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ジャップス=デイズ日本人の日々■最終回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第29回■VE紀元50年 電子頭脳チャクラ 地下で、わずかながら生命の炎が燃えていた。 地下数十m下、地球連邦が大戦以前に作りあげていた遺伝子バンクである。 電子頭脳チャクラは、定期的に、観測穴から気候観察ゾンデをあげていた。 放射能嵐がおさまりかけた時、チャクラはプログラムを作動させる。 マニュピュレーターは精子と卵子のカプセルを1つずつ選びだし、接合させた。 人工胎盤の中で人の形をとっていく。 チャクラのマニュピュレーターが選択したのが日本人の遺伝子だとは誰が知ろう。 数力月が経ち、子供が生産された。そして遺伝子バンク内にあったマザー機構によって育てられる。双生児だった。 観測ゾンデが再び、地上に突出し、成長可能な状態であることを告げる。 電子頭脳は二人を、エレベーターに乗せ、外界へ向かわせる。ロボットマザー、マギーは育てるべき子供をうしなって数十年たいる。 時折、家屋の廃墟で、子供を発見するのだが、死体だったり、ロボットだったりした。 彼女は失望をくりかえし、地球上を文字通り、放浪していた。 マギーを作りあげたロボ。トHアーキテクトは優秀で、自己保全機能をつけていた。それゆえ、彼女は自分の体が故障をおこしそうになると、どこかの機械をみつけだし、自分の体に合う様に加工していた。それが、彼女を一人で、数十年の間、機能もストップせず、動かしていることになるのだ。 マギーは、記憶のある臭いをかいだ。 「この香りは」 一瞬、彼女の機能がダメになったのではないかと疑った。香りは、そうなつかしい子供用のパウダーの臭いだった。 人間の子供がいる。 彼女の胸は高なった。 今までのようなロボ。卜や、奇形動物ではない、本物の人間の子供。 彼女の赤外線探査機能は、体温ゾーンをとらえていた。 あきらかに、人間の子供だった。それも二人も。 彼女は嬉嬉として二人をだきあげ、二人を育てる安全な環境を探そうと決意していた。観測直後、チャクラは、穴からそれを見て、一安心をした。、チャクラの意識は、フェイドアウトした。遺伝子バンクをささえていた地盤が地すべりをおこし、チャクラもろとも遺伝子バンクを押しつぶしていた。 マギーは地震を感じると同時に、二人の子供をかきいだき、体をまるめる。 やがて、地震がおさまると、マギーは歩き始めた。■VE紀元98年 地球 白色ステーション連合から地球探査隊が着陸した。過去の記録により、遺伝子バンクを確認しにきたのだ。彼らは、遺伝子バンクが地震で崩壊しているのを発見する。 わずかながら採取できたカプセルをステーションヘ持って帰る。 そのカプセルから数人の子供が造形された。シャップス=デイズ 〈始原〉の章 完1988・5作品 同人誌「もり」発表作品
2007年08月29日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第28回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第28回花田は続けた。「本物の花田万頭は何十年か前に死んでいる。私はその影武者にすぎん。日本の情報省が作りあげたイルージョンにすぎん。そんな影武者でも、ここまでやってこられたのだ。君にできないわけがあるまい」花田は息をつぐ。 「角田くん、このVTRを全世界にむかって放送するんだ」角田に花田はテープを渡す。 角田は花田に言われた通り、そのテープを流す。テープが廻り出した。 「こちらはアスカステーションだ。アルゴステーションは我々、日本人グループが占拠し、アスカステーションと名前を変えた。 全世界に生存している日本人諸君、いかなる方法をとってでも、ここに集まってくれ。 このアスカステーションは日本人解放区だ。 JVOの諸君、先刻まで、日本本土に向けられていたミサイルは、君達の国に照準を変えてある。もし、日本人達がアスカステーションに辿りつく事を防害した場合、自動的にミサイルは発射される。このミサイルの威力は君達がよく知っているだろう。なにしろ君達が作ったんだからな……」「花田さん、映像は全世界に流れています。成功です」 涙ぐみながら、角田は言った。しかし、花田の反応はない。「花田さん……」 が、花田はうっすらと眼をあけた。そして口を動かす。 「角田くん。これからは君が花田に……」 花田はこときれた。 「わかりました。花田さん。花田万頭は絶対に死にはしません」 いつの間に、残っていた日本人形達が集まっていて花田の体をとり囲んでいた。■2025年 フランス アルベーヌ市ド=ヴァリエは自宅で、TVを見ながら、怒り狂っていた。目の前のTVには、アスカステーションヘ向かう日本人達のロケ。トが映っている。 「ラインハルトめ、何てざまだ。Bプランの命とりになる。さらにはJVOの命とりだ。だいたい日本人に加えてアジア人、アフリカ人どもも気にいらん。この地球上には我々、白人のキリスト教徒だけで充分だ。我々白人は神に選ばれた人種なのだ。我々のみが地球人なのだ」 ド=ヴァリエは独り毒づいていた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月28日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第27回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第27回 ヤコフ21の意識がわずかに戻ってきた。先刻の角田の一撃はまだ完全にヤコフ21の生命装置を停止させてはいなかった。ヤコフ21は首と右手右胸だけで動き出す。それから下は角田の日本刃で切り離されていた。 ヤコフ21は中央制禦室へ上がるシヤフトまで辿り着き、エレベーターのスイッチを押す。 エレベーターが中央統禦室へつく。ヤコフ21は右手でバランスをとり、少しずつ、制禦室へ進む。 左眼でゆっくり中をのぞき込む。どうやら中には二人しかいないようだ。二人はCRTに釘づけになっている。その一人をねらう。ヤコフ21は右手からハンドミサイルを発射した。花田の体に衝撃がおそった。宇宙服の背面が黒焦げだ。「花田さん!角田が叫び後をふりむく。ヤコフ21の上半身に気づく。「こいつ、まだ生きていたか」 角田は、日本刃でヤコフ21の首を切りさいた。 花田はフロアに倒れていた。「花田さん、しっかりして下さい。あなたがいなければ、日本人をだれが守るのですか」 花田は しい息の下でしゃべる。 「君たちがいる」 「でも、あなたの指導がなければ」 「いいか、花田万頭は一人ではないのだ」花田は意外な事を言う。 「何ですって」 「花田万頭は伝説の人。日本人の守り神なのだ。誰が花田になってもかまわん。VTR技術とCG技術があれば、映像で作りあげる事ができる」(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月27日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第26回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第26回「アサガ、目ざめろ」 アサガの頭の中に声が響いていた。 「誰だ。私を目ざめさせるのは」 アサガの声は自分自身の体の中を響き渡っている。 「ブキャナンだ。アサガ君、君は仕方がない奴だなあ。キラー衛星をストップさせてやったのに。今度からはあまり目立つ活動はしないでくれ」 ブキャナンの声もアサガの苦痛をやわらげはしない。 「君のナショナリズムにも困ったものだな。君達日本人という奴は、激情すると、恐るべき行動に出るという事がよくわかったよ」 「俺を助けてくれ」 「おやおや、君は自殺するつもりじゃなかったのかね。しかし私達のゼウスから救命艇を出すわけにはいかんだろう」 「が、私はINSにとっては大事な人間のはずだぞ」 「おやおや、今度はおねだりかい。わかった、ヒントをあげよう」 「なんだ」 「君の足元の方を見ろ。黒い物体が見えるだろう」 「見える」「あれは、アルゴステーションの宇宙機雷だ」「それで」「あれを爆発させろ。そうすれば衝撃波で、逆にアルゴステーションの方までもどされるはずだ」「俺は武器など持っていない」「しっかりしてくれ、アサガくん。君の宇宙服にはもう一発の小型ミサイルが装着されているはずだ」 「タイミングがわからん」 「タイミングをあわせてやる。それ今だ」 アサガの右腕からハンド=ミサイルが発射された。 