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convientoさん
姫は前の席のきれいなお姉さまがたが気になって仕方ない。彼女の困る癖の一つに他人の頭のにおいをかぐのが好き、というのがある。ドビーからみれば、新幹線や特急などの座席で立ち上がれば、面前に広がるのはたくさんの後頭部の絨毯(うっとり)、かぎたい放題の素敵な場所、ということに。
かくして4時間10分の三分の1が彼女に人様の頭頂部のにおいをかがせないようにする母・兄の修練の時間となった。
兄たちが、車窓の外が見えずに残念がっていたのとは対称的に、鏡と化した窓をみる大喜びのドビー。そして乗り物酔いと一人戦うペン次。ペン太は何度もトイレや自販機に席を立ち、戻ってくるネクタイ姿はまるでくたびれたサラリーマン。しかしポケットからのぞく携帯ストラップの大きいドコモダケが笑える。
乗り換えはスムーズにいったと思ったのに、乗り込んだ途端、力ずくでも降りようとする姫。三人掛りで座席に押し込み、ヘロヘロになった兄二人は特急道中の半分は寝ていた。私はウトウトしながらも姫を一人で放ってはいけない、と我慢。ついに姫は行きの車内で寝なかった。
22:32高知着。タクシー乗り場に向かう。ペン次は酔いが激しく、タクシーじゃなく歩いて行きたい、と言うが、荷物の重たさに加え姫はぐったり。車で5分の距離はかなりあるとみて少し休ませ、タクシーで我慢してもらう。ホテルについた途端、彼はトイレに駆け込んだ。出てきたペン次にゴメンねと言ったら、大丈夫、吐けなかったとのこと。いっそ吐いた方が楽なのになあ。。
和室の部屋はトイレと風呂が分かれたタイプ。ペン太は露天風呂つき大浴場に行く、と出ていったが、私たちは内風呂ですませた。ペン次はここでやっと駅弁を食べて落ち着いた。明朝シャワーをするといって顔を洗ってすぐに布団にもぐり込んだ。
ここにいたっても未だ姫の落ち着く気配なし。初めての場所は常に不安でいっぱいで不安そうな声をずっと出しているのでとりあえず部屋の中を案内。ほらトイレだとかここはシャワーね、こっちには冷蔵庫、あら空っぽだ~とか。やっと寝ついたのが12時半をまわったころ。わたしもようやく寝られると思った12時40分、なんと館内に非常ベルがなり響いた。兄たちはねえ、これって火事?火事?と騒ぐ。
ノックがあったので寝巻きの前をかきあわせて少しドアを開けると、ホテルマンのおじさまが、誤作動だとは思いますが、念のために風呂はついてませんか?と訊いてきた。「ついてません!」あやや、口調がきつかったかも。だってようやく寝たと思ったのに、これでまたみんな目が冴えてしまったんだもの。明日の起床時間まで5時間を切った。
朝。携帯が鳴ってもなかなか起きられない。頭痛に鼻血で気分は最悪。レンタカーとてもじゃないけど運転できない。予約を入れてたレンタカーを断ってタクシーを頼むことに決めた。
フロントにタクシー手配を頼んで朝ご飯。ご飯大好きのペン太には悪いけど、みんな洋食に揃えた。とても美味しくて子供たちは完食。あれ?向こうの食卓にダウン症の男の子と母親の二人連れがいる。もしかしたら。同じ日に同じホテル。絶対に行先は同じだ、と思いながら先に食堂をあとにした二人を見送った。さあ、われらもいざゆかん、光の村へ。
タクシーの運転手さんは親切だった。ペン太は初対面でもよく喋るし、あちらもあれこれと高知のことを教えてくれた。30分も乗ったのに、その間、喋りすぎもせずだんまりでもなく、名古屋にいったことがある話や、高知のみどころの紹介も。
車に乗り込んだときはどしゃ降りだったのに、だんだんと雨が小降りになっていった。この分だと持ってきた折り畳み傘は使わずにすみそうだ。うう、3本も持ってこなきゃよかった。
運転手さんは障害児のことや学校の説明にも熱心に耳を傾けてくれたので、嬉しかった。帰りもお願いしたいといったら快く引き受けてくれた。
(続く)