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日本人の時代■第6回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第6回 画像はパ二ック状態にはいっているウォール街にある日本人の会社を映しだしている。 「どういう事だ、これは」 ケンは画面をくいいるように見つめる。 「どうだね、本日をきして、世界各地で日本人抹殺プランがいよいよ始動したんだ」 「なぜなんだ。ブキャナン。これは悪い冗談だろう。こんな事ありえるわけがない」 「残念ながら、事実だ。まあ事実をうけいれるまで時間がかかるだろうだがね」 ケンは頭をかかえ、肩をいからせて、画面をみつめつづけている。 「いいかね。アサガ。我々のプロポーザルを続ける。この日本人抹殺までは時間がかかるだろう。そして何人かは逃げる奴らがでてくる。さらにJVOに対するテロ活動を行なう奴らもでてくるだろう。いいかそいつらを見つけだす要員を我々は、現在確保しておきたいのだ。 抹殺プランが終了すれば、君に手術を施し、白色人種にみえるようにしてやろう」 広い肩はば、おそらくはアメリカンフットボールを学生時代にやっていただろう、そんな体つきをしたブキャナンはケンの肩に手をおき、ケンの顔をのぞき込む。 「いいかね。このスパイの候補者は何人もいる。それに我々情報ネ。トワークサービスに泣きすがり、どうにか助けてくれと言ってくる奴もいるだろう」 涙ぐみながら、ケンはブキャナンに叫ぶ。 「なぜ、俺を選んだ」「それは君のポテンシャルをコンピューターがはじきだしたのだ。最優秀だとね」 「くそっ、こんな事、国連がゆるすものか」 「ふふ、国連にもJVOは暗黙の了解を得ているよ。それに国連のバックアップを、我々情報ネットワークサービスが受けているとすれば、どうするね」 ケンは答えるべき言葉もない。 「それに、裏の国連と呼ばれる「世界犯罪連合」もGOサインを出しているのだ。彼らも日本ヤクザの海外流出をよく思ってはいないのでね。つまり、世界の権力機構の意見は一致しているんだ。日本人を抹殺せよ」 ブキャナンは深いマリンブルーの眼でケンを見ていた。 「ショックの連続で酷だね。少しは希望を与えてやろう。おい」 ブキャナンは情報サイボーグを呼んだ。情報サイボーグは右手の手のひらをひろげる。そこは急に液晶のモニターとなる。 このモニターにジュンの顔がうつっていた。 「ケン、私がわかる。ジュンよ」 「ジュンー」 ケンは情報サイボーグの手のひらにむかって叫んでいた。「君は死んだはずじゃなかったのか」「いえ、爆発の直前、情報サイボーグに肋けられたの」「今、どこにいるんだ」「わからないわ、ケン肋けて」「くそっ、博士はどうしたんだ」「わからないの」 「くそっ、君たち、ジュンを解放しろ。それにバルボア博士をどうしたんだ」 ブキャナンはケンの質問に答えずに言った。 『いいかね、ケン、君が気をうしなっている間に君の体に手術を施した。小さな爆弾だが、体の非常に効果的な部位にしかけてある」 「何だって」 「いずれにしても、君は我々の言う事を聞かざるをえんのだよ」 「意識を失なっていた間はそんなに長かったのか」 ’ 「我々はさらに予備処置として、君の恋人ジュンを確保している。君が命令に従わなければ、君が死ぬだけではない。同時に君の恋人ジュンも死ぬだろう。博士は我々の仕事に協力してもらっているといえばどうだね」 「くそっ、何んて奴らだ」 「いいかね。この日本人抹殺作業が終った後おこるのは権力闘争だ。その権力闘争に我々は参加できる実力を持っている。悪い事はいわん、我々を手伝うのだ」 「という事は、このプランを考え出した奴を殺す事もできるのか」 「可能性はある」 ケンはしばらく考えていたが、首肯した。 「わかった。君の命令にしたがおう」 ブキャナンは軽く、ケンの肩をたたき、握手を求めてきた。 「ありがとう、ケン」 が、ブキャナンはケンの心の中におこりつつある狂気と殺意に気づいていなかった。 ケンの眼には地球がまっ赤にそまっているように見えた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月06日
日本人の時代■第5回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第5回 ケン。アサガは深い眠りの中にいた。 悪夢だった。 日本全国にミサイルが雨あられと降りそそぎ、炎と化しているのだ。 父や母、妹ルミの姿がその紅蓮の炎の中に消えていく。彼らがケンの名前を呼んでいる。 思わず、叫び声をあげ、目がさめた。 不思議な風景が目の前に入ってきた。窓を通して地球が見えているのだ。 ベッドの側に男が立っていた。 「気がついたかね。ケン・アサガ」 「ここはどこだ。警察は」 「心配しなくてもいい。警察の件は我々が処置した。君が驚くのも無理はない。ここは宇宙空間だ。宇宙ステーション=ゼウスだ」 「警官はいないのか。それに私がなぜここに」 「言っただろう。君を保護したのだ。我々の役に立ってもらうためにね」 「君たちの役に立つだと、一体、何なのだ」 「ケン=アサガ、我々は君に一つのプロポーザルをおこなおう。これは君にとって、悪くはない提案だ。したがわない法はないと思う」 「それは私が決める事だ。君達は一体、何者なんだ」 「情報ネットワークの者だ。「ヘブンズ」とも呼ばれているがね。私はブキャナンと言う」「情報マフィアか」「そう呼ぶものもいる。