数分後、アサガの体はアルゴステーションの外壁にたたきつけられた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月26日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第25回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第25回「一度だけ助けてやり、この際に、恩をうるか」 ゼウスステーションの中にいる、ブキャナンはつぶやいた。それから一つのスイッチを押す。 キラー衛星が、急に停止した。操船不可能になる。 「うっ、どうしたんだ」 ヤノーシュはあわてる。その間満身創夷の高速艇は、キラー衛星の後側に廻り込む。 アサガはマニュピュレーターを取り出し、自分の艇と、キラー衛星をドッキングさせた。 「くそっ、ジャップめ、キラー衛星ごと、自分も吹き飛ぶつもりか」 ヤノーシュは、宇宙服を着て、ハッチから体をのり出してきた。手には斧を持っている。 マニュピュレーターを切り離そうとする。 アサガも、それを防ぐため、艇の外へ出る。 がっちりとつながりあった、衛星と高速艇の上で、二人はお互いを見る。「ヘーい。ジャップ、お前にガッツがあった事は認めてやる。俺はアントン=ヤノーシュだ」「私はケン=アサガだ」「オーケー、アサガ、アルゴステーションを確保する前に、手初めにお前を片づけてやるぜ」ヤノーシュは、つながっているマニュピュレーターの上を歩いてきて、斧で切りかかる。 アサガは、ヤノーシュの斧をきわどい所で受けながし、背後から足払いをかける。 ヤノーシュは前のめりに倒れ、高速艇上からすべり落ちそうになるが、か今っじて、ペリスコープをつかんだ。斧は空間に消える。 アサガも、高速艇からすべり落ちる。アサガもテレメーターアンテナをつかんで、はいあがる。 再び、マニュピュレーター上にあがった二人は対峙する。二人は、同時に作業用リベット打ち器を手にしていた。 リベットが同時に発射され、アサガは頭部バイザーにそれを受けた。 アサガのりベットは、ヤノーシュの正面の生命システム制禦板を直撃していた。 ヤノーシュは、アサガの体を艇からはらい除けた。それからヤノーシュは高速艇のドアをくぐり、コックピット内に潜り込む。自爆装置をはずすためである。 宇宙空間で、意識がもどったアサガは手元の小型スイッチを押した。 高速艇に仕掛けられた爆弾はキラー衛星ごと吹き飛んだ。閃光がアサガを盲いさせた。爆発の衝撃波が、アサガの体を、宇宙空間へ、遠くへと、吹き飛ばしていた。■ 「ラインハルト議長、ヤノーシュがやられました」ファーガソンが残念そうにつぶやく。 「ジャップめ。こうなると、政治的交渉しかないわけか」 ラインハルトは、冷や汗を流しながらつぶやいた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月25日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第24回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第24回キラー衛星a-13へ、朝賀の乗った救命艇が向かっていった。 キラー衛星aI13は、たる形で、前面には巨大なレーザー砲がつき出ている。両側には太陽集光板が翼の様に拡がっていた。 「ほほう、ジャップの神風アタックか」 ヤノーシュはレーザー砲をゆっくりと、高速艇に向かい照準を定める。 高速艇は披弾し、速度がおちてくる。 「なぶり殺しといくか」 ヤノーシュは、朝賀の艇をゆっくりいたぶるつもりでいる。 ゼウスステーションの中で,ブキャナンは気をもんでいた。「何をやっているんだ。アサガめ。我々の今までの苦労が水のあわになる」 アサガは、このキラー衛星に焼き殺されてもいいと考えていた。 ブキャナンに見いだされた後、アガサはリビアヘ送り込まれ、テ ロリストの訓練を受けた。 いつも気がかりだったのは、ジュン=バルボアとバルボア博士の事だった。果して生きているのかどうか。思い悩みながらアサガは生きて来た。やがて、彼が、日本人の亡命グループヘと、INSから送り込まれても、その問題が常にアサガの心に陰を宿していた。 救命艇にあたったレーザー光が衝撃を与え、アサガを現実にひきもどした。 「どうだ、ジャップめ、お荊は標的になりに来たのか」 ヤノーシュは毒づく。 「くやしかったら、一発でも返してみろ」 救命艇には、二発のハンドミサイルしか装備されていない。 「くそっ」 アサガは、その内の一発のハンドミサイルを反射する。キラー衛星を直撃する。が何の変化もない。「どうだ、自分たちの無力さに気づいたか。ジャップめ」 アサガは目の前がまっ黒になりそうになる。ラインハルトから、ヤノーシュヘ怒りの声が届いていた。「ヤノーシユ、何を遊んでいる。はやくそいつを処分して、アルゴステーションを確保しろ」「はい、はい、わかってますよ。ボス。しかし少しぐらい遊ばせて下さいよ」 「ならん、今は一分一刻を争う時だ。君の趣味のために、そのal13を渡したわけではない」 「へい、わかりましたよ。ボス」 ヤノーシュは受信装置をたたき壊した。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月24日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第23回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第23回キラー衛星が近づいていた。乗っているのはアントン=ヤノーシユ「日本人共め、レザー光線を受けてみろ」 ヤノーシュはレザーの発射スイッチを押す。レザーは直進し、アルゴステーションに横穴をあけていた。衝撃が襲った。 重力場にいた三人は顔を見合わせる。「どうしたんだ」「よし、早く、コンソール=ルームヘあがろう」 三人は、ソンガの死体を横たえ、シャフトのエレペーターに乗る。 角田はコンソールにすわり、バリヤーを張ろうとする。「花田さん、だめです。最初の一撃でバリヤー装置がやられています」 「それに、日本人形が統制回線をバラバラにしてしまっています」 隣りにすわった朝賀も叫んでいた。 「我々が、このアルゴステーションを無防備状態においたのだ。それが裏目に出たか」 花田は静かにつぶやいた。つ、方法があります。やって見ましょう」CRTをのぞいていた朝賀が言った。 「このアルゴステーションに稼動可能な高速救命艇が一機だけ残っています。それでキラー衛星とさし違います」 「しかし、それは」花田はいいよどんだ。 「花田さん、さっき、あなたはおっしゃったはずです。いまはT人二人の命の問題ではない。我々が成功するか否かに日本民族の生存の問題がかかっていると」 「確かにそうだ。がその艇の操縦は」 「私がします」朝賀がいいはなった。 「角田は、先刻のヤコフ21と戦ったばかりです。花田さんはこれからの日本人になくてはならない人です。そうなれば私しかいない」「しかし、話はわかったが、私がいこう」 花田がいう。一瞬後、角田があて身を花田に加える。花田は意識を失なう。 「すまん、朝賀、お前が行ってくれ」 「わかった、あとの事はすべて頼んだぞ」 (続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月23日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第22回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第22回 角田は、宇宙服の中で血まみれになっているソンガの側へ走り寄る。「ソンガ、聞こえるか」「ああ、角田、僕達は勝ったんだね」わずかに口を開いた。「ああ、君のおかげさ、ありがとう」「ねえ、僕は勇者だったろう」「そう、君は勇者だ」ソンガは静かに眼をとじる。 ソンガは息たえた。「ソンガ」角田はソンガをだきかかえる。 地球上では、ワナガのアシュア族の部落は、飛来してきたヘリの攻撃を受けていた。 JVOの連中である。日本人を肋けたための制裁処置だった。 『おじい、僕は勇者になったよ』 ソンガの声が聞こえたような気がした。 「孫よ」 ワナガも向かってきた攻撃ヘリのコックビットに槍を投げ、見事に、コックピット内の操縦手の胸をつき抜いた。「くそっ、こいつめ」 副操縦手はワナガに向かって重機銃を集弾させる。 ワナガの体はバラバラに吹き飛び、アフリカの大地に血が流れ、しみ込んでいった。 