その昔、人間は妖精達と集い、
悪魔と天使は地上に姿を現していた。
これは、そんな時代の物語。
「あたしが先に座ったのよ!!」
女だてらに旅人の格好をして、
それもかなり年季が入っている。
彼女は名をクロッテスという。
「いいがかりつけんじゃねーよ!俺のが先だ!」
彼はタイミル。
新しいとはいいがたいマントを身にまとっていて、
どちらかというと彼のほうが汚れているかもしれなかった。
「あのねぇ、
あんたにはレディーファーストの精神とかはないわけ?
まったくなってないわね!いまどきの男は!」
つかれているのだ、歩き続けてきて。
やっと見つけた村の片隅にある食堂は、
彼らのような旅人で満員だった。
「自分でレディーとか言うな!あつかましい!」
初対面なのにあけすけに言い合う二人に圧倒されて、
とりあった席の向かい側に座っていた彼が、
そーっと席をはずしてくれた。
自分達に注目が集まっていたことに、
やっと気が付いた二人は、睨みあったままで、
お互いの近い方の席にゆっくりと腰をおろす。
「ご注文は?」
とお店の人に聞かれても、視線はそらさないままで。
「あたし、酢豚定食にして。」
「俺はカツ丼。大盛りで。」
ぴりぴりとしたムードがただよっていた。
その時、食堂の入り口が一瞬ざわめいて、
バタバタと制服を着た警官がとびこんできたと思うと、
「全員動くな!」
数人の銃を持ったその人達に、
満員の店内は囲まれてしまった。
なんだかわからないけど、もう逃げられない。
「・・・やばい。」
低い声でクロッテスがいった。
「なに?お前犯人?」
表情をかえないままでタイミルが尋ねる。
「違うけど、これ。」
ナムサン。という顔をして、
タイミルにむかって、自分のアゴをあげ、
彼女は首元に光るガラス球のペンダントを見せた。
「とりあえずはずして、ここ入れろ。」
自分の手荷物であるズタズタの麻袋の口を、
タイミルはこっそりひろげた。
「ふざけないでよ、持ち逃げする気?
それにその袋に穴とかあいてないでしょうね?」
ヒソヒソやっていてもラチがあかないと思ったのか、
タイミルは素早くクロッテスの首元からペンダントをはずすと、
麻袋に投げ込んだと同時に立ち上がり、
「船が出る!」
大声で叫んだ。
「本当だ!あと三分しかない!!」
あらがっていても仕方がないと瞬時に判断したクロッテスも、
話をあわせて大袈裟に動き、
二人はあわただしく店の入り口まで行った。
「通して!乗り損ねたら今日野宿なのよ?!」
いきおいでつきぬける。
後ろから聞こえる、
「お前らちょっと待て!」
という声につかまらないように、二人は猛烈にダッシュをかけ、
一目散に店から離れた。
村を抜けて、緑の豊かな森に入り、
隠れるのにちょうどいい岩場がみつかるまで、
二人は止まらなかった。
「ほら。」
肩で息をしながら、
預かっていた首飾りをタイミルがさしだす。
「・・・・ありがと。あれ?色がかわってる・・??」
顔を見合わせて確認をした。
「さっき透明だったのに桃色っぽくなってる。」
クロッテスの言葉に、
タイミルはごそごそと自分のポケットから、
二つ、同じような首飾りをとりだすと、
「本当だ、俺のも・・・。」
と言った。
「な!何よそれどういうこと?」
「どういうことって・・・集めるんだろーが12個。
自分だって同じだろ?」
どこからか飛んできた鳥が鳴いている。
「・・・あたしは・・・そうだけど・・・。」
風が広い野原に吹いている。
「お前、名前は?」
「テスよ。クロッテス。」
「俺のはタイミル。タイって呼んでくれ。」
その時ずいぶん高い遠くの空から、
今日、偶然出会った二人のことを、
太陽が穏やかに照らしていた。
capricorn-結接蘭・破接蘭-
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