諌山さんは仕事の関係で、
“パーティー”によく出なければいけなくなる。
外国の人も多く参加するせいか、
一人で行くには少し不便があるらしく、
そんな時は決まってあたしを連れて行くのだった。
「諌山さん、ピンクとクリーム色だったらどっちがいい?」
手持ちのドレスの中から適当なものを選んで、
そのまま彼に見せてみる。
「・・・どっちもいいな。」
諌山さんはちょっとだけ考えてからそういった。
そのまま黙って、
二着の洋服を身体にあてているあたしのことを眺めている。
「じゃあ、シンに聞いてくるね。」
自分では決められないので、
あたしが部屋から出て行こうとすると、
後ろから洋服ごと、大きな体に抱きしめられた。
「今日は”俺の”。」
耳元に彼の低い声が聞こえた。
諌山さんは普段は全然なのに、
こういう時だけは、急に独占欲が強くなるみたいだ。
腕の中から、彼の顔を見上げる。
あたしの不安そうな顔を見て、
「こっちで。」
と言い、諌山さんはクリーム色の方を手にとった。
急がなきゃ時間がなくなってしまう。
お化粧もしてないし、髪もセットしなきゃ。
「諌山さんも着替えるでしょ?」
せかすように言ってあたしが離れると、
彼は寂しそうな顔になっていた。
「どうしたの?」
動こうとしない彼が心配になって、
その顔に触れようとすると、
手に持ったドレスを優しくもっていかれた。
「脱いで?」
かわいらしくそう言われる。
「うん・・・?」
その言葉のままにあたしは服を脱ごうとするけど、
あまりにも諌山さんがじっと見ているので、
「なんで見てるの?」
と照れながら聞いてみた。
うれしそうに笑いながら無言で、
少しだけ開いた素肌の胸元にキスをされる。
「・・・諌山さん、時間なくなっちゃうよ?」
自由にされながら、あたしは冷静にしていた。
彼は、めずらしく余裕のない瞳であたしを見てから、
ものすごく情熱的なキスをしてくれる。
苦しくなって必死で彼の胸にしがみついていると、
やっと開放してくれた唇から、
「遅れようか・・・。」
と彼は言った。
大人なんかじゃないんだ。
本当はいつだって諌山さんは、
我慢をしてくれているのかもしれない。
「あたしはどっちでもいいよ、諌山さんのパーティーでしょ?」
いつのまにか倒されていたベットの上で、
仰向けになったまま手をのばして、
あたしは愛しい彼のことを抱きしめていた。
豪華な食事が出るし、
あたしは世間話を適当にしてればいいだけなので、
諌山さんのおともは好きだ。
飾られたお花は綺麗だし、
男前のお客さん達があたしのこともすごく褒めてくれる。
窓際で、たくさんの親しい人に囲まれてしまった諌山さんが、
あたしのことを、
「妻が。」
なんて言っているのを聞こえないフリしながら、
おいしい料理を食べていた。
直接あたしに質問がきたら、なんて言えばいいんだろう。
「彼は冗談が好きなので。」
でいいのかな。
穏やかに微笑む紳士な彼の姿を横目で眺めながら、
「ええ、未来の。」
って言えたらいいのにな、なんて考えていた。
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