、アルゴステーションに再び危機が迫っていた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月22日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第21回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第21回ヤコフ21は、両手でマニュピュレーターの一本を持ち、途中からボキリとちぎり取った。 ヤコフ21は、壊れたマニュピュレーターをコンソールにむけて、力いっぱい投げた。 マニュピュレーターは、槍の様にコンソールをつき破った。コンソールは爆発する。 角田は一瞬、コンソールテラスから体を投げ出すが、爆風でフロアにたたきつけられた。 ヤコフ21の体が、角田の方へやってくる。右眼は見えないようだ。体についた2本のマニュピュレーターをはじき飛ばす。 重力場の上の方から、誰かの姿が見え隠れする。ヤコフ21はまだ気づいていない。 角田は、ヤコフの体がおおいかぶさってきた一瞬、わきに装着していた短剣を突き出す。無意識の動きだ。その短剣は、ハイチタンのヤコフ21の体をつら抜く。酋長ワナガから与えられた短剣だった。 「ぐわっ」短剣は、ヤコフ21の中枢機能まで突き届いていた。 ソンガは、ヤコフ21に投げ出されていたが、意識が戻ってきた。 ソンガも、ワナガからもらった「王者の槍」を持っていた。 苦しんでいるヤコフ21の首すじに、その槍をつきたてた。槍は首をつき抜ける。命令回線を破壊した。 ヤコフ21は後をふりかえる。右手でソンガの頭を打ちすえる。 さらにヤコフの左手が、再びソンガの体を空に浮かべていた。その時、「角田、これを受けとれ」叫び声だ。 重力場の上から、花田の姿が見え、何かを角田へ投げた。 日本刃だった。落ちてくる日本刃を、はっしとつかんだ角田は、さやから抜き、日本刃を一閃する。 ヤコフ21のハイチタンの体は、まっ二つに切りさいた。けさがけに切りおとす。 ハイチタンの体を、古代の鍛えられた武器が切りさいたのだ。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月21日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第20回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第20回「ソンガ、いいか、ここが私の死に場所になるかもしれん」「いいよ、角田、僕は、あなたのハンターとしての腕前を見ておこう。もし僕の子孫が狩人の種族として生き残っていくならば、角田の戦いの唄を作り、我々のアシュアの種族が続く限り唄い続けてあげる」ソンガは真剣な表情でいう。 「ありがとう、ソンガ。俺は歴史上の人物になれるわけか」角田はにこっと笑う。 脱出ハッチを開け、宇宙スクターをそのまま侵入させる。自動レザーガン発射装置はスクターに照準を合わせる。 角田は、スクターの速度を最大限にあげ、自分の手から離した。 スクターは、レザーガンを受けながらも直進する。レーザーガンの照準装置に乗りあげ、停止した。 「ようし、上へあがるぞ。ソンガ」 何十mの脱出路をはいあがると、広い場所に出る。上を見上げると、何百mの高さがあるのだろうか、重力場発生装置がそびえていた。角田とソンガはコンピューター制禦装置をさがす。ようやく。さがしあてた角田はそこに爆弾をセットする。 「OK、ソンガ、ここから一応、脱出しよう」 下の広場に降りて、脱出ルートヘ向かう。 が、脱出口がふさがれている。 「くそっ、制禦システムが作動したのか」 背後から、レイガンの光条がひらめく。角田が背に装着していた、パルスライフルが吹き飛ぶ。 「ジャップめ、待っていたぞ。俺がヤコフ21だ」 ヤコフ21の顔は能面の様で表情がみえない。体は機械部分の集合体の様だ。背の高さは見上る程だ。 「くそっ」 角田が勤くより早く、ソンガがヤコフ21の前まで、走り込み、飛びかかっていた。 「こわっぱめ」 ヤコフ21はソンガの体あたりをかわし、右手を一閃し、ソンガを壁ぎわまで吹きとばした。ソンガは壁にぶちあたり、勤かなくなった。 「おやおや、やわなガキだな。さあ、大人のお前なら、充分相手になってくれるだろう」 ヤコフ21は両手をひろげ、角田をつかもうとする。すばやく角田は逃れようとするが、ヤコフは体の大きさに比してすばやく勣く。角田は左手をつかまれた。身長2mのヤコフは、角田の体をゆっくり持ちあげた。 「さあ、ジャップ。まずは左手からちぎってやろうか」角田の左手は痛さでちぎれそうだ。 ヤコフの能面の様な顔からは表情は見えないが、勝ちはこった声だった。「ぐわっ」ヤコフは痛みと驚きで、思わず、角田の体を投げ飛ばす。 角田は右足で、ヤコフの右眼をつきやぶる。 角田の宇宙服の右足には、ハイマンガンスチールの突び出しナイフが付いていた。 角田の体は重力場の作業用テラスまで投げ出された。このテラスには、作業用マニュピュレーターのコンソールが。 角田はコンソールを操作し、3本の作業用マニュピュレーターを使いマコフの体をがっちりととらえる。 角田は、マニュピュレーターで、ヤコフの体を壁にぶつける。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月20日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第19回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第19回 日本人の合体ロケット「富士」はようやくアルゴステーションのロケット発着ランチャーに接舷していた。 ステーションのバリヤー装置は作勤していない。日本人形作戦が成功しているようだ。先行して送りこまれた日本人形が、アルゴステーションの防備装備をバラバラにしているはずだった。 だが、どこまで、アルゴステーションの防禦装置を裸にしているかは疑問だった。 が、少なくとも、ランチャーまでは到着できた。 角田は腕時計のディスプレイを見ながら、ステーションの脱出用ハッチに辿りつく。後には宇宙服を装着したソンガが続いている。 ステーションに辿りつくまで、三機が地球防衛圏内で攻撃破壊されていた。残る四機が中間地点で合体していた。合体ロケットの名は「富士」である。 アルゴステーションまで辿りつけたのは、花田、角田、村上、朝賀の四名だった。 中にはいろうと脱出ハッチを開けた瞬間、光条がステーション内からのびてきた。すばやく反応して、逃がれる。光線銃だった。自動防禦システムだろうか、そう考えている彼らの宇宙服のインカムに声が入ってくる。 「ハイ、ジャップ共、今のは、俺からのあいさつだと思ってくれ。ここから先は、お前たちを一歩も入れないぜ」 「彼には例の神経ガスは効かなかったのでしょうか」 短躯の村上が、花田に尋ねる。その答えは相手側から返ってきた。 「俺は、このアルゴステーションの防禦サイボーグ、ヤコフ21だ。俺以外の人間は、お前たちの人形のおかげで、全員くたばっているさ。俺に勝ちさえすれば、このアルゴステーションはお前たちジャップのものだぜ」 ヤコフ21が花田たちに注意が集中している間、日本入形たちは機械中枢部を破壊にかかっている。 「おい、早く入ってこいよ。もう酸素がなくなるぜ」 花田達は、一度、「富士」にもどろうとした。 が、その一瞬「富士」は爆発する。 「くそっ、一体なぜ」 朝賀が叫んでいた。その時、再びインカムにヤコフ21の声が響いてくる。 「ふふっ、俺が爆発させた。もう、お前たちはそこにへばりついたままだ。早く入ってこないとな」 「くそっ」 叫びながら村上が、別の脱出ハッチにとりつく。 「やめろ、村上」 他の三人は叫んでいたが、遅かった。 光条が走り、村上の体はまっ二つに吹き飛ばされる。 「まずは1人だ。早く入ってこいよ。楽しみは、、これから、なんだからな」 ヤコフ21は舌なめずりをしながら、コンソールルームにすわっている。彼の前には全てのハッチのモニターTVが映しだされていた。このコンソールですべての自動レイザーガンシステムを作動させる事が可能なのだ。「花田さん、何とか突入しましょう。我々の維持装置の酸素量も少ない。それに突入したところで、アルゴステーション内にはまだ神経ガスが残っているはずだ。つまりは我々は宇宙服を着ていないとアルゴステーション内でも行動できない事です」 朝賀が真剣な表情で言う。 「あるいは、宇宙ステーションの各所に穴をこじ開け、空気を抜いてしまうかだ」 花田がいう。 「もう一つ、人工重力装置を破壊して、ステーション内を無重力状態にする事も考えられます」 角田が思いつめた表情で言う。 全孔が腕時計のディスプレイを見た。 「ヤコフ21のいる場所は中央制禦室と考えられます」 「とすれば、この中央制禦室真下に重力発生場があります。