ひときれのレモン


ひときれのレモン


ふたつのカップに

ひとつのティーバッグ

ひときれのレモン


「ああ わびしきかな」と

歌いながら

目は輝いていて

レモンは

ふたりに協力的で


あのひとのカップで

惜しみなく香らせたあと

わたしのカップに移しても

充分に香った

遠い日

毎日 そうして

紅茶を飲んでは

そっと

笑いあった

ふたりで

ひとつのティーバッグ

ひときれのレモン

それが楽しかった


-きの ゆり詩集『雨のようにやさしく』より-




© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: