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ホテルが思いのほか便利な場所にあったので道に迷うこともなく、1時には着いた。
「必ず来てちょーだいねっ」の確認もかねて 早速さっきの業者に電話をかけ、ホテルに到着したことを報告する。
交通事情から正確な時間は言えないけれど 確かに担当者がそっちに向かっている のでロビーで待つようにと言われ、胸を撫で下ろした。
暫くするとこちらに向かっているという担当の方から電話が入った。
2時15分ごろには「開錠の**」とかなんとかボディに描かれたバンがホテルの通りに横付けするのがロビーから見えた。
おぉ~、遂に!
あのスタバでハンドバッグの中を引っ掻き回して以来、私たち家族の心を重たぁく沈ませていた問題を解決してくれるヒーローの登場 である。
ほとんど感涙。
お待ちしておりました~~~ と、ハグせんばかりの勢いで私はバンに駆け寄った。
白馬の王子様ならぬ バン上のプロフェッショナル が運転席から降りてくる。
「このスーツケースの開錠ですか。
今、お見積り出しますね」
開錠のプロフェッショナルは早速スーツケースを点検し始めた。
良かった、これで、遂に!
「あれっ、このスーツケースは・・・」
「え、何か?」
「いやぁ、これはちょっと…あれだなぁ」
「えっ、もしかして…開けられませんか!?
これだと古いから難し過ぎますかっ!?」
「いやぁ、開けられないってことはないんですけどねえ。それよりもねぇ」
「それよりも何ですかっ…」
「 鍵穴が3つ ありますね」
「はっ?」
「ほら、ここ。
このスーツケースには3か所、鍵があるでしょう。
まずいなぁ、1か所じゃないんですねぇ 」
「はぁ?」
まずいなぁって…
娘のおさがりで、今では日本の国内旅行用に使っているスーツケースには確かに、両端と真ん中の3か所に鍵がついている( 写真は娘の新しい方のスーツケースで、大阪旅行に使った物は今も日本に置いてあります) 。
だけど…
だから 何っ !?
スーツケースには ふつーついてるよね、鍵穴の2つや3つ 。
つーか、 メタルのスーツケースなら絶対に鍵穴、最低、両端に2つはあるでしょ。
なのに、おじさんは堂々と宣言したではないかっ。
「 鍵3つですから、料金は3つ分かかりますよ 」
「はぁっ!?」
「 3つで、2万4千円になります 」
「 えぇっ!? 」
「電話でお聞きになっていると思いますが、 お支払いは現金で お願いしますねっ」
「 えぇ~~~~~
」
目が点。
動揺しまくりながら、それでもスマホを取り出した。
その会社のHPにあった料金表を探した。
「でも電話で料金を確認したときには、スーツケース1個8千円って言われたんですけど・・・
そちらのHPにも8000円って明記されていましたけど・・・」
けれどおじさんはさらりと言ってのけるのだった。
「 8千円~ から 、となっていますね。
8千円は鍵が1つのスーツケースのお値段ですから」
「え~~~~」
て、鍵が1つだけって、 いったいどんなスーツケースだよっ!
と挑みかかりそうになったとき、昔々、自分が未だ大学生のころに初めて買ったスーツケースを思い出した。
それは布製のスーツケースでファスナー部分を鍵で留めるようになっていた。
それだと確かに鍵は1つだけだった…けど…
なまじ 記憶が蘇ってしまったので、途端に強気になれなくなってしまった自分 …
あぁ、こういう時 だけ シャープになってしまう記憶力が恨めしい。
それにしても、これって、もしかして…、
ぼったくり?
私ってば、足元、見られてる?
うろたえながら、真ん中の施錠には別の鍵が必要だったので、掛けなかったことを思い出す。
こずるそうなおやじ に(私の目に映る彼はもはやそうとしか見えなくなっている)
「でも真ん中のは鍵、かけてないです」と、ぼそぼそっと告げた。
「あ、そう。
じゃあ、2つで1万6千円ですね」
「え、え~~~~」
ぼってるよね、おじさん。
「 そこに8%の消費税がかかって、1万7千280円ね。
はい、見積。
今、領収書、書きますね」
おい、 ぼってるだろ、おやじっ!
「でも、あの・・・」
「あれっ、どうしますか?
開けますか?
それともこのままにしときますかぁ?」
このぉぉぉぉ、 狸親父ィっ!
一瞬、鳩尾から怒りの炎が噴き出した。
「もう結構ですっ!」
そう言って、今貰ったばかりの見積書を突き返してやりたい衝動に駆られる。
これは、明らかに ぼったくり ではないのかっ!?
1消費者として、こんなやり口を許していいものだろうかっ!?
こんな詐欺まがい商法には断固として立ち向かわなくてはならない。
さあ、毅然とした態度で、三下り半を突き付けてやるのだ。
はっきりと宣言しなくては。
「話が違うので、やはり結構です」と。
私の怒りと戸惑いを察したらしきインチキおやじは領収書を取ってくるとバンの運転席に戻った。
でも、ここで断ってしまったら・・・
彼の後ろ姿を見ながら今後の展開を考えてしまった。
フロントで地元の鍵屋さんを探してもらおうか?