ここを破壊すれば、少なくとも、我々は動きやすくなります」 角田は勢いこんで発言した。「わかった。角田、その重力発生場は君にまかせる。ソンガもつれていけ」 角田とソンガは残っていた救命用の宇宙スクーターを操縦し、ステーション最下部へむかっていった。 ヤコフ21はモニターを通じ、日本人達の動きを観察していた。 「どうやら、重力発生装置を破壊するつもりらしいな」ヤコフ21は独りごちた。 ヤコフ21は中央制禦室を自動操縦にしておいて、自らも自動重力発生装置のあるステーション基耶へと向かっていった。 朝賀は非難の眼を花田に向けていた。朝賀は手話で花田に抗議する。『あなたは、角田とソンガをおとりとして使いましたね。なぜなんですか』 『朝賀くん、彼らがヤコフ21をひきつけている間に、我々はステーションの中に突入できる。そうだろう』 花田も手話で、朝賀に答えた。さらに続ける。 「いまさら、1人2人の命にこだわっている時ではない。この作戦に失敗すれば、日本は消滅するのだ。それは君にもわかっているだろう。さあ、早く、ヤコフ21の眼が重力発生装置にむけられている間に』花田と朝賀は、先刻、破壊されたロケット発着場へと向かった。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月19日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第18回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第18回 アルプス要塞の通信オペレーターは、アルゴステーションの異状に気づく。 「チーフ、大変です。アルゴステーションとの回線が不通になりました」「よし、もう一度チェックしろ」「だめです。補助回線も復帰しません」 通信オペレーターのチーフ、ブライアンは恐るべき知らせをラインハルトに報告しなければならなかった。「ラインハルト議長、アルゴステーションが通信不能になりました」「どんな情勢なのだ」「どうやら、アルゴステーションには,生命が存在しないようです」「なんだと, 聞いたか、ファーガソン」「日本人の奴らのしわざかもしれませんな」「なぜ、アルゴステーションをねらったのだ」「あの計画がもれたのかもしれません」「ミサイルはすでに運びこまれているのか」「そうです。いつでも発射可能です」 ラインハルトはしばらく考えていて、あることに気がついていた。「ファーガソン、アルゴステーションの近くには有人殺人衛星はないのか」 ファーガソンは近くにあるコンソールに向かいキーボードをたたいていた。 ファーガソンがうれしそうな声をあげる。「近くにa113が存在します。乗員はアントン=ヤノーシュです」「よし、ヤノーシュをアルゴステーションに向かわせろ」「でも、アルゴステーションには対キラー衛星装置が装備されていますが」 「かまわん、ヤノーシュなら、、うまくやるかもしれん」(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月18日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第17回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第17回■2024年 十二月 アルゴステーション 地球からのカーゴロケットが、ロケット発着場に到着していた。アルゴにもロケットにもラドクリフのマークがはいっている。 「おい、ジョン、今日のお荷物は何だい」 ハーランはパイロットのジョンに声をかける。 「さあ、知らないよ、伝票を見てくれよ」 荷物係のハーランは伝票をディスプレイで見てみる。ハーランは変な叫び声をあげる。 「おいおい、ジョンよ、こいつは驚きだけだぜ」 カーゴロケットパイロットのジョンはハーランの言葉につられる。 「どうしたんだ」 「このカーゴロケットの荷物全部がボスからの皆への贈り物だとよ」 「えっ、あのケチのラインハルトからか。アルゴステーションの乗組員への贈り物をするんだって。信じられんなあ」「そりゃ、我々、アルゴステーションは今から大きな仕事をするからなあ。ボスでなくっても贈物がしたくなるってことさ」 ハーランは荷物を倉庫にしまう。やがて倉庫からはシュートを使って各家庭、各部屋へとこの贈物が、送り込まれていく。 居住エリア。このアルゴステーションには5千人の人間が住んでいたが、そのすべての人間がこのプレゼントを受けとっていた。 箱をあけた大人達は驚く。 「こりゃ、何んだ」 中には高さ15センチくらいの物体が包まれていた。 「東洋の人形じゃないか」 「どうやら日本人形らしいぞ」 「ボスも趣味が悪いな」 パッケージを開けた瞬間から日本人形は変化していた。ステーションの人工空気と混じり合い、即効性神経ガスを生じ始める。 ステーション内に静かに死が訪れている。 アルゴステーションはいわゆるドーナツ型のステーションで中央にある大型チューブのまわりをドーナツの様に居住区が囲んでいる。 大型チューブ部分の上方には集光板があり太陽熱を集めている。チューブ部分の上から三分の一までにはアルミニウムの反射板が付けられていて、開閉ができる。 チューブ中央部分にはシャトルやロケットの発着場が没けられている。 コンソールルームに最後まで残っていたミサイルオペレーターは日本へのミサイルの発射スイッチを押そうとする。 死に前に最後の一発をくらわしてやる。そう決意していた。 日本人形は恐らく日本人亡命グループのしくんだ事だろう。簡単なトリックで五千人の人間が死んでしまった。コンソールの上で、彼の手は動く。どのスイッチだ。薄れゆく彼の眼には、もうスイッチ位置が見えてはいなかった。 彼も力つきて、コンソールの上に手をのばしたまま死んでしまう。 アルゴステーションのコンピューターは自己防禦機構を作動させていた。中央機械層のシャフトの中から、人の形があらわれていた。 ガスが立ちこめるアルゴ=ステーションの中で動く人影。アルゴステーション防禦サイボーグ、ヤコフ21である。 ヤコフ21は今まで中央機械層で眠込んでいたが、アルゴのコンピューターは彼の頭に現在までの情報をすべて入力していた。 ヤコフ21は、死の臭いがするアルゴステーションでI人ほくそえんでいた。 「ふふっ、ジャップのやろう。なかなかやるじゃないか。簡単なブラフでやられるとは、このアルゴステーションには、まともな人間などいなかったのか。わかった。アルゴにはけっしてジャップをいれんぞ」 ヤコフ21は地球のアルプス要塞へ連絡しようとしてコンソールルームヘ入る。 情報回線をオンにするが、JVO本部には通じない。なぜだ。 やがて、ヤコフ21は情報回線がバラバラに断線している事に気づく。 「ちくしょう。日本人形共め。稼動できる日本人形もあったのか」 その直後、ヤコフ21の背後から、直径5mのミニロケットが発射された。 ヤコフ21は飛びのを、その発射された方向にレザーガンをばらま 小型の人形が吹き飛んだ。日本人形だった。亡命日本グループが、丹精に作りあげた暗殺用日本ドールであった。 「こんなこねずみみたいな奴らが、アルゴ=ステーション内をうろついているとすると気をつけねばならんな」。ヤコフ21は。危険を背面に感じていた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月17日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第16回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第16回■2024年年 十二月 ゼウスステーション 「オーガナイザー・ブキャナン。日本人共のロケット発射地点が7個所と判明しました」 オペレーターはブキャナンヘデータを渡した。 「やってくれるな、ジャップ共。さて、何機アルゴステーションまで辿りつけるかだ」ブキャナンはそう言いながらデータを見る。アコンカグワ 角田 博アマゾン・シティ 高野周三インドネシア ボロブドール 朝賀 健マダガスカル 船井光一タイ奥地 塚本 猛南極 光明基地 村上千馬南太平洋上 潜水艦「嶺」 花田万頭「花田おんたい自ら出馬か」 がブキャナンは一人の名に目をとめる。「おい、間違いなく、アマゾン=シティから、ケン・アサガが出発したんだな」 ブキャナンは驚きの表情でオペレーターに問いつめた。 ブキャナンの勢いに驚きながらオペレーターは答える。 「はい、間違いありません」 「くそっ、アサガめ、何を考えているんだ。せっかく、我々がリビアまで送り込んでテロリスト技術を覚えこましたというのに」■2024年 十二月 マダガスカル島 船井のロケットはようやく成層圏に達していた。