2004年05月13日
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横浜市立大学 永岑  三千輝教授のHPより


ベンジャミン・フランクリン(1706年出生)と教養

広辞苑の記載:

フランクリン【Benjamin Franklin】

アメリカの政治家・科学者。印刷事業を営み、公共事業に尽した。理化学に興味を持ち、雷と電気とが同一であることを立証し、避雷針を発明。また、独立宣言起草委員の一人で、合衆国憲法制定会議にも参与。自叙伝は有名。(1706~1790)[株式会社岩波書店 広辞苑第五版]





フランクリンは自発的教養ゼミを組織した。彼は高等教育を受けることができなかった。一〇歳から働いた。印刷業の職人となり、長じて印刷屋を開業した。読書が好きで、夜間や休日に自発的読書を楽しみ、教養を身につけた。

大学だけが教養の場ではない。いやむしろ、普通の生活の場、市民生活の場こそが教養を深め拡大する場であるだろう。

大学はむしろその一生をかけての教養の深化拡大のためのできるだけいいきっかけを作る場ということであろう。

教養形成・深化の一つの重要な手段が読書であるとすれば、別に大学だけが教養の場でないことは極めて明白である。





彼は自発的な消防組合の提唱者、創立者でもあった。

そして、ペンシルヴェニアに大学を設置・創立する組織者の一人となった。自発的読書会として発足したジャントー・クラブがその中心となった。

→1751年創立のフィラデルフィア大学[1](のちペンシルヴェニア大学)[2]

彼はまた自発的な寄付金による法人を組織して病院を建設し、その基礎の上に州会から補助金を得た。

・・・・ヴォランティア精神





『フランクリン自伝』から、自発的勉強会の設立に関する箇所を紹介しておこう。 



1727年の「秋、わたしは有能な知人の大部分を集めて相互の向上を計る目的でクラブを作り、これをジャントー(スペイン語から来て、徒党・秘密結社を意味する)と名づけて、金曜日の晩を集まりの日にしていた。会則もわたしが起草したのだが、それによると、会員はすべて順番に、倫理・政治ないしは自然科学に関する何らかの点について少なくとも一つの問題を提出し、仲間の討論にかけることになっていた。また三ヶ月に一度は何であれ、自分の好きな題目について論文を書き、それを提出して読むという約束であった。討論も、議長の司会の下に、議論のための議論をするとか、相手を言い負かすために議論するとかではなしに、真理探求という真面目な精神で行うことになっており、しばらく後には、議論が喧嘩腰になるのを避けるために、独断的な言い方や真っ向から反対するといったことはいっさい禁制となり、それを破る者には小額の罰金を課することにした。[3]」



ジャントー・クラブは、「頃合の人数として」会員数を一二名までと決めてあったという[4]。

教養ゼミも、また2年生後半以上の本ゼミも一二名程度,せいぜい二〇名程度が理想的であろうと、私も考える。



できれば、『フランクリン自伝』の全体を読んでみてはどうだろうか。(こんなことを別にことさら強調しなくても、手元の岩波文庫版だけで56刷にもなっていることから、みなさんの中にもすでに読んだ人が何人もいるかもしれない)。私自身、読みなおすと、感銘深い点をいくつも発見できて、面白く、教訓的であった。



アメリカの健全な精神(アメリカにも日本や世界の至るところと同様に、傲慢不遜な精神・勢力がいることはいうまでもない)の育成にあたって大きな影響と与えた(与えている)とされるフランクリンの業績について、一度は味わってみるのは価値あることのように思われる。





彼は「現世の幸福を望むものにとって、徳を積むことは有利なのだ」という確信を述べ、それを証明し、自伝の読者に対して証明しようともしている。

彼が自ら定め、それを完全に身につけようと努力した徳(実際に行うのは彼の場合でさえ、彼自身、謙虚に、認めるように困難至極だったが[5])、その有名な13徳はつぎのようなものであった[6]。



「第1 節制  飽くほどに食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。 

第2 沈黙  自他に益なきことを語るなかれ。駄弁をろうするなかれ。

第3 規律  物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。



第5 節約  自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。

第6 勤勉  時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。

第7 誠実  詐(いつわり)を用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出すこともまたしかるべし。

第8 正義  他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。

第9 中庸  極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。

第10 清潔  身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。

第11 平静  小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。

第12 純潔  性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これに耽りて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。

第13 謙譲  イエスおよびソクラテス[7]に見習うべし。」



 フランクリンは、「あらゆる宗派の人に役立つ」道徳基準を確立すること、「ある特定の宗教に特有な教義といったもの」を排除することを目指した。人類に普遍的な道徳基準を確立し、自らの基準、努力目標にしようとしたということであろう。

フランクリンの精神、世界諸宗教に共通する道徳基準を抽出するという精神、人類の共通原則の確立という精神的地平は、宗教をめぐって、あるいは宗教を武器として悲惨な戦争がいまなお続く現代世界にとっても、熟慮すべき事柄だろう。



しかしフランクリンは、なによりも貧困から身を起こすこと、財産・富を持たない普通の人びと、年齢層でいえば「若い人びと」の向上と「立身出世」に資することを目指した。「正直と誠実とは、貧しいものが立身出世するのに最も役立つ徳であるということを、若い人びとに悟らせるようにしたいと思った」と[8]。



さて、教養ゼミに参加する諸君は、この点をどう考えるか?

フランクリンの13徳を、一つの努力目標の参考にするか、無視してしまうか?

自分なりに新たな基準をつくるか?

その場合に、世界の偉人から学ぶか?






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最終更新日  2004年05月22日 01時08分51秒
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