第七章



 四六時中寝ぼけているような俺の目がカッと見開かれた。
親友、そもそも何故俺がここへ来たのか、
という問題が今更になって解決した。親友ののこした金属のキーのような、今でもポケットに入れてある、こいつだ。
 どういうわけかわからないが、
こいつと消えた親友とこのキーは今の俺の状況とかなり関係があるようだ。いや、おそらくは奴が直接の原因だろう。
ともかく今の状況を打破する糸口が見つかった。しおりが折りたたんで封がしてある、いわゆる宝の地図のような風格を持ったものだった。
この町の地図になっていて、中心の塔のちかくにしるしがされていた。
だいぶ古くて今の町の様子とはだいぶ違ってはいたが、
どこか冷たい感じのするあの塔がまさか移動されたということは考えにくいので大体の位置はわかった。そしてすぐさま走り出した。
ただただ塔を目指した。橋を渡り、公園を抜け、路地裏を抜けた。
目まぐるしく奇妙な景色がくるくるまわる。
どうにもこの町は白と黒の系統の色がベースの建物が多いのに
その中に形が奇妙で、
ピンクや紫の奇怪な建物が混ざるから目によろしくない風景になるようだ。そんなことを考えながら
その奇怪な建物の一つに駆け込み階段を駆け上がる。
先ほど見た公園や路地裏を、こんどは高い位置から見下ろしながら走った。この道は区画を分ける壁の上の通路である。
この通路を抜けなくてはとてもこのゴチャゴチャした町をまっすぐ塔を目指して走ることなどできない。おまけにこの通路は人がとても少ない。
役所の中を通らなければならないから使用者は少ないのだ。
そんな通路を知れたことは、この町でだらだら過ごした時間の無駄でない点に入ると思う。
 塔のある中心の区画までやってきた。ここは専門的な資料などの、
誰が必要とするのかわからないかび臭い本が保管されている建物がたくさんある。
そのためこんな所にいる人などほとんどいない。
重苦しい雰囲気のせいでせっかくの広場も、
子供の遊び場にならない。どんよりとした場所だ。
地図に記されている場所へ向かって歩く。人気が無いせいかやけに広く見える通りには高さがマチマチの建物が並んでいて、どれを見ても白い。
 そろそろかと思う頃に、交番ほどの大きさの、三角屋根の、真黒な建物を見つけた。
地図ではハッキリとどの建物かわかる記述はされていないが、
おそらくはこれだろう。これは推測でもあるが、また俺の都合でもある。
他のどれを見ても同じように見える
全く面白みの無いそれらをひとつひとつ調べるということは、
できれば避けたかった。
もしそうなれば、手がかりは途絶えたも同然だった、
なにしろ地図に記された場所になにがあるのか、
なにが起こるのかさえ知らないのだから、それは避けたい。
 その、いかにも何かあります、
といったような三角屋根の建物に近づくにつれてより空気が重く息苦しいような感じになってきた。
居づらい、ここにいるととにかく落ち着かない。
とうとう入り口の前に立った。
金属製の重厚な扉、それを開ける。
中は…拍子抜けに明るかった。
強い光を放つひょうたん形のライトと階段がそこにはあった。
他には何も無い。
他にあるとすれば期待とか不安とか形の無いものばかりだが、それも無い。

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