愛 こ と ば・心 の 散 歩 路

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2009.10.21
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      ☆ マグマ有り[下]


それから、彼……某大手企業の

人事係長が話し出した話………。


彼は、今度の事故で亡くなられた

一人の社員の通夜に行っての帰り

だったのだ……。……それで、

黒っぽい服装だった……。


亡くなられたのは、前途有為の若い社員…………ということ。






…………泣き崩れる奥さん。



………………茫然自失のご両親。



……意味が分からず、ちょこんと座っている二人の幼子。




……「会社に殺された!」と罵倒を浴びせる親戚の人達。



靖国3靖国2



彼は、そんな通夜の席を務めてきたばっかりだったのだ。

大変な場だ……大変なことだ……。



「会社の中で、人が死ぬなんて……絶対にあってはならない!

 若い社員の将来を奪い、家族から、夫・父を奪い……何が

 大企業だ!!何が一流企業でしょう……!!」


「……」


「我が社は、驕ってはいけない。人の命よりも大切なものなんて

 ありはしない……」



壁掛け花竹



悔しそうに、膝を叩きながら、目を真っ赤にして話す彼の姿に、

こちらまで、涙ぐんでしまった…………。


 ともすれば事故処理を事務的に運ぼうとする上司たちの言動も

許せなかったようだ……。


痛ましい工場での事故死……。

彼は、生まれて初めての経験をしたに違いない……。



女将も、涙ぐんで聞いている……。


貝黄花閻魔貝黄花



暫くして、少し落ち着いてお酒を飲みだした彼に、


「遺族に出来るだけの事をしてやらねばなりませんね……」


と女将が静かに小さな声で言った……。

……まるで子供のように、素直な頷きを見せる……彼。


いつもの彼とは、全く別人の彼がそこにいた。



サボテン花



「おっとこ(男)だねぇ―!!!!(>_<)」


思わず、そう言って彼の傍に行き、

お銚子を取ると彼に酒を注いだ。


「どうも……お恥ずかしい所をお見せしました」


そう言って、盃を飲み干した彼は、その盃をこっちにくれた。

なみなみと注いでもらって……、

「これからが大事な正念場やな……」と、言って、飲み干した。


臼杵.jpg



「あんたみたいな人が、あんな超大企業に居て、俺は嬉しい。

 流石に大手の会社や。立派な社員を持っている……。

 頑張って……」

握手を求めてきた彼の手を握り返して……元の席に戻った。

こんな熱い彼を見たのは、最初で終わりだ。



丁度、3人……新しい客が入ってきたので、

ひとつの、場面転換になった。




一人の人間には、

その人を囲む家族、親族、友人、会社の同僚、

その他様々な人の輪が、歴史と共に広がって存在している。


その一人の人間が、突然消え去るという事は……、

言うまでもなく、これは、大変なことだ。


……一人の人間の命の重さ…………。



一献



その彼は、

その後「クール須崎」と異名を取ったらしいが……、

その20年後に社長にまで上り詰めた。


……彼の、若き日の、エピソードである。



          <完>





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最終更新日  2021.10.09 21:19:07
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