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「ルツの祝福」
甲斐慎一郎
ルツ記、4章
ボアズは、ルツの願いを聞いて、ためらったり、遅らせたりする
人ではありません。彼は、ナオミが想像したとおり(3章18節)、
すぐそのことを行動に移しました。
一、エリメレクの土地を買い戻す権利をボアズに譲渡した最
も近い親類(1~6節)
ボアズは、裁判や商売をしたりする町の門のところへ行き、そこ
にすわりました。彼は、ちょうど通りかかった買い戻しの権利のあ
る親類の人を呼び止め、町の長老十人を証人として立て、その人に
エリメレクの土地を買い戻すかどうかを尋ねました(1~4節)。
すると彼は、エリメレクの土地を買い戻すことを承諾しましたが、
死んだ者の名をその相続地に起こすために、死んだ者の妻であった
ルツをめとらなければならないことを知ると、買い戻しの権利を放
棄し、それをボアズに譲渡したのです(4~6節)。
これらの出来事を正しく理解するためには、次に述べることを知
る必要があります。
「第一は、人が子のないままで死んだなら、その親類は彼のやも
めをめとらなければならないこと(申命記25章5節)、第二は、
人が貧しくなって所有地を売ったなら、その親類はこれを買い戻す
ことができること(レビ25章25節)です。前者は親類の義務であ
り、後者は親類の特権です。......ボアズは、まず彼に親類の特権、
すなわち土地を買い戻すことについて述べると、彼はこれを承諾し
ました。しかし次にこの特権に伴ってルツに対する義務のあること
を注意し、もしこの義務を果たさなければ、その特権を失うことを
述べると、彼はその特権をボアズに譲渡しました」(A・イーダー
シャイム)。
「彼は自分の所有とならないで、ルツの産む子のものとなる土地
に金を使って自分の相続地をそこなうことはできなかった」のです
(A・マクドナルド)。
二、エリメレクの土地を買い戻し、モアブの女ルツを妻とし
たボアズ(7~12節)
買い戻しの権利のある親類の人は、自分のはきものを脱いで、そ
れをボアズに渡しました。これが当時のイスラエルにおいて権利を
譲渡する証明の方法でした(7、8節)。
「彼がくつをぬいでも律法の命じる社会的制裁は受けなかった。
実際くつを渡すことはボアズに土地を渡すのと大差なく、侮辱でな
かったらしい。くつは所有者の土地を踏む権利を象徴した(詩篇6
0篇8節)」(A・マクドナルド)。
ボアズは、門にいた人々と長老たちという証人の前でエリメレク
の土地を買い戻し、ルツを妻としました(10、11節)。おそらく初
めて会ったその時から、ボアズとルツの間には愛が芽生えていたこ
とでしょう。ルツは、当時のユダヤの風俗習慣として行われていた
正当な方法でボアズに保護と贖いを求めることによって、ボアズも、
どこまでも合法的に彼女の求めに応じることによって、両者とも願
いがかなえられ、二人は結ばれたのです。
三、ボアズの妻となり、イスラエルの王ダビデの祖父オベデ
を産んだルツ(13~22節)
ルツはボアズの妻となり、ひとりの男の子を産み、その子はオベ
デと名づけられました。このオベデこそイスラエルの王ダビデの祖
父です。
「このようにして貧困とききんと流浪によって始まった物語は、
ついにダビデの王位に達しました。確かにこの物語の主な目的は、
ダビデの家の歴史を示すことであり、ルツ記は、その目的にふさわ
しくダビデの系図で終わっています」(A・イーダーシャイム)。
あのモアブの野においてイスラエルの神としゅうとめナオミに従
う決心をした異邦人の女ルツが、ボアズの妻となることによって、
マフロンの相続地を興しただけでなく、イスラエルの王ダビデ、そ
して救い主イエス・キリストの先祖の一人に加えられたことは、た
だ計り知れない神の恵みによるのです。
拙著「士師とサムエルの生涯」32「ルツの祝福」より転載