マダガスカルの古い商船からカタパルト式で打ちあげられた船井は大喜びだった。- 追撃してきた戦闘機は、ある高度以上になると爆発した。 日本人の別動グループがJVOの飛行機にセットしておいたのである。 皆とのアポイントメイント地点に迎う船井だったが、急激に大きな鷲が襲ってきた。その鷲は船拝のロケットをふき飛ばした。 キラー衛星a-13が上昇中だったのである。乗っているのは、アントン=ヤノーシュ。 クーラーの人間だった。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月16日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第15回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第15回■2024年 十二月 アフリカ奥地 ビザゴス共和国 アコンカグワ山近く 火が燃えていた。その炎を囲んで原地人達が昔から続く戦いの踊りを舞っている。しかしその踊りには若者はいず、年寄りばかりだった。アシュア族の戦いの舞いだ。「酋長、ありがとう」 日にまっ黒に焼けたアジア人が踊りを見ながら言う。「いやいや、ブアナ角田、お前は戦士だ。日本人一の戦士かもしれん。我々は勇者には勇者の血を持って答えなければならない」 曾長ワナガはしわくちゃの顔で言う。 「酋長、我々のロケ。トを発射したあと、すぐさま、ここから逃げてくれ」 「わかっておるよ、勇者角田よ。お前達はこれから大空のもっと遠くで戦かうじゃな。それは神々の戦いかもしれん」 「本当に協力をありがとう、ワナガ」 二人はだきあった。 「いやいや、我々は昔、日本人の技術者から大変世話になった。我々の国の農地が増えたのも日本人のおかげじゃ。この恩返しをしなければな。我々は文明人じゃなくなる」「ありがとう、ワナガ」 角田は涙ぐんでいた。恐らく、アシュア村の側に設置されたロケットランチャーからロケットが発射されたことはすぐ発見されるだろう。そうすれば、この村はJVOから攻撃され、皆殺しになるだろう。が俺達日本人は彼らにしてやれる事は何もない。なぜ彼らは我々日本人にやさしいのだ。 角田の目がしらはそれであつくなるのだ。「そうじゃ、ブワナ角田。わしのかたみをやろう。わしもその宇宙ステーションとやらへ行って戦いたいところじゃが、何せこの年ではな、体が動かんからな」 酋長ワナガから角田は短剣を受けとる。「でも、酋長、これはあなたの種族に古くから伝わる王者の剣では……」「いやいいんじゃ、もう我々には狩るべき動物など、残ってはおらん。地球連邦から受けとる年金だけで暮していける。それが我々から勇者の血をぬきとってしまった。若い奴らも都市へ出ていってしまい、もう本当の狩人などおらん。その血を感じるのはお前たち日本人だけじゃ。ああ、そうじゃ、一つだけ頼みがある」 酋長ワナガは思い出したように言った。 「何でしょう。私が役に立つ事でしたら」 6歳くらいの子供が、側にやってきた。 「これは私の孫ソンガじゃ、一緒に連れていってくれんか」 「でも、酋長、我々は……」 「わかっている。だがこの地にいても死の運命からは逃がれられんじゃろう。この子ソンガは、わしらアシュア族の狩人の血を受けついでいる数少ない子供の一人だ。あとの奴らは観光事業とかやらで、家畜化されておる。このビザゴスの国も、もう終りじゃろうて。なあ、東の勇者よ。頼む。この子を連れていってくれ。王者の剣とともに」 曹長ワナガの意志は強かった。 「わかりました。曹長がそこまでおっしゃるのでしたら」 角田はその子の肩をだいた。 「いいかい。ソンガ君、我々は明日、星へ行く」 「ああ、俺は、おじいの血をひいた最後のアシュア族のハンターだ」 ソンガは6歳とは思えない力強い声でいった。眼がキラキラと輝いている。 「地の上も、空の上もかわりはしない」 そういって、ソンガは白い歯を見せた。 「心強いよ、ソンガ」 「角田、ありがとう。この孫ソンガに本当の戦いというものを、そして日本人の勇者の血を見せてやってくれ」 「わかった。ワナガ、約束しよう」 「いいか、ソンガ、角田達は、日本人の中でも選ばれた勇者なんじゃ。昔、日本が滅びそうになった時、神の怒りの風が吹いて日本を救ったという事実がある。角田達もそれなんじゃ。神の風なんじゃ」 「ねえ、角田、あんたは一人で行くのかい」 「いや、我々は、七人だ」 「そうかい。風の七人かい」 「たぶん、生き残れるのは数人だろう。あるいは全員死んでしまうかもしれない。が我々が失敗すれば、多くの日本人が死ぬ事になる」 「角田、あんたが死んだら、俺が葬式をしてやるよ」ソンガが言っ「ありかたい。頼むぞ、ソンガ」 角田は笑って答えた。 アシュア村の近くの広場には、広大な映画のオープンセットが作られていた。 イスラエル製作の映画「アフリカのロケ。ト」の撮影という事になっている。 アフリカの魔術師たちの魔術でロケットを打ちあげるというストーリーになっている。 事実、カタパルト形式で、成層圏まで小型のロケ。トを打ち上げ、そこでロケットを数機組み上げ、宇宙ステーションまで行く予定なのだ。 地球の各地で、日本人に協力してくれる人達の助けを受けて、ロケットが飛び立とうとしていた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月15日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第14回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第14回■2024年 一〇月 フランスパリ・ソャンゼリゼ・カフェテラス 花田は中国人のコスチュームを着て、ブキャナンの前に現われた。ブキャナンもフランスヘ旅行に来た観先客を装おっている。 テーブルにすわる。二人は眼であいさつをかわす。 テーブルの下で、ブキャナンの手に。花田からマイクロチップが渡された。日本の国宝の一郎を隠してある場所が入力されている。 「さて、大変な事を聞かせてもらおうか、ブキャナンくん」花田の眼にはパリの風景も眼にはいっていない。 「中国服がよくおにあいですね、花田さん。さて大切な事です。AプランからBプランヘ移行する事が計画されているようです」 花田は声を発する事ができなかった。 日本抹殺最終プランがBプランである。「ついに来るべきものが来たか。具体的にはどんな方法だ」「日本本土に対するミサイル攻撃ですよ」「何だって」「ミサイル数発が日本本土を直撃します」「しかし、そんな事が許されるのか」「許すも許さないも、今や、ラインハルトは地球を支配しているのと同じですよ。確実にミサイルは日本を直撃します」「しかし、各国の日本占領部隊もいるはずだぞ」 ブキャナンは軽く、花田の杞憂を受け流す。 「彼らは日本抹殺のための人柱となるわけですよ。彼らがどんな固い意志を持っているか充分わかっていただけるでしょう」 「わかった。具体的な日時を教えてくれ」 「それに対する対策を考えるというわけですか」 二人はおだやかなパリ、シャンゼリゼ通りの夜景を背景に恐ろしい事実を話しあっていた。 カフェに大男が飛び込んできた。もう人影はない。花田はどこだ」「そんな方はこられておりませんが」 ウエイターが言う。「うそをつくな。先刻まで花田がいたはずだ」 店の者の姿をじっくり見る。「貴様、情報サイボーグだな。情報マフィアめ。ジャップとも手をくもうとするわけか」「あなたこそ、我々、情報ネットワークサービスにケチをつけるわけてすか。悪いうわさ、特に我々に対する悪いうわさを消さなければなりません、クーラーの人」 「おもしろい、お前たちと戦えというわけか。そうすれば花田を渡すというわけか」 「先刻も言ったように、そんな人は知りません。ただ我々、INSは理不尽な汚名には対抗するだけですよ」 大男は、腕をひとふりする。両手の指がすべてハイチタンのレザーメスに変化していた。 「ほう、あなたもクーラーの戦闘用サイボーグというわけですね。それともあの有名な切りさきジャックかな」 「だまれ」 大男はあたりを一閃する。 椅子とテーブルがバラバラになって飛び散った。切り口は鋭い。 情報サイボーグはたくみに体をかわし、大男の指のナイフから逃がれる。が、建物の壁ぎわに追いこまれる。「覚悟しな。お前も、あのテーブルの様にバラバラにしてやる」 が、情報サイボーグはにやりと笑っている。「その笑顔もここまでだ」 大男の両手がIセンする。 瞬間、大男の方が黒焦げで倒れていた。 少し離れた店の中から、二人の男がその光景を見ていた。「花田さん、どうですか。