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今日は、江戸の米会所が開闢以来、稀に見る大賑わいでございました。相場師たちの間で、伍萬の金高を超えたと、大声で騒がれております。
されど、私の心中は、この祝言とは裏腹に、冷え切った侘しさに満ちております。
私は先高と読み、幾許かの銭を張ってございました。しかし、私が仕込んだ玉は、世間の景気にまるで追いつかず、逆に値を落とすばかり。まるで、木戸銭を払って、損をする見世物を見せられたような気分でございます。
昼下がりには、持病のように増え続ける「大幅な損金」が、もはや私の身代を崩しかねない程になり申した。このまま寝かせては、虎の子が尽きてしまう。
私は腹を括りました。
身代持ち直しが先決。商いの鉄則でございます。「損は浅いうちに手を引くべし」。
私は、自ら手元の勘定を確かめ、全ての玉を売却いたしました。
「手仕舞いなり」。
この覚悟が、私に残った命銭を救うたのでございます。痛恨極まりないお仕置きではございましたが、見切り千両。この戒めは、後々の商売に必ず生かされると、固く信じております。
夜が更けました。冷えた煎餅をかじり、私は帳場に向かいます。
今日あったことを、誰に聞かせるためでもございません。この大損の顛末を、「私の商いの記録」として控えに残すためでございます。
私は筆を取り、楽天ぶろぐという名の「商いの覚え書き」に、今日の全ての勘定を記すのでございます。
「生きていれば、また米も買える。」
そう独り言ちて、静かに帳面を閉じたのでございます。
(終)

