月の光

月の光

カルマの坂



それさえも分からずに、ただ生きるだけの日々

親、家族、友達 そんなもの何ひとつない

あるのは吹き付ける冷たい風と、気にもとめてくれない過ぎ去っていくだけの人々

命を繋ぐため、食べ物を盗みそれを食べ、生きる

終わりさえ見えなかった


そんな繰り返しの毎日が少しだけ変わったのは、あの少女を見たからだった

何故かあの美しい少女に気を惹かれ、立ち尽くしてしまった

うつむいた悲しそうな表情

何が彼女のそんな表情をさせるのか

ふと目に入ったのは少女の足に絡みつく鎖

目立たないとはいえ足かせと呼ばれるもの

という事はどこかの街から売られてきたのだろうか

だとすると少女の手をひく、あの金持ちそうな男は―――

少女の目から零れ落ちた涙が、全てを物語る


少女が大きな家に連れ込まれるのを確認し、彼女の背景をそこに見た少年は
ただ一人、やりきれなさに震えていた

自分に力さえ、金さえあれば、あの子に他の人生を与えられたのに―――

‘人はみな平等’? 神は僕らを見放したのだ



夕暮れ時 盗んだ剣を引きずる少年がいた

それはまさに風のよう。儚く、哀しみに満ちた姿だった

少女の家に忍び込み、怒りと憎しみに身を委ねる

少女を買った男の血を浴び

彼女を見つけた時にはすでに、時は遅かった

力なく笑う少女に、すでに希望などはなかった


壊された魂で微笑む少女に

叫びながら、最期の一振りを


哀しみなんか感じなかった

そこにあるのは人の虚しさと、変わらなく続くつまらない現実

一体僕らが何をしたというのだろう

生まれただけで罪なのか?

魂を壊されるほどの罪を犯したというのか

僕らには 死しか救いがないのか



それでも僕は生きなければいけない

自分の手であの子を殺した責は負わなくては

ただそれだけのために、僕は生きよう

僕らだけでも清らかに、汚れなく―――――









inポルノグラフィティ  カルマの坂より

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