我々がクライアントに対して忠誠を尽すことを充分に理解していただいたでしょうか」「情報サイボーグは放電したわけだな」「そういう事です」「すてきな茶番劇を見せてくれてありがとう、ブキャナン」「お手助けできる事があれば言って下さい」花田は、店から出て、露地の闇に消えていった。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月14日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第13回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第13回■2024年 一〇月 情報ネットワークサービス アメリカ本社 メガネにデッ歯の男がモニターの中で叫んでいた。「ブキャナンを出せ」 その大声はINSの本社ビルをゆるがす程の勢いがあった。「あなたは」 恐る恐るモニター・オペレーターの1人が、この電波の侵入者に尋ねていた。「花田万頭(はなだまんとう)だ、名のるまでもないだろう」 INSの本部コンピューターはクライアントの顔と声紋の分析を行なっていた。 「少しお待ち下さい」 オペレーターは答える。 「いいか、ブキャナンがどこにいようと、一分以内に回線に出せ」 花田の顔には怒りがはっきりとあらわれている。 「おやおや、花田さん、大変お怒りの様ですが」 ようやく回線に出たブキャナンは花田の怒声を軽くあしらう。花田は続ける。 「怒るのがあたりまえだ。我々の本部がJVOの奴らに攻撃を受けた。あの場所を知らせたのは君達だろう。あの場所は、先日、君が電波で割り込んだところなんだ。君達がその場所をJVOに知らせたに違いない」 「花田さん、それは濡れ衣というものですよ。JVOも多くのサテライトを地球上空にあげている。地球上の通信回路から場所をつきとめることなど可能なのですよ。肢らの情報収集能力を低く見てはいけない。それに我々があなた方、亡命日本人の本部をかぎつけた瞬間、あなた方は本部の場所を移動させたはずだ。それより花田さん、ちょうどよい機会だ。それよりももっと大変なニュースがはいっています。貴重な情報だ」「何かね」「それは、この回線が盗聴されている可能性がある。会ってお話ししましょう」 彼らは暗号を使って会う場所を決定する。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月13日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第12回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第12回■2024年 五月 ラインハルトの別荘 ラインハルトはアルプス要塞から自分の別荘に戻っていた。ラインハルトはしばらくの日々、一人で考えていたのだが、やがて自室ヘファーガソンを呼んだ。 「ファーガソン、一つプランがあるのだが」 「会長、どの様なプランでしょうか」 「まず、君に質問しよう。今まで我々ラドクリフ=コンツェルンが構築し、宇宙空間に送り込んだ宇宙ステーションはいくつあるかね」 唐突な質問にファーガソンはとまどう。 「それは、無数といっていいかも知れませんが、三百くらいでしょうか」 ラインハルトは自分の前にあるラップトップ型通信ラインを開け、CRTに表示してみる。 「見てみろ、ファーガソン、これが我々ラドクリフ=コンツェルンが宇宙に打ちあげたステーションの数だ。実際四二三個だ。その内現在も稼働中なのは、三五一だ。ここからが重要な話だ。この内、軍事用に転用できるのは二つある」 ここでラインハルトは息をついだ。 「先日のJVO会議の様に、Aプランでは、まだまだ生まぬるく、世界各国の足なみがそろっていない。散発的な日本人グループの叛乱も各地でおこっている」 「おっしゃる通りです。なかなか占領軍になじまず、日本が滅亡した事実を理解しておりません」 「それでだ、宇宙ステーションのIつが故障する。制禦不能になるのだ」 ラインハルトは顔をほころばせた。フ″Iガソンが続ける。 「そして、その宇宙ステーションでは軍事ミサイルを実験中だったというわけですね」 「そのミサイルが偶然、日本本土を直撃するわけだ」 「各国も事故だとして、それを承認するわけですね。が、占領中の軍隊はどうします」「この際、いささかの犠牲はやむを得んだろう。その時機、占領軍のトップクラスはハワイヘでもバカンスヘ行っていればいいじゃないか」「わかりました。どこの国も不平は言わんでしょう」「我々がJVOの活動に活を入れてやるわけだ。つまり自動的にBプランヘシフトするのだ」 ラインハルトのみどり色の眼はキラキラ光っていた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月12日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第11回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第11回 ラインハルトは机のひきだしを開け、中のボタンを押した。 スペシャル=ルーム自体がエレベーターになっていて、地下へ動いていく。地下数百mに会議室が設けられていて、JVOの構成メンバーが集まっている。 「諸君、ごくろうだ。このド=ヴァリエ将軍は私の個人的な友人だが、JVOの特別顧問として来てもらった」 「ド=ヴァリエです。よろしく」 ラインハルトがつけ加えた。 「ちなみにこのアルプス要塞はド=ヴァリエ将軍のプランによって作られたのです。この意見を具申した時、時のフランス政府とNATO軍は、ドHヴァリエを気の狂った妄想者と呼び、ド日ヴァリエから軍籍を剥奪したのです。しかし、彼は私の協力を得て、このすばらしいアルプス要塞を作りあげることができました」 拍手の嵐がド=ヴァリエの耳菜に響いてきた。続いて拍手が納ったあと、ラインハルトが発言する。 「さて、諸君、各地における対日本人作戦の状態をきこうか」 まず上背が2m近くあるアメリカのテイラーが発表した。 「御存じの通り、我がアメリカ軍はソ連軍と合同作戦を取り、東京エアボーン作戦を強襲した事は皆さん御存じの事だと思います」 会場に再び、拍手の嵐がおこる。テイラーは上気して続けた。 「以後、アメリカ軍占領地区では組織的な日本人の抹殺プランが順調に進んでおります。日本人の所有していたハイテク技術工場はアメリカ軍とロシア軍の合同部隊が接取し、地球連邦の繁栄に寄与する予定です」 続いてロシアのマカロフが発言した。 「我々は、日本人の知力と体力をかい、希望者をニイガタからホー101 -バークラフト船に乗せ、シベリアヘ運んでいる。彼らの同朋愛的な、自発的な労働は、我々ロシアの国家英雄的行為として高く評価されるであろう」 「いまだに20世紀から進歩しとらんな奴らは」 ド=ヴ″リエはかたわらにいるラインハルトに小さな声で言った。 「しかたがあるまい。軍事動員数だけは偉大だからな」 次々と各国占領軍の発言が続いている。 「イスラム圈の人間の姿が見えないが」 ラインハルトがファーガソンに言った。 「彼らはいまだにコーー・ランの精神にのっとりラマダンに入っており、出席できないとのことです」フ″Iガソンが困った顔で言う。 「困った奴らだ」 「心情的に、彼らにとって皆、石油がビッグエネルギーであった時期、日本人はいいお客さんでしたからね」 「どうもキリスト教徒でない奴らの考え方はわからん」 ラインハルトは小さな声で言ったつもりだったが、耳ざといアジア、アフリカの代表の驚きの声が拡がっていく。 異様な雰囲気になってきた。 「議長に質問する。JVOはキリスト教の新たな十字軍かね。さらに白人の利益追求集団なのかね。我々、中国も、二千年にわたる関係をふりきって、あなた方JVOに参加し、日本人抹殺計画に加わっていることを考慮していただきたい」 中国代表の陳勝であった。 韓国代表のイー。ンボキが続けた。「諸君らも御存知の通り、我が大韓民国も日本とは深い因縁があり、在日韓国人の数が多い。我々は在日韓国人の保護を目的として出兵しているが、他国軍隊が、我が同朋、韓国人を日本人と間違いいわれなく暴力行為、あ&いは殺人事件すらも発生している。私はこのJVO本部の会議の場をかりて、この件を厳重に抗議しておきたい」 インド代表チャンギがイ・ュンボギの発言を制した。 「しかし、現場のうわさによると、君達韓国人は、日本人の技術者に秘密裡に韓国国籍を与えていると聞くが」 「そんな根も葉もないうわさをどこからしいれたのかね。先刻もいっただろう。日本には在日韓国人が多いと。そういう君達も日本に印商が多いはずだ。インド人の友人の日本人のために亡命日本人村を作ったと聞いたぞ。