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2020.12.02
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カテゴリ: 家族を見送る


ブログ10月の日記​ 「コロナ禍のハロウィーン」 ​で触れたけど、
去年のハロウィーンの翌日から
夫の人生も、
私たち家族の人生も大きく変わった。

1年が経ち、あのころのことを思い返せば、
何か不思議な気がしてしまう。
熱にでも魘されていたような。
どこか心が麻痺していたような。


(今も毎日慌しいけれど気持ちの余裕はあるの)
「あのころ」のことを書いてみようと思います。


ハロウィーンの翌日、自宅に戻ると、
夫がファミリールームのカウチに座っていた。
いつもなら自分の書斎で仕事をしている時間なので
珍しいな~と思いつつ
私の方は夕食の支度で忙しなかったので気にも留めなかった。
夫はキッチンに立つ私に話しかけるでも
テレビを見るわけでもなく、ただ座っていた。

夕食の支度ができて、子どもたちを呼び寄せたとき


「一人じゃ立ち上がれないから、
メェちゃん、手を貸してくれる?」

はぁ?
一人じゃ…立ち上がれ・・・なぁい!? びっくり
目が点になってしまった。


ってことも驚きだったけど、
それ以上に、私に頼まなかったことに。

私はずっとここで料理を作っていたのだから
「腰が痛くて立ち上がれないから手を貸してくれる?」
と一言、頼めばいいではないかっ!?
それを 娘が現れるまでひたすら待ち続けて頼む って… 
何、それ!?
感じ悪過ぎだろ。嫌がらせっ?

もしかすると、料理で忙しそうだったから頼むのを控えたとか、
骨粗鬆症予備軍の私には敢えて頼まなかったとか、
そういう理由だったのかもしれないけれど、
正直ムッとした。

そうして、それはまさに
私たち夫婦の関係を象徴していた 、と思うのだ。

結婚四半世紀を経て、
関係は重く、
距離間はむしろ遠ざかり・・・。
いつしか夫も私も、頼みごとは配偶者にではなく
子供にするようになっていた。

国際結婚はうまくいっているときはいいけれど
不仲になると大変だと、私が小学生のころ
母が新聞で読んだと言っていたことを思い出す、

国際結婚で何十年も同じ屋根の下で暮らしていると、
それぞれの文化的要素や育ったバックグラウンドが
あまりに明確クリアにわかり易~く違うために、
険悪になれば庶物、わかり易~く闘争のネタになる 。

日々の食事や生活習慣、家庭内で話す言語やテレビや文化面、
果ては、どの国で暮らすかまで。
それぞれが自己主張し出せば切りがなく、
際限なく、エゴのぶつかり合いとなってしまう んだ。

そうでなくても、夫婦は子育てを通して
ぶつかり合うことが多いというけれど、
私たちの軋轢はかなりのものだった。
思い返せば水面下でも水面上でも、
日々揉めまくっていたのだった。

それでも ​ 家族の絆 という点では、しっかりと結ばれていた​ 。
二人とも、子どもが何より大切だという、
この家庭をどうしても守りたいという、その共通の思いから。

そうしてその夜―
複雑な思いの私をよそに、
娘に手を引っ張ってもらってカウチから腰を上げた夫は、
夕食の後またカウチに直行した。
自分の書斎にも寝室にも戻らず、
腰が痛いからベッドでは眠れない、と
そのままカウチで一晩を過ごしたのだった。

シドニーの医師団から、最後の頼みの綱だった
放射性核種内用療法を中止するという連絡を受けた翌日ではあったけど、
昨日まで夫はそれなりに「ふつー」に生活していたのに…。
本人は、子どもたちが入ったプールのカバーを戻した際に
腰の筋肉を傷めたのだと言っていたけれど、
まったく訳が分からなかった…。


翌日になっても夫の腰の痛みは引かず、
むしろ酷くなっていた。
結局、夫は夜中に大学病院の救急に行った。

病院から戻って来たのは翌日のお昼ごろで、
入院させるかどうかで病院側は迷っていたそうだけど、
痛み止めを処方しただけで返された。

私は、痛みの原因が
癌の進行のせいじゃないかと心配していたのだけれど、
医者は本人のいうように
無理な動きから腰を痛めたのだと判断したらしい。
だけど検査の類は何もしなかったんだそうだ。
激痛で救急医療に駆け込んだのに、
レントゲン写真の1枚も撮らない・・・
オーストラリアの医療らしいとは思ったけれど…。

それでも病院で貰ってきた強力な痛み止めのお陰で
夫はベッドで眠ることができたのだった。
少なくともその夜は。


けれど翌日にはもう病院で支給された痛み止めも効かなくなって、
夫はやっぱり入院したいと言い出した。
ベッドも椅子もバスルームも、この家の家具は何一つ
背骨の激痛に喘ぐ自分の規格には合わないから
ここではとても生活できない、と。

GP、ホームドクターを訪ね、
その日のうちに地元の病院に入院することが決まった。
ハロウィーンの夜から僅か4日後 のことだった。

入院してから検査の結果、
痛みの原因はやはり骨折だとわかった。
背骨の一部にヒビが入っていて、
普通に生活できるようになるには2か月ほどかかるだろう、と。

それでも激痛の原因が
癌によるものではなかったので、ホッとした。
幸い病院が近かったので、毎日お見舞いに行くこともできたし。


父親の突然の変化に
子どもたちはかなり戸惑っていたと思う。
中1の息子はもちろん、
大学進学のVCE試験が始まっていた娘など、特に。

娘本人は私たちと一緒に父親のお見舞いに行ったり、
勉強の合間に弟と遊んだり、家の手伝いをしたりと
普段と変わりなく振舞ってはいたけれど、
内心ではどれほど不安だったことだろう・・・。

ちなみに、VCEとはVictorian Certificate of Educationの略で、
ビクトリア州高等教育の修了証書である。
一般的にビクトリア州では
このVCE試験がオーストラリアの大学受験になる。
その結果によって希望する大学のコースの合否が決まるので、
受験生にとっては一大事なのだった。

夫の入院から1週間後の11月11日、
娘の方は今年2科目目のVCEで
Specialist Mathmeticsを受けることになっていた。
数学は娘の得意科目だったけど、
父親の入院騒動の真っ只中だったから
精神的ダメージやストレスを憂慮して私は内心、心配していた。
当日は娘を無事、試験場に送り出せたことだけで
もうホッとしてしまったのだった。


ところが―
その日のお昼ごろ夫から電話があった。
夫は弾んだ声で
「退院が決まったからすぐに迎えに来て欲しい」、と。

「えっ、退院!? 今すぐって…」

退院なんて話は昨日は一言も出なかったのに…なんでそんなに急に?
と、突然の退院話に私は驚き戸惑ってしまった。
嬉しそうな夫に水を差すようで悪いかな?とは思ったけれど、
「痛みは治まったの? もう大丈夫なのっ?」と念を押してみた。

けれど夫は
「とにかくもう大丈夫だから。
退院の手続きも済ませてあるから、すぐに迎えに来てほしい」、と。

昨日は全然、大丈夫そうには見えなかったのに…。

何か腑に落ちないものを感じながらも、
夫の入院していた病院にとにかく向かったのでした。


続きは​ 「あのころの家族模様・後編」 ​で。





写真は去年の今頃のポーポーちゃん(冒頭)とチャー君(すぐ↑)です。
当時の写真を見ていて思い出したのですが、
去年の今頃は夫の入院や娘の受験で慌ただしくて、
2匹とも今年のロックダウン並みに長髪犬になっていた のでした。(^ ^;)


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Last updated  2020.12.04 15:00:57
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