2004年08月07日
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まずい、官僚独裁主義がますます進行しています。
一般には目のとどかないところで。

司法試験から行政法をはずすこと


司法試験から行政法をはずすことにより、行政法に詳しい弁護士がいなくなります。

行政法を知らない裁判官なんて三権分立からしておかしくなります。

重要点抜粋

4 行政法の適正な執行の阻害

 行政法を適切に執行することは国民的な公益である。しかし、裁判官が行政法に精通しなくなると、行政法が正しく執行されず、裁判も長引き、行政側にとっても、とんでもない迷惑判決が増える可能性もある。前述の話とは逆に、裁判所が行政の裁量に不当に介入して、素人判断をする事態も予想される。これもまた法治国家に反する事態であるだけではなく、たとえば、環境影響評価法についてこうした事態が発生すれば、産業界も困ろう。

5 諸外国では?

ドイツでは、司法試験は、公務員試験をかねた国家試験になっている関係もあるが、行政法の主要部分は必修科目である(9)。先般、来日した


司法試験行政法廃止は法治国家の危機 神戸大学教授 阿部泰隆氏

一 はじめに-法曹三者の合意

 司法試験改革に法曹三者(最高裁判所、法務省、日弁連)が合意した。試験科目の点では、民事訴訟と刑事訴訟を必修にして、受験生の負担を考慮して、かわりに法律選択科目を廃止するのがその主要点である。たしかに、訴訟法の一つを選択しないで司法修習を受けるのも問題なので、両訴訟法を必修にするのもわかる。
 しかし、その反面、選択科目を廃止するのはいかがか。種々の代替策を十分に比較検討したのであろうか。行政法廃止の点では、筆者には、「法治国家の実現・行政に対する国民の権利保護という、法曹にとって考慮すべき重大な要素を適切に考慮せず、考慮すべきでない要素を考慮しすぎた」立法裁量の瑕疵があるように思われる。

二 法治国家の重要性

行政活動は法律に基づき、法律の範囲内で行われなければならない。これが「法治国家の原理」(法律による行政の原理)である。この行政活動の基準となるのが行政法規であり、行政が法律に従っていることを担保するのが行政訴訟である。戦前は行政訴訟を専門に扱う行政裁判所があった。通常の司法裁判所は、行政事件を扱わず、違憲審査権もなく、民事刑事の紛争を裁くだけであった。
 戦後は、行政裁判所が廃止され、違憲立法審査権が導入されたので、裁判所は、下級審も含めて、民事と刑事の紛争を裁くことのほか、憲法の定める三権分立の原理に基づき、立法・行政を適切に統制するという重要な任務を担っている。現在の裁判所は、戦前の行政裁判所と司法裁判所のほか、憲法裁判所という三つの機能を兼ねているのである。
この行政活動の規範となり、行政訴訟の基準となるのが行政法である。これは憲法の具体化法として、国家と国民の間の法律関係を定めるもので、私人間の利害調整規範である民事法、処罰に関する刑事法と並ぶ、国家の基本的な法制度であり、さらには、社会保障法、土地法、環境法、税法など、実用的な応用法の基礎法となっている。

三 法治国家は風前の灯火

1 行政裁判は不活発

 行政の横暴を阻止する最後の砦が訴訟である。しかし、日本の行政裁判は本来果たすべき役割を十分果たしているであろうか。実務法曹界からは、「行政訴訟はやるだけムダ」(1)、「現在の行政運営の実情は、法律による行政の原理という見地からは、ほぼ絶望的である」(2)とまで極言されている状況にある。
 まず、日本の行政訴訟は、出訴件数は年間一五〇〇件弱で、ドイツと比較すれば、人口比で換算すると三五〇分の一である。しかも、過日来日したドイツ連邦行政裁判所裁判長ゲンチ氏によれば、勝訴率はドイツでは二〇%程度と推定されるが、日本では数%もあるだろうか(3)。

 まず、原告適格など、行政訴訟の窓口は狭い。たとえば、京都の一条山訴訟はまちなかの里山が悲惨にもいわゆるモヒカン刈りにされたのに、建設省では、周辺住民には開発許可を争う不服申立て資格(訴訟の場合の原告適格)がないとされてしまった。周辺住民はこんな無謀な開発を争うこともできないのである。これは今の判例では維持される可能性の高い事例である。
 欠陥のある廃棄物処分場が許可されても、これまでの判例(前橋地判平成二・一・一八行集四一巻一号一頁)では周辺住民は取消訴訟を起こせない。住民が実力行使か住民投票などを活用せざるをえないのも、法律のルールに乗った判断の機会がないためである。これは産業界にも不利である。
 行政訴訟は出訴期間、不服申立庁、不服申立前置主義など不明確なことが多く、障害物競走のようなものである。都市再開発法の処分につき、自治大臣に不服申立てをしないと訴えが却下される(最判平成五・一二・一七民集四七巻一〇号五五三〇頁)が、その根拠は地方自治法二五六条であって、都市再開発法を担当している者でさえ気がつかない条文である。憲法三二条の定める裁判を受ける権利の保障の観点から柔軟に解釈すべきである。
 さらに、訴訟の審理方式でも、ドイツでは当事者の主張をよく理解して、その趣旨にあった主張ができるように示唆している。日本の行政訴訟でも、一九六三年のいわゆる個人タクシー事件、群馬中央バス事件の東京地裁判決では、訴訟指揮、釈明を積極的に行った(4)。しかし、今日の裁判所では、職権証拠調べ(行訴法二四条)は活用されず、釈明権も民事訴訟の審理方式に倣って、それほど活用されないので、行政法に必ずしも習熟していない原告側は苦労している。
 日本では、裁判官が行政の活動を審理するさいも、その裁量を大幅に認めてしまいやすい。その理由の一つには、日本の裁判官の守備範囲が広すぎて、行政法にかならずしも通じていないことにある。ドイツなら、独立の行政裁判所があり、最高裁判所である連邦行政裁判所にも六〇人もの裁判官がいるので、裁判官がそれぞれの行政領域の専門家となって、行政活動をチェックしている。

