丹精な横顔がそっぽをむいて、
よく見ると眉間にしわなんてよっている。
むずかしい顔をしてシンは腕をくんだまま、
身動きをしなかった。
あたしはそーっと彼に近づいていって、
ちゅっとほほにキスをする。
シンはちょっとだけ迷惑そうに、
ちらっとだけこっちをみてから、瞼を閉じてしまった。
諌山さんとは顔をあわせないようにお母さんが帰ったあと、
下の駐車場まで彼女を送っていったシンは、
帰ってきてからずっと部屋にこもってしまっている。
諌山さんが帰ってきて、
「シンの部屋に行っておいで。」
って言ったので、
「なんで?」
って聞くと、
「親のこととか、いろいろ考えこんでるんだろ。」
と言われた。
ワン蔵と一緒にテレビを見ているカズくんに、
「カズくんはなんともないのにねぇ。」
なんて言ってみると、
「俺はわかいから大丈夫だよ。」
とよくわからない答えがかえってきた。
「シン、怒っちゃったの?」
ぴったりと閉じられた瞼に口付けて、
シンの上にのるようにしながら、彼の頭を抱いた。
なにもいわない彼を気にせずに、
その唇にもキスをする。
綺麗な顔。
見つめられるとドキドキするけど、
目を閉じていてくれるのなら、あたしには好都合だった。
調子にのってどんどん深くはいりこんでいく。
普段はできないようなことも、
ぜひこの機会にと思ったのに、すぐにシンは目をあけて、
「・・・クレハ、なにしてんの?」
といった。
「キスしてたの。」
もっとしたかったのに、
と思いながらジッとシンの顔を見て、
「お話しないんだったら、もっとしててもいい?」
って聞いた。
シンはため息をつくと、
「あのさ、クレハは・・。」
あきらめたような顔になって、おでこに手をあててからそういう。
「ん?」
「諌山さんのお母さんを紹介された時、どう思ったの?」
「素敵な人だなぁって思ったよ。」
「いや、そうじゃなくてさ、
諌山さんは自分と結婚しようと思ってるのかなぁとか・・。」
「だって、その時あたし、諌山さんと会ったことなかったもん。」
「え?」
「お母さんはあたしのお得意さんなだけだよ。」
なぜだかものすごく驚いて、シンの瞳は大きく見開かれていた。
「・・・そうなの?」
「うん。そうなの。」
あたしがそういうと、シンはすごく安心したみたいだった。
「あたしが会社かわっちゃったから、
今のお得意さんは諌山さんだけど、
前の会社の時はね、お母さんがすごい重要なお客さんだったの。」
「じゃあ、ほんとに家族ぐるみのつきあいとかじゃないんだね?」
やっと普段どおりにもどった彼の瞳があたしを見ている。
「諌山さんは関係なくて、
お母さんはあたしのお母さんみたいな人なんだよ。」
家族ぐるみのつきあいっていう意味がよくわからなかったので、
あたしはそう答えた。
説明が難しいけどほんとにそうなのだ。
「そっか、なんとなくわかったよ。
さっきお母さん俺に”クレハちゃんのことよろしくね”
なんて言ってたし。」
「そうなんだ・・。」
うれしくてニコニコしてしまう。
お母さんはやっぱりあたしのお母さんみたいだ。
「クレハ、いつか俺の家族にも会って?」
「え、うん。」
突然の重要な誘いにあっさりと返事をしてしまってから、
心の中で申し訳なく思う。
「俺、めちゃめちゃ兄弟多いから楽しみにしててね。」
なにかふっきれたようなすがすがしい笑顔に、
わざと気が付かないふりをした。
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