俺に背中をむけてうつむいている天使に声をかけた。
「どうした、なにか・・怒ってんのか?」
俺が腕をつかんだままなので、
それ以上逃げることも出来ずにむこうをむいたままで
「離してよ。」
といった。
「部屋に上げてくれるなら離すよ。」
交換条件をだしてみる。
天使はゆっくりと俺の顔を見て無言で俺の手をとって
自分の腕からはなした。
なにも言わずに部屋にはいっていく天使を追って
俺も部屋にはいる。
シンプルな部屋には一応の家具が用意されていた
間借りしているだけのせいかあんまり荷物はない。
ベタ置きのローソファーに正座して座った天使は
俺を恨めしそうに睨んで
「なにしにきたの?」
と聞いた。
「会いに来ちゃいけなかったのか。」
俺もおなじソファに少し間をあけて座った。
「都市田さんに言われたから?
仕方なく?」
野良猫をなでたい時みたいに、今にもひっかかれそうだった。
TVで見る天使では想像もできないほどのけわしい表情で
張り詰めた緊迫感がただよっている。
「そりゃ居場所はトッシィに聞かなきゃわかんなかったけど。」
とだけいって、わざと俺はソファーにひじをついてもたれかかり
天使の顔を笑顔で眺めた。
「お前は俺に、会いたくなかったの?」
頬に手をのばして触ってみる。
ビクリと身じろいで、逃げられてしまった。
「・・・その気もないのに触らないでよ。」
うつむいている天使の顔はよく見えなかった。
「もう、俺とは寝たくないってこと?」
聞いてみる。
「・・・どうして?」
はっきりした声で言ってから、天使が悲しそうな顔を上げる。
「俺はあんたが・・・・
あんたのことが好きだって言ってるじゃないか。」
また泣きそうになっていた。
視線が会った天使に出来るだけ穏やかに言ってみる。
「言ってみなって、話だけでもしないと。」
彼は自分のシャツの裾を握り締めていた。
「だって・・
言いくるめられるもん。
俺がどうしたって・・話なんて聞いちゃったら。」
耐え切れなくなって瞳からぼたぼたとあふれ出る涙が
彼の正座したひざに落ちている。
どうしたらいいんだろう。
「お前はもう俺に、会えなくても平気?
俺は耐えられないよ。」
「・・嘘・・つき。」
「どうしたら気が済む?
許してもらえる?
なにか怒ってるんだろ?」
いっぱいいっぱいになっている天使につけこんで
抱き寄せて、涙を親指でぬぐいながらキスをした。
それでもどんどん出てくる涙。
天使は
「う~~~~。」
と呻いて俺の胸元のシャツを両手でつかんで
顔をふせた。
俺は手をのばして、彼のシャツを背中から脱がせる。
泣いたままの天使の体に触れて、唇にキスを繰り返す。
お互いの体温を重ねていると次第に天使も
落ち着きをとりもどしたようだった。
やっと泣きやんだ彼に
「またあんまり寝てないのか。」
と聞いてみた。
「時間はとってもらってるけど・・。」
会えなかったから。と目を閉じていった。
また躊躇してしまう。
無理をさせてはいけないんじゃないだろうか、
この後の仕事にさしつかえるのでは?
俺の思考をみすかすように
腕の中からまっすぐな視線を感じた。
赤く充血した口元から弱々しい声が聞こえる。
「嘘でもいいから。」
嘘ではないことを証明する為に
天使の希望にこたえる為に
いろんないいわけを心の中でして
俺は天使の髪に顔をうずめる。
空を見上げる余裕なんて全然なくて
ただ自分の中から湧き上がる欲望の熱を
天使に押し付けてしまっていいものなのかどうか
瞬時の判断なんてとてもできなかった。
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