once 13 27歳のお姫様



「う~・・・・・」

朝子は目を回していた。よろよろとおぼつかない足取りの彼女を、有芯は抱えるようにして歩いていた。

「大丈夫かー? ・・・ごめん。俺・・・」

朝子はやっとのことで口を開いた。「いいって、済んだことは・・・」

(有芯、マジでやめよう!? 私ね、何ていうか、体質が合わないの! 乗ると、目が回っちゃって、大変だよ!?)

嘘だと思ったけど、本当だったとは・・・。

「ごめんな、信じなくて・・・」

「だから、もういいって・・・」

空が、徐々に夕焼けに染まっていた。二人は同時に声を上げた。

「はぁ・・・」

「きれい・・・」

二人は、顔を見合わせ、照れ笑いをした。

「有芯、観覧車に乗ろうよ!」

「え、でも、今乗り物はまずいんじゃ・・・」

「今乗ったら、絶対夕日がきれいに見えるから!」

朝子は有芯を引っ張ろうとしてよろけたが、彼女が転ぶ、と思った瞬間、有芯に腰を抱えられた。

「自分の状態、分かってるか? 全く、世話のやける女だな」

「・・・もう、誰のせいよ?」

「分かった分かった! ほら、観覧車だろ?」

有芯は、朝子を『獲物』のように脇に抱え、歩き出した。

「ちょっと! やめてよ、下ろしてよ!! 一人で歩けるって!」

「うそつけ!」

「ってか、もっとマシな抱え方あるでしょう!?」

お姫様だっことか、と、朝子が言おうとした瞬間、

「あーもう恥ずかしいから騒ぐな! やっぱり、片手じゃ重い」

と言って、有芯は両腕で彼女を抱き上げた。

「わっ」本当にお姫様抱っこされちゃった・・・。

と、朝子が思った瞬間、有芯は言った。

「けっ。とんだ人妻お姫様だぜ」

「・・・・・ひっどぉーーーーい!! そんな言い方、ある!? それに・・・重いって言った?!」

「重いから重いって言ったんだぜ。さすがの先輩も言い返せないだろ?」

言いながら、有芯はちょっと言い過ぎたかな、と思った。

案の定、朝子は大きな目でじっと彼を睨み、「下ろして!」と暴れた。

「わっ、暴れるなよ、お前を歩かせると酔っ払いみたいで恥ずかしいだろ!」

「いい年してお姫様抱っこされているほうがよっぽど恥ずかしいわ!」

ついに、二人は地面に崩れ落ちた。周囲の視線が、痛い・・・。

「ねー見てよ、バカップル・・・」

違うよ・・・という意味をこめて、あやふやな笑いを投げかけると、二人は観覧車の乗り場へ走っていった。朝子はまだふらついてはいたが、恥ずかしさのあまり必死で走っていた。



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