once 71 奇跡



空港に着くと、有芯はうろ覚えだった飛行機の時刻を確認した。

12時50分・・・。やっぱり、今日の便で直通はこれだけだ・・・。

現在時刻は12時36分。とりあえず間に合った・・・と喜ぶのは早い。

もう飛行機に乗り込んでいれば会えない・・・!!

くっそ・・・こんなとき電話ができれば・・・。

携帯が壊れているから、朝子の携帯番号もわからない。いや・・・たとえ番号がわかったとしても、朝子が出てくれるかどうかわからないな。飛行機に乗っているなら、もう電源を切っているかも・・・。

しかし、やはり電話ができないのは苦しい―――。

有芯は搭乗口を凝視しながらイライラと考えを巡らせた。不意に、自分の脇にある公衆電話に肘をぶつけ、有芯は舌打ちした。

ん? 電、話―――そうだ!!

有芯はメモを取り出すと、バクバク鳴る心臓の音を聞かないようにしながら公衆電話に小銭を入れ、番号を押した。

頼む、宏信、出てくれ・・・・・!!

しかしどれだけ待っても彼は電話に出なかった。彼は5回かけ直し、そして諦めた。

「なんてこった・・・多忙なヤツめ・・・」

有芯はうなだれながら搭乗口を睨んだ。朝子の姿は見えない。

彼は苛立ちを落ち着かせようと長いため息をついた。焦りで眉間がひくひくと動き、額は汗でびっしょりだ。

あのバカヤロー。一体今どこで何やってるんだ?! もう飛行機の中なのか?! ・・・それとも、どっかで道草でもくってんのかよ?!

こうなったのも元はと言えば・・・

そこまで考えて、有芯ははっとした。

できるかもしれない・・・電話!!

有芯はジーンズの後ろポケットから、古い小さな手帳を取り出した。

「奇跡だ・・・あるぜ、番号が!」



そのころ、朝子は全身に汗をたっぷりかいて、自己嫌悪に陥っていた。

ウソでしょう・・・?! 私、到着した時はちゃんと迷わずに出られたのに!!

何で搭乗口がないの・・・?!(本当はあるんだろうけど!) 情けなさすぎて、涙も出ないわよ・・・。

有芯のことで泣きすぎたせいか、他のことにまで涙を出す余裕がなくなったのかしら、私の身体。

そんなことはどうでもよくて、早く搭乗口を探さなくちゃ・・・!! 今日飛行機に乗れなかったら、泊まるところもないし、まずいわ・・・!!

朝子は必死になって、階段を下りていた。目的の搭乗口と反対方向へ進んでいるとも知らずに。




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