紫陽花館

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藤森寮の停電騒動



藤森寮の停電騒動

「うっわ~・・・すごい雨・・・・・・」
今まで見たことがないくらいの、明日の朝には大洪水になってまた学校が休みになってもおかしくないんじゃないかと思うほどの大雨に、亨は驚きの声を漏らす。
「実琴はホッとしてんじゃないの?学校休みだから他の生徒に襲われずに済むってさ」
ザーザーと大雨が降り続く窓の外をチラリと見て、裕史郎は溜め息混じりにそう言った。
「ホントホント。それにオレ達も───」
何かを言いかけた亨の声を、裕史郎は最後まで聞き取ることは出来なかった。雷の音で、その声は遮られてしまったのである。
「ん?亨、今何か言ったか?よく聞こえなかったんだけど・・・」
雷が鳴り止むと、裕史郎は亨に聞き返すが、今度は部屋が真っ暗になった。
「うわっ!何だ!?」
「ま、まさかさっきの雷で寮が停電したとか・・・」
「ええっ!?」
驚いた亨はバッと窓の外を振り返るが、そこから見える学校の校舎にも、近所の住宅街にも、明かりは灯っていなかった。どうやら、寮だけではなくこの辺り一帯が停電になってしまったようだ。建物の中も外も真っ暗で明かりが全くないというのは、何とも言えない恐怖感を感じる。
「あっ!そういえば実琴は!?」
急に思い立ったように裕史郎が声を上げ、亨も「あっ!」と声を上げる。
「オレ、ちょっと見てく「うわああああーーーーーっっ!!!!」
再び鳴り出した雷にも負けないくらいの声で裕史郎が亨に向かって叫ぶが、裕史郎の声を上回るほどの実琴の大音量の悲鳴によってかき消されてしまった。
「・・・!?実琴!?」
「何か心配になってきたな・・・。やっぱりオレ、実琴のとこ行ってくる」
「待てよ裕史郎!オレも行く!」
「別に隣の部屋だから2人で行かなくてもいいと思うけど・・・ま、いっか」
そう言って、裕史郎は部屋のドアに手をかけて引く。
「・・・あれ?」
「どうした?」
「・・・?おっかしいな~・・・」
「だから何が?」
そう訊いた亨に、裕史郎は振り向いて亨の耳に自分の口を近付ける。
「それがさ・・・・・」

「・・・へ?」
「だーかーらー、さっきから言ってるだろ?ドアが開かないって」
「それってつまり、閉じ込められたってコト?」
「ま、そーゆーコトになるけど」
「ふーん・・・・・・ってジョーダンじゃねーよ!何でオレ達が!」
「ジョーダンでもショートコントでもないって」
「そういうイミじゃないっ!!ちょっと貸せ!」
言うなり、亨はドアのノブに手をかけた。・・・ビクともしない。
「・・・ダメだ。裕史郎、手伝ってくれ」
「分かった!2人掛かりなら開くかもね」
そう言って、今度は2人で悪戦苦闘。それでもドアは開きません。
「このっ・・・あっ!」
「どした亨・・・うわっ!」
ドアのノブからうっかり手を離してしまい、引っ張っていた勢いで亨は後ろにいた裕史郎にぶつかり、2人はそのまま床に倒れてしまった。その音が、部屋の中にやけに響く。
「いってー・・・大丈夫か裕史郎・・・」
「・・・うん・・・大丈夫・・・だけど・・・」
「・・・だけど?」
「この体勢・・・ヤバいんじゃない?」
「え・・・・・?」
亨は一瞬、何を言われたのか分からないような顔をしたが、すぐに裕史郎の言った意味が分かった。
今、2人がどういう状態かというと・・・
亨の両手が裕史郎の肩を押さえつけている。どう見ても亨が裕史郎を押し倒しているようにしか見えない。
「おまけに亨が肩押さえてるからオレは全然身動きとれないんだけど」
「うわっ、ゴメン!すぐどくから・・・」
「裕ちゃん!河野くん!さっきすごい音がしたけど何かあったのかい!?」
聞き覚えのある声と共に、部屋のドアが外側から開けられた。ドアの向こうに立っていたのは、実琴と懐中電灯を持った寮長の辻先輩。
「せ・・・先輩・・・それに実琴・・・・・」
「河野・・・四方谷・・・お前らやっぱり・・・」
青ざめた顔で亨と裕史郎の顔を交互に見る実琴に、裕史郎は「そういえば・・・」と話を逸らす。
「さっき実琴の悲鳴が聞こえてさ・・・アレ何だったんだ?」
「ああ、アレか・・・」
そう言うと実琴は、少し赤くなって理由を話し始めた。
「実はさ・・・いきなり部屋の電気が消えたのに驚いて・・・勢い余ってそのとき持ってた彼女の写真握り潰しちゃって・・・」
「何だよ~・・・何かあったのかと思った」
「あはは・・・・・・」

実琴と辻先輩が帰った後、裕史郎はふと思い出したことを亨に訊いた。
「そういえばさ・・・」
「ん?」
「さっき何て言おうとしたんだ?あの、停電する前」
「さっき・・・ああ、あの時か。いや、オレ達も学校で実琴イジメできなくてつまんないな、って」
「そんなの寮でもできるじゃん」
「まあね」
「実琴をイジメたいのはオレも一緒だけどさ」

ちなみに、部屋のドアが開かなかったのは、停電で混乱した2人が、押して開けるドアを引いていたから。
これじゃ開くはずないね。







あとがきという名の言い訳
初プリプリ小説。ちょっと亨×裕風味?
ここまで読んで下さってありがとうございました!
H18.5.21 Melon Tsukigase

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