ねこねここねこ

李朝石蛙水滴

   李朝石蛙水滴

古美術商「くらわんか」の主人から
私の手に
李朝石造り蛙の水滴が
わたされた

北の地方では
水滴は冬
手で暖めて使われるらしい

暖められ
そして 冷え
また別のあまたの手によって
暖められてきたこの水滴の来歴は
眺められることを
それとなく
形で拒否している

私も暖め
ふたたび冷え
ただ
一途に冷えて行くこの存在は
べつに
安堵も充足もあたえてくれはしない

暖めている時に
そこのところで心が動く

骨董が好きだったS.K氏。
水滴というのは、硯に水を入れる道具のこと。
李朝の陶磁の素朴なところが、氏の趣味に合っていたのだろうか。
李朝の蛙の水滴というのは 蛙の形をかたどったもので、他にも
色々と種類があるらしいが、ユーモラスな形をしていて あたたかみがある。

眺められることを
それとなく
形で拒否している


日用品として使われ続けてきたものが
それを手にした人に愛され、大事に扱われて
今、その形をとどめているもの。
そうした骨董品は、飾って眺めるのではなく、手に触れ
実際に使われることを望んでいる。

私も暖め
ふたたび冷え


「私も暖め」というのは、「水滴を手で暖め」ととれるが
私という存在が、暖め、再び冷えと読んだらどうだろう?
あってもなくてもよい存在である趣味の骨董品。
安堵も充足も与えてくれないと書きながら

暖めている時に
そこのところで心が動く


最後の二行が優しく響く。


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