・・浦原朝子なら抱けるって意味よね・・・・・。

エミはすでに「あさこ」の正体を掴んでいた。有芯の古くからの知り合い何人かは、彼の先輩である川島朝子の存在を知っていたし、その中には彼女が結婚し今は浦原朝子という名前であることを知っているものも当然いた。

何で、私が子持ちの人妻に負けるわけ・・・?! 初めてよ、こんな屈辱。一体私の、何が駄目なの?! 私はこんなに好きなのに・・・結婚してる女なんて、どうせゆうのこと遊びとしか思ってないに決まってる。なのにどうして振り向いてくれないの・・・?

エミは講義が終わってからも、講堂の椅子にだらしなく腰掛けたまま携帯を眺め、ぼんやりととりとめのない考え事を繰り返していた。

「エーミさん! どうしたの、ボーっとして?」

エミが顔を上げると、二つ下の後輩で遊び仲間でもある男子数人が隣で笑っていた。もうすぐ次の講義が始まるんだと思い、エミは慌てて席を立った。

「やっだ、もうそんな時間?! 誰も声掛けてくれなかったよぉ何で?!」

「みんな声掛けてたじゃないですか、エミさんが無視ってたんでしょ」

「・・・え?」

「それに、まだ次の講義まで時間ありますよ。俺たち、教授に用あって来ただけなんで」

「・・・そうなんだ」

私、みんなの声も耳に入らないくらい考え込んでたんだ・・・・・。

そう思うと急に哀しくなり、エミの目には涙が溜まってきた。

「わ、わ、エミさん、どうしたんですか?! ・・・俺らでよければ、相談に乗りますよ?」




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