確かネパール国境近くに」 インド代表が反論する。 「そんな事はありえない。我々よりもインドネシアやフィリピンの方が危ない。彼らは多数の無人島を所有しているので、一つの孤島を日本人達に与えたと聞くぞ。ハイテクアイランドを作りあげ、自国の発展に役に立たせようとしている」 インドネシア代表ヒランボが続ける。 「そんな事を言いだせば、日系人の多い中南米諸国はどうなるのかね」 ブラジル代表ファランヘが答える。「ゆえなき中傷だ。確かに我が国には日系人が多い。しかし6月1日を機して、それ以降の帰化申請は却下している」 インドネシア代表が反論した。「が、我々はアマゾン奥地に、日本人特別市ができていると聞いている」「それは我々も聞いた事がある」 お互いがののしりあいを姶めた。収拾がつかない状態になる。「我々はパートナーの選択をあやまったのかもしれんな。ド=ヴァリエ」 ドーヴァリエもラインハルトに耳うちする。「やはり、頼りになるのはョーロッパ人、アメリカ人だけかもしれん」「ま、そんな事は百も承知だったがね。ド=ヴ。リエ」(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月11日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第10回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第10回■2024四年 四月 アルプス要塞 アェロスパシャル=タイプ04ヘリコプターは、アルプスの山並みをなめて飛行している。チューリッヒ空港からの客だった。ヘリのサイドには「ラドクリフ」グループのマークがすり込まれている。 白髪というよりも銀髪と呼んだ方がいいだろう、ド・ヴ″ァリェはヘリから鋭い眼で方々を観察している。 やがて、ヘリはベルデ山上にホバリングし、山腹に穴が開き、その穴にヘリは飲み込まれた。 ド=ヴァリェはアルプス要塞の専用ヘリポートに立たずんでいた。彼は今、ペルデ山の真中に立っているのだ。 情報将校が、ミニ=ヴィーグルでド・ヴァリェを迎えに来た。その間、ド=ヴァリエはこのヘリポートの内部構造をしっかりと観察している。 ド・ヴァリェはサングラスをはずし、ブレザーの胸ポケットに無造作につっこんだ。 短かく刈り上げられた銀髪や、そのきびきびした体の動きは60歳という年齢を感じさせないものだった。眼は猛禽類を思わせる。 「将軍、ラインハルト議長がスペシャルルームでお待ちです」担当情報将校が言った。 「ごくろう。頼む」 ド=ヴァリエは、その少尉のアルプス要塞についての講釈を耳にしながら、自分の発想から作りあげられたこの要塞のできあがりぐあいを紬かくチェックしていた。 彼は、第二次大戦中、ナチによって上4程、造り上げられていたこの要塞を発見し、新たなテクノロジーを持って地球最強の砦を作りあげようとしたのだった。 もちろんこの要塞の構築にはラドクリフ企業グループの全面的なバックアップがあり、ラインハルト議長自らが命令を下していた。 ミニ=ヴィーグルは特別室の前で止まり、若い将校はド=ヴァリエ将軍を降ろす。 「この部屋です。ド=ヴァリエ将軍」 「ありがとう。君のアルプス要塞の説明は簡にして要だった」 「おほめにあずかって、光栄です。将軍」 自動ドアが開き、広さ数100メートル平行の空間があった。その真中に、大きなオーク材の机があり、ラインハルトと腹心のファーガソンが居た。ファーガソンはいつもながら顔色が悪い。 「やあ、ド=ヴァリエ、よく来てくれた。久しぶりだ」 ラインハルトがイタリア製のエルゴデザインのチェアから立ちあがり、握手を求めた。 強く握りかえしてから、ド=ヴァリエは尋ねた。「なにか、日本人共から不敵な挑戦がつきつけられたと聞いたが」 「そうなんだ、ド・ヴァリエ、あいつらは、時折、我々の心を冷え冷えとさせる。やつらは我々白色人種の理解を越えた行動をおこす。やはり、やつら日本人は、この世界から追放すべきなんだ」 「私も同感だよ、ラインハルト。じゃVTRを見せてくれるかね」 ファーガソンが機械のスイッチを入れる。 モニターTVに例の花田万頭(はなだまんとう)の顔が映った。 しばらく、何度もこのテープを見ていたド=ヴァリエはラインハルトの方を向いた。「ラインハルト。このVTRの彼は確かに生きている人間のものかね」 「というと、花田の映像がCG(コンピューターグラフィックス)で、できているとでもいうのかね」 ラインハルトはド=ヴァリエの意外な質問にとまどっている。ド=ヴァリエはきつい緑色の脹に疑いの邑を隠さず尋ねた。 「実は、この花田万頭という男、情報戦の分野では、かなり知られた男だった」 考え深げに言う。 「だったというと」 ファーガソンが疑問を投げかける。 「花田は確か、2010年のスリナム油田事件で爆死したはずなんだ」 ド=ヴァリエはあごをなでた。 「爆死した。じゃVTRに映っている男は誰なんだ」 「わからん。とにかく、花田万頭の事は世界のどこのデータベースにも登録されていないだろう。彼は日本政府情報省のエースだった男だ」 「で、スリナム油田事件とは」 「石油コンツェルンのセブンシスターズと日本の石油会社が、油田の占有権をめぐって武力抗争をおこした例の事件だよ」「確か、あの事件は事故として報道されたはずですが」ファーガソンが□をはさんだ。 「確かに報道はそうなっていたが。この時期から、日本政府も秘密裡にスペシャルフォース(SS)を訓練していたはずだ」 「というと、花田万頭のバックには」 「そうだ。旧日本政府のバックアップと、ジャップのスペシャル=フォースの生き残りが関与していると考えていいだろう」 「わかった。裏の組織を使って、花田の資料を収集せねばならんな」 「そうすることは最善の策だろう。どんな組織、どんな個人でもウィークポイント、アキレスの泣き所があるはずだ。それを押さえる事。特にジャップのSSに関しては特殊戦のプロ集団ですし、ジャップのハイテクノロジー技術で武装されているはずだから」 その時、机の上の電話がなった。 電話をとったファーガスンが言った。 「皆さんがお集まりになったようです」 「すまんが、将軍、会議に出席してくれんか。本日は、ジャップ掃討作戦の各地方指揮官達が集まっているんだ」「わかった。対日本人作戦の現況報告という奴だね」「その通りだ。君にとってはいささか退屈かもしれんが」「いやいや、そんな事はない。どんな小さな情報でも聞いておくにこした事はない」「それじゃ、動こう」(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月10日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第9回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第9回■2024年 四月 アルプス要塞内JVO本部 JVO本部の中央指令室モニターに異常が発生していた。この本部内にある幾多のCRTは各国で行なわれているジャップ掃討作戦の模様を映しだしていた。98- 「どうしたんだ。回線がどうにかなったんじゃないか」 モニターオペレーターが叫んでいた。 「強力な電波が割り込んできています。モニターにその電波の情報が映し出されます」 JVOの情報モニターすべてに、その男の顔が映った。 その顔は、メガネをかけ、線をひいたような脹。低い上を向いた鼻。おまけにデこ困。つまりは、よく外国漫画に登場する日本人の顔そのものだった。各所に失笑がおこる。 「何者なんだ。こいつは。気のふれた日本人か」 失笑のあとには、ブーイングがあがっていた。その映像がしゃべり始めた。 「JVOの諸君。初めてお目にかかる。覚えておいてもらおう。私の名前は花田万頭。亡命日本人グループ「狼」のりIダーだ」 モニター・オペレーターの一人がモニターに映る万頭にむかって叫んでいた。 「花田。いきがるのはいいが、残念ながら、君達の国はもう消える運命にある」 モニターの中の花田が答える。声が届いているのだ。 「わかっている。私はそれを防ぐためにいる。JVOの諸君、宣言しておこう。我々、日本人はけっして滅びはしない。我々は君達に対してカウンターアタ。クをかける。それがどんな方法になるか楽しみにしていたまえ」 映像は突然フェイドアウトした。JVO本部は、少しの間、あっけにとられて、静まりかえっていたが、やがて、蜂の巣をつついた様に大騒ぎとなる。「何なんだ、あいつは」「なぜ、日本人のグループの映像が我々の情報ラインに入り込んだのだ。