最近の例でも、都市計画で決まった路線とはずれ、計画によらないで途中まで違法に造った道路の前方の家を収用するために、できた道路にあわせてあとから計画を変更することを許した例がある(広島高判平成八・八・九行集四七巻七・八号六七三頁、広島地判平成六・三・二九判例地方自治一五八号九一頁)(7)。道路は、計画をつくってから、造るものであって、事実上工事をして、後から計画をつくって収用しようというのでは、何のための計画か、何のための法治行政か、わからない。しかし、一部の裁判所はこんな無茶も許してしまうのである。
 また、行政も、行政指導にみるように不透明で、訴訟による解決をできるだけ回避するように圧力をかける運用をしている。ゲンチ裁判官によれば、ドイツでは、訴訟を回避するように不透明な解決をすれば、会計検査院から指摘されるとか、隣人の訴訟で争われるなど、歯止めがあるので、このような不透明な解決はしにくいということである。
 この状況では、行政に不満でも、多くの国民はあきらめざるをえない。訴訟を嫌う日本人の意識が訴訟を少なくしているという見方もあるが、逆に、訴訟を起こしても割が合わない制度が訴訟嫌いにしている面もあるのである。これでは法治国家は機能不全に陥っていると言える。

2 行政法試験廃止で知識経験の絶対的な格差

 商法は重要科目であるから廃止されない(法曹三者の合意では口述だけ廃止)が、かりに、商法を司法試験科目からはずしても、両当事者とも条件は同じであるから、不平等ではない。しかし、行政訴訟ではこれからも行政側は専門家であるのに、行政法を司法試験科目からはずせば、裁判官や弁護士のなかで行政法を習った者が激減する。丁度、司法試験で裁判官と弁護士は刑事訴訟をとらず、検事だけがこれをとっているようなことになる。今日行政訴訟が細々と生き残っているのは、行政法で司法試験を受験した一部の弁護士が頑張っていることによるところが大きいのであるが、行政法が試験科目から廃止されると、被告行政庁との知識経験の格差は絶対的になり、行政が訴訟で敗訴することはきわめて少なくなろう。そうすれば、行政訴訟はますます提起されにくくなり、提起されても、原告勝訴の可能性がほとんどなくなるので、ますます行政訴訟は減る。これは悪循環である。
 今日、行政訴訟を権利救済の実効性の観点から改革することが望まれている(8)が、これでは、逆行している。

3 法治国家化の要請に矛盾

 今日、行政を透明にし、国家の重点を行政から司法に移行させ、日本をより法治国家にすべきだというのが国民的な合意と思われる。行政が事前に不透明な関与をするのではなく、いわゆる規制緩和により、明確なルールに基づいて規制し、事後に監視することに重点を移すことになるが、そこにはまた裁判所による救済が前提となっている。最近制定された行政手続法、環境影響評価法、近く制定が予定される情報公開法も、法治国家の手段である。さらに、これは行政と民間人や企業との関係だけではなく、国と地方の関係にも及んでいる。地方分権推進委員会の中間報告と勧告では、地方を国の中の組織法として位置づけるのではなく、国と地方の間を法主体間の法治国家関係にして、その間の争いを最終的には訴訟で解決しようとしている。
 したがって、行政法に精通した弁護士を増やすこと、本来なら、必修とすることこそが、今日的要請に合致するのである。
 しかし、司法試験改革の動きはまるで逆の動きである。国のやっていることと、法曹三者の提案していることは矛盾しているのではないか。

4 行政法の適正な執行の阻害

 行政法を適切に執行することは国民的な公益である。しかし、裁判官が行政法に精通しなくなると、行政法が正しく執行されず、裁判も長引き、行政側にとっても、とんでもない迷惑判決が増える可能性もある。前述の話とは逆に、裁判所が行政の裁量に不当に介入して、素人判断をする事態も予想される。これもまた法治国家に反する事態であるだけではなく、たとえば、環境影響評価法についてこうした事態が発生すれば、産業界も困ろう。

5 諸外国では?

ドイツでは、司法試験は、公務員試験をかねた国家試験になっている関係もあるが、行政法の主要部分は必修科目である(9)。先般、来日したドイツの憲法裁判所J・キューリンク判事は、司法試験から行政法をはずすことは「想像を絶する」と述べた。韓国でも台湾でも行政法は必修である。

四  行政法は民事・刑事法とは異質

 行政訴訟を、民事事件に習熟した裁判官が民事事件方式で事件処理をすることが、司法統制が機能しにくい原因の一つである。








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最終更新日  2004年08月07日 09時55分18秒
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