PR
Calendar
Freepage List
Keyword Search
障害をことさら見ない態度
映画「レインマン」(1988年)
「火曜日はパンケーキだ」。
朝食のレストランでダスティン・ホフマン演じるレイモンドが言う。
「メープルシロップが出てない。先にテーブルにないといけない」。
「注文すれば一緒に来るよ」
と教えるチャーリー役のトム・クルーズに、
「パンケーキの後じゃ遅い」
とレイモンド。
「どうして遅いんだ」。
「絶対に後じゃだめだ」。
ついにはチャーリーが
「注文してからでいいんだ、黙ってろ!」
と怒鳴る。
疎遠だった父の死をきっかけに
年の離れた兄の存在を知ったチャーリーが探し当てたのは、
自閉症で20年以上入院しているレイモンドだった。
ほぼ全財産をレイモンドに渡すという遺言に怒ったチャーリーは、
財産獲得のためにレイモンドをシンシナティの病院から連れ出し、
ロサンゼルスの自宅までの数千kmを車で向かおうとする。
レイモンドの自閉症−−主治医のブルナー医師は
「知能は高いが感情の表現と理解ができず、
外界が怖くて儀式的行動に逃げ込む。
日常生活はパターン化し崩れるのを嫌う」
と説明する。
当時、ごく一部の精神科医しか見ることのない疾患だった。
現代では、高機能自閉症などとして知られ、
高い知的能力を持ちながら生まれつきコミュニケーションに困難がある。
発達障害の中のこのタイプへの関心は国内でも高く、
近年テレビドラマにも描かれてきた。
その原形ともいうべき映画、それが「レインマン」である。
ロスまで半分ほど来たころ、車中で「パンツがない」とレイモンドが言い出す。
「店に寄って買おう」というチャーリーに、
「シンシナティのKマートのパンツでないとだめだ」
と言う。
「シンシナティには戻れない」。
「パンツはKマートだ」。
「パンツはパンツだろ」。
言い合ったあげく、
「いいかげんにしろ!」
と怒鳴り車を降りるチャーリー。
空に向かって叫ぶ、
「何が自閉症だ! 本当はわかってるくせに」。
この道行きのなか、
「子供のころ、怖いと歌を歌ってくれる想像の中の友達」
とチャーリーが思い込んでいた「レインマン」は、
兄のレイモンドだったことがわかる。
入院は弟にけがをさせないためだった。
その後、兄の特異な記憶力を知ったチャーリーは、
レイモンドにスーツを着せてラスベガスのカジノに乗り込む−−。
映画ではダスティン・ホフマンの演技が激賞された。
しかしもっと目を引くのは、
レイモンドの強いこだわりと
パターン化した生活に粘り強く付き合うチャーリーの態度だ。
文句を言いつつベッドの位置や食事の内容をレイモンドの好みに合わせ、
不合理なこだわりに対し繰り返し説明して修正しようとする。
財産狙いの打算を超えた優しさが見えないか。
自閉症への無理解ゆえといえるかもしれない。
しかしそれは、
正常な部分により注目し本人の思いに正面から取り組む姿勢と紙一重である。
実際、「感情の表現ができない」と主治医がいうレイモンドに感情表現はあった。
心を許した相手は名前をアルファベットの文字で呼ぶ、
好みの女性には「何か処方薬を飲んでる?」と声をかける。
彼の気持ちの表現だ。
病院を出て9日目、火曜の朝。
パンケーキを注文する前にチャーリーはメープルシロップを用意してみせる。
レイモンドは声を出して笑う。
そのことをチャーリーは、
話し合いをもった医師たちに「心が通じたんだ」と訴える。
「レイモンドのことをあなた方はわかってない」。
レイモンドは弟を初めて「C、H、A、R、L、I、E」と呼ぶ。
翌日、病院に戻るため駅にスーツ姿で現れたレイモンドにブルナー医師が
「Kマートの服の方が楽だろう」
と話しかけると、
レイモンドは「Kマートは最低」と言い返す。
素っ気なく客車に入るレイモンド、引き留めるチャーリー。
ふだん誰とも視線を合わさないレイモンドとチャーリーの目が何度か交差した。
レイモンドの何かが確かに変わったのである。
× × ×
メモ:実在のモデルをもとにしたバリー・モローの小説が原作のアメリカ映画である。
自閉症で記憶、計算力など特別な能力を併せ持つ
サヴァン症候群の主人公を演じたダスティン・ホフマンが
アカデミー賞主演男優賞、映画も作品賞をとり、日本でも大ヒットした。

上田諭
日本医科大学講師
うえだ・さとし 京都府生まれ。
関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。
卒後、朝日新聞に記者で入社したが、
途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。
「人生このままでは終われない」と、
もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、
9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。
96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。
以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、
「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。
2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、
米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。
同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教。
11年から講師。
「高齢者こころ外来」と他科入院患者の精神的対応をする
リエゾン診療を中心に行っている。
著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、
「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、
訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、
「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。
【医療プレミア・毎日新聞
http://mainichi.jp/premier/health/articles/20160613/med/00m/010/008000c 】
【楽天ブックスならいつでも送料無料】レインマン [ ダスティン・ホフマン ]
確かに、ダスティホフマンの迫真たる演技は話題になったけど、
それをあらゆる方法で対処する
弟役のトムクルーズの体当たりの演技は、
今思えば、涙ものでした。
兄弟には負担は掛けたくないとの親ごころも、
やはり兄弟は兄弟、
通じる部分はあるんでしょうね。
懐かしい作品のクリップです。 🌠
発達障害のADHDやASDはほとんどの… 2026.05.03 コメント(7)
絶対に観るべき! Netflixドキュメンタリ… 2026.05.02 コメント(8)
牛乳パックが“メディア”に。日常の風景を… 2026.05.01 コメント(8)