原因を調べろ」(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月09日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第8回■2024年 三月 地球某所「花田さん、君がそこにいるのはわかっている。我々と話をしても損にはならんと思うが」 情報ラインに割り込んできた金髪の男は言う。ここは日本人テロ組織『狼』の本部だった。 「君は何者だ」 「私は情報ネットワーク=サービスのブキャナンだ」 「情報ネットワークだと。情報マフィアだな」 「そういう輩もいるがね」 「そのマフィアが花田さんに何の用があるというんだ」 「君、いいから、花田さんを出したまえ、君たち、日本人にとって悪くはない話だよ」 しばらく、モニタールームは、どう処置するかでもめていたが、花田があらわれた。 「私が花田だ。ブキャナン君。が情報ネットワークサービスはラドクリフ=グループと協力して働いているのではないかね」 「花田さん、あなたの考えはウェットすぎる。我々、情報マフィアはそんなウェ。卜な民族意識など持ちあわせてはいない。あるのはただ、ビジネスのみだ。つまり我々のサービスに対して、どう評価し、クライアントがどれだけペイしてくれるかどうかだ。だから我々はクライアントのニーズでどうにでも動く」「つまり、我々日本人が今度はクライアントのわけだな」「そういうことだ」「しかし、ブキャナン君、御存じの通り、我々には払うべき金はない」「金がない。それはわかっている。しかし、君たちの国には二千年にわたる文化があるだろう」 花田は少し顔色を変えた。 「君達は、つまり、国宝をわたせというわけか」 「国宝というのは国家が存在して始めて存在する言葉だ。現在の君らには国と呼べる代物はないだろう」「そう、確かに、我々、日本人には、国土と呼べる場所はなくなってしまった」「が、君たち、莫大な国宝重要文化財というものを隠したはずだ。それを渡してもらおう」「その代償に、我々に何を与えてくれるというのかね」「JVOの動向だよ。君らに有利になる情報だ」■2024二年 三月 ドイツ ラインバッハ 男は数時間も前からその研究所を観察している。今日で一週間目だった。 研究所から最後の研究員が出ていった後、男は、静かに研究所の中へはいる。警告ベルもカットされている。研究所にはもうヒルケナー博士しか残っていない。 ドアを開け、君は…というヒルケナー博士の言葉が発せられるや否や、男は衝撃銃を射つ。外傷はまったく残らない。男はヒルケナーの様子を調べた後、研究施設の各所に小型の爆弾をしかける。すべての機器に仕掛け終ったあと、男は自分以外の人間がいる事に気づく。 爆発がおこり、研究所は猛火に包まれる。 「き、君達は、天使かね」 ヒルケナーの前に柄の悪そうな天使が2人立っていた。しかしながらその天使は白い衣装を着ているわけではなく、普通のスーツを着ている。頭には金色のワ。カが浮んでいる。 「天使だって、ヒルケナー博士、確かにあなたにとっちゃ俺達は天使かもしれんな」 太った方の天使ファットが言った。 「どういうわけかね。私は気を失しなっていたらしいのだが」 ヒルケナー博士はユダヤ人独特の鼻に、フレームめがねを持ち上げながら言った。 「お前さんのお抱え主、ラインハルトのためにあんたは本当に天国へ行くところだったんだ。まわりを見てみろよ」 サングラスをかけたもうT人の男スレンダーが言った。スレンダーの言う通り、ヒルケナー博士の研究所は燃えあがっている。近くにある丘にヒルケナーは横だわっていた。「ラインハルトが信じられん」「信じられんも何も、実際、あんたも殺されるところだったんだぜ」 ファットが炎に包まれている研究所を指で示して言う。「あの中に、『クーラー』の奴が一人ころがっているさ」「クーラー、何だ、それは」「ラドクリフグループに直属する処理グループさ」「処理?「つまりダーティ=ワーク、殺し、暗殺、爆破、その他諸々さ」「しかし、ラインハルトは、私のプランHイエローを認めてくれた」「そいつが今は重荷になっているわけだ」 ヒルケナーはじっくりと二人の顔を見ている。「一体、君達は何者なんだ」「我々かい」二人の天使はにやりと笑う。「俺達はヘブンズだ」二人の声はハモっている。「ヘブンズだと、すると、情報ネットワークサービスの人間か」「そういう事だ。さあ、博士、我々と一緒に来てもらおう」「どこへだね」 消防車や、警察の車がやってきて、人々が叫んでいる。「我々の天国へね」ファ。トが言った。 二人のヘブンズは近くに止めてあったワゴンにヒルケナー博士を乗せて、いずことなく走り去った。
2007年08月08日
ジャップス=デイズ日本人の日々■第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第7回■2022年 三月 中部ヨーロッパ 山岳地帯 ョーロッパ中西部アルプス山嶺の中にその城はあった。巨大コンツェルン=ラドクリフ=グループの議長、ラインハルトの別荘であった。「ラインハルト会長、ホットラインがはいっております」くつろいでいる銀髪のラインハルトの前に腹心であるファーガソンがあらわれた。 「どこからかね」 「情報ネットワークサービスのブキャナン=オーガナイザーだと言っております」 「どんな話か聞いたかね」 「それが、はっきりとはいわないのです。会長がてがけておられるピック=プロジェクトに関する事だと中しておりますが」 「あまり、話をしたくないが」 「話を聞かないと大変な事態をまねくとも申しておりますが」 「え1い、しかたがあるまい」 ラインハルトはしぶしぶフォーンをとった。 壁にかかっているフォーンの画像があらわれ、冷い青い眼をしたブキャナンの顔が出現した。 「ラインハルト会長、初めまして、情報ネットワーク=サービスのオーガナイザー・ブキャナンです。お目にかかれて光栄です」 「で、君が私に話したいという内容は何かね。この強引な連絡手段95-には、いささか犯罪的なにおいがするね。このホット=ラインに入りこめるはずがないのだ」 「それは会長、おたがいさまでしょう」 「いいかね、ブキャナン君とやら、君たちが何と呼ばれておるか、知っているだろう。君らは情報マフィアだよ。本来は私と話しなどできないどぶねずみなんだよ」 ブキャナンはラインハルトの侮蔑の言葉など、まったく意に関していないようだ。 「じゃ、ラインハルト会長、あなた方のイエロープランはどうなんです」 「何だって、もう一度言ってみろ」 「イエロープランですよ。それも今年、6月1日に発動するビッグプロジェクトだ」 「なぜ君たちがそれを」 「言ったでしょう。我々は情報ネットワーク=サービスです。この地球上で我々の知りえない情報などありはしない」 ラインハルトはいささか、ブキャナンに対する、つっけんどんなしゃべり方を改めていた。 「それで、イエロープランについてどこまで知っているというのかね。それに君たちの我々に対する要求はなんだね」 「最初の質問の答えはすべてです。次の質問に関しては、我々情報ネットワーク日サービスをそのプロジェクトに加えていただきたいわけです」 「君たち、情報マフィアを我々のプロジェクトのメンバーに加えろだと。ブキャナン君、ふざけてもらってはこまる。我々、ラドクリフ企業体の構成メンバーは素姓正しいものばかりなのだよ。それに比して、君たちは何だね。君達は他人の情報を盗みだして、それを他人に売りこんだり、、本人をおどかして金をまきあげるのが商売だろう。商売変えでもしたいと言うのかね」 「いいえ、ラインハルトさん、我々は事業規模を拡大したいだけですよ。イエロープランは我々にとって願ってもないビジネスチャンスなんです」 「君の言いたい事はそれだけかね。考えておこう。君のネットワークサービスの利用方法をね」 ラインハルトは怒りをこらえて、CRTをOFFにした。 「ファーガソン、なぜ、イエロープランが、彼ら、情報マフィアにもれたのだね」 「いえ、わかりません。彼らは各所の情報ラインまいといううわさです」に潜りこむのがう ラインハルトは大きなソフ″1にすわりかかり、頭をかかえていたが、一つの決心をしたようだった。「ファーガソン、いいかね、ヒュルケナー博士を消せ」「何ですって」 ファーガソンは驚きの表情を隠しきれない。 「いいかね、二度と同じ事をいわせるな。博士を抹殺し、博士の研究施設を破壊しろ。むろん事故にみせかけるのだぞ」 「わかりました。マスター、あなたがそうおっしゃるならば」 ファーガソンは、抹殺組織「クーラー」の電話番号をインプットし始めていた。 窓の外にはヨーロッパアルプスの山嶺に冷たい光を放つ氷河が見えている。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007年08月07日
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