見つかるだろうか?
今夜中にスーツケースを開けることができるだろうか?
ガラス超しにフロントの様子を窺えば、ロビーの椅子に座った子どもたちが心配そうにこちらを見ていた。
スーツケースの中には、オーストラリアの主治医に出してもらった、息子のアトピー用のクリームが入っている。
子どもたちの喘息用パファーも・・・
私のコンタクトレンズ一式や眼鏡や・・・
改めて自分の愚かさが呪われた。
子どもたちがあんなに楽しみにしていた大阪旅行を鍵屋探しに費やすわけにはいかない。
戻ってきたおやじに断腸の思いで告げた。
「お願いします」
「はい、じゃあ、現金でお願いしますよぅ」と、インチキおやじは勝ち誇ったように言った。
怒りと口惜しさと惨めさが入り混じり、情けない気持ちで現金を手渡した。
身分証明書を提示した。
「じゃあ、開けましょうねぇ」と、長いピックのようなものを手に戻って来る。
こういうの、ぼったくりって言うんじゃないんですか!
詐欺まがい商法とか言うんじゃないのぉ!
嫌みの一つでも言って毒づきたいところだ。
だけど、私ってば、仏教徒だし。
チベット密教徒だし。
ダライラマ法王から菩薩戒も授かったではないか。
腐っても、タントラ・ヨーガ行者なのだから。
なんとか、 なけなしの英知と菩提心を絞り上げて、怒りを慈悲の心に変容 させなくては !
「でもですね」と、スーツケースに手をかけた彼の背中に言ってみた。
「私が電話で料金を確認したとき、確かに8千円と言われたんです。
HPでも1個8,000円となっていたし、確かに から<~> とかも記されていましたが、8千円だと思い込んでいました」
「あ、そうですか」
「他にも私のようにスーツケース1個8千円だと勘違いしてしまう方もいらっしゃると思うんですよ。
だから今後のためにお願いします。
そちらの会社のHPに、スーツケースの鍵の数によって値段が変わることを、もっと明確に記していただけますか?
せめて電話で料金をお尋ねしたときには、 8千円はあくまでも鍵穴1つのお値段であって、鍵穴の数によって倍上がり になることを説明していただけますか?」
「はい、はい。そう伝えておきますよぅ」
小ばかにしたように、さらりと答えたおやじを前に思った。
おいっ、絶対に伝えないだろ、お前っ!
そうして彼は ピックのようなもので、あっという間に開錠
してしまった。
その速さたるや、私がふつーに鍵を開けるのと同じくらいの速さで、1分とかかっていなかった と思う。
その余りのイージーさにまたムッとしそうになる。
だけどそのときバンのナンバープレートが目に入った。
なぜか「横浜」ナンバー であることに気がついた。
なぜっ? ここは大阪なのに…
そういえば、
フリーダイヤルで会社に電話をかけたとき、ちょうど新横浜駅に入ったところだったけど…
まさか、横浜から来た わけじゃない、よね?
ありえない。
とは思っても、 新幹線と一緒に横浜から大阪めがけて走ってくるバンを想像したら、なんとなくおかしくなった 。
いくぶん
心が和んだ。
いやぁ、まったく、
急いで注意力が散漫になってしまうとロクでもないことになってしまう 、ということをしみじみぃと体験した 1 日でした。
あぁ、高~いレッスン料を払ってしまった。。。
24時間、マインドフルネス を心掛けなくては、と改めて実感した次第デス。
旅行から戻って、この話をしたところ、妹はあっさりと一言。
「それで言われるままに1万7千円も払ってきたの!?
バッカじゃん」
ですよね。。。返す言葉もありません。
大阪に数年暮らしていた友達は、
「値切ればよかったねぇ。
大阪ではね、値切りも ふつーにあり だよ」
そうだったんですか。
実は私も後で ダメ元で値切ってみればよかった、と後悔 しました。
ほんと、 自分の交渉力の無さ が情けないデス。
「ネットの、お店の評判とかに書き込めば?」と大学時代の友達。
「う~ん、でも批判や悪口系のことは書きたくないしなぁ…」
「そうじゃなくて、この会社を使ったときにこういうトラブルを経験しました。
開錠をお願いするときには、事前にスーツケースの鍵穴の写真を送って、これでいくらになるか見積もりを出してください、と交渉した方が良いと思いますってアドバイスを書けばいいのよ。
他の人が同じトラブルに巻き込まれるのを防げるでしょう」
確かに!
けれどやはり実名は憚られるので、体験だけを。
というわけで、
もしもあなたが私のように スーツケースに掛けた鍵をうっかり家に置き忘れて旅に出てしまったときには 、どうぞ思い出してください。
・スーツケースの鍵穴部分を全て写真にとって、事前に LINE か何かで送ったうえで、料金の交渉をする! 、と。
万一の場合に強くお勧めしたい対処法デス。
さて、最後になりましたが―
余りに遅ればせてしまって、新年のご挨拶など失笑どころか顰蹙でしょうが、それでも気持ちだけ。心を込めて。
皆様の 2019 年が実り多く、幸せな年になりますように。
良い旅に恵まれますように。
今年はもっと頻繁にブログを更新しようと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
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