この種の会社組織に対する人のとらえ方というものは種々なのだ。いいかね、ケン、君は日本人としてはかなり英語がしゃべれる。我々のエージェントになって我々のために働らかないか」 ケンは、提案の奇妙さに驚いた。「一体、どんな仕事をしろというんだ」「日本人を抹殺するための手助けさ」 ケンは自らの耳を疑う。 「冗談を言っているのか、君らは」 「冗談かどうか」 ブキャナンは時計を見た。そして片わらの二人の情報サイボーグに言った。 「おい、ケンにテレビを見せてやれ。ちょうどいい時間だ」 一人のサイボーグがTVのスイッチをONする。 アメリカン・ネットワーク=ニュースが写る。ケンがいつも見なれているコメンテーターが恐るべきニュースをつげていた。■『臨時ニュースを申しあげます。本日午前6時、アメリカ政府のスポークスマンは重大な発表を行ないました。 アメリカ合衆国を始め、ヨーロッパ各国、ロシアを含むユーラシアアジア圏その他54カ国によって「JVO条約」が発効されました。 「JVO」とは「日本消滅組織」であり、長年にわたり、秘密裏に条約会議がもたれていた模様です。 詳細は続報が人いり次第、レポートいたします……』(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月05日
日本人の時代■第4回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第4回消防車が、徽から続々とやってきて、放水していた。続いて救急車がやってくる。負傷者を担架で運んでいる。ケンはジュンと博士の姿がないかどうか、救急車の間を歩きまわっている。 やがて、二人の警官が、博士の秘書を連れて、ケンの方に歩いてきた。秘書がケンを指さす。 大男の方が、ケンに言う。 「ケン=アサガ、爆破事件の参考人として、署に来てもらおう」 「何を言っているんだ、僕は関係ないぞ」 やせた警官が、秘書に尋ねた。 「この男に間違いないかね、ミス=グリーン」 「ええ、この人です。よく、ジュンの所へ来ていた人です。この人が帰ったあと、爆発が……」 秘書は泣き崩れる。 「OK、ミス=グリーン。ありがとう」 大男の警官がいう。「とにかく、君の帰ったすぐあとで、バルボア研究所が爆破されたんだ、とにかく事情をきかせてもらおう」「僕は今、急いでるんだ」「いいか、日本人め、お前は容疑者なんだぞ」 やせた方の警官がいう。 「何を言ってるんだ。ジュンは僕の恋人だったんだぞ」 「うそよ、彼女はこの日本人の事をいやがっていたわ」ミス=グリーンはアサガを攻撃する。 ミス=‥グリーンが泣き叫んでいた。 「今日も、何かもめていたようだったわ、部屋から出てきた時、まっ青な顔をしていたもの」 「違う。僕はバルボア博士から大変な事を聞いただけだ」このミスグリーンは何をいいだすんだ。 「ほう、どんな大変な事かね」 「そ、それは」 「OK、とにかく、署に来てくれ、それからだ」 ケンは急に怒りがこみあげてきた。近づいてきた、やせた方の警官に足払いをかけていた。 「こいつ何をする。さからうつもりか」 電撃ショックがケンのみぞおちにはいる。太った方の電撃銃だ。 ケンは意識を失なった。 「いやはや、手をやかせるジャップだぜ」やせた警官が言う。 バルボア研究所は焼き崩れていた。 カリフォルニアの第54分署の前にワゴンが止まる。サイドにはINSとプリントされている。「INS」イコール「情報ネットワークサービス」である。 車から、金髪、碧眼のヤッピー風スーツをきちっと決めた男と、情報サイボーグが降りてきた。情報サイボーグの頭の上には金色のリングが浮んでいた。このリングは地球上空のサテライトから命令を受ける受信器だった。 が、その金色のリングが、天使のリングを想わせるところから、人々は情報サイボーグを「ヘブンズ」と呼んだ。天国に限りなく近い奴らである。 「ここが、ケン。アサガが収容されている第54分署です」 ヘブンズのフアットが言った。彼は黒いサングラスをかけている。彼の眼は情報アイとなり、人々の心を見通すことができるのだ。 ドアを開く。やせた警官が言った。「お前らは何者だ」 男は光輝くバッチを警官の前に附げる。男は偉高々に、警官に言った。 「いいか、我々は「情報ネットワーク」のものだ。バルボア研究所の爆発犯人としてケン=アサガをもらい受けにきた」 助手のフランが叫んでいた。やせた男の方だ。 「クレイモア保安官、奴らの思い通りにさせておいていいのですか」 大男の警官クレイモアはにかにがしい顔をしてフランに言った。「しかたがあるまい、フラン、奴らは大統領のバッジをもらっているんだ」「大統領のバッジですって」フランは驚く。「悪く思うなよ、フランとやら」「くそっ、情報マフィアめ」 フランは思わず口ばしっていた。「いいから、フラン、彼らにケン=アサガを渡してやれ」「しかし、まだ気を失なっていますが」「それでもけっこうだ、私達が世話をしよう」情報サイボーグの1人が言った。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月04日
日本人の時代■第3回山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/第3回彼女が部屋を出ていった後、ケンはバルボア博士に尋ねる。 「博士、日本人狩りの話は本当なんてすか」 「ケン、残念ながら事実だ。いや、もっと事態は悪いかもしれない」 「と言いますと」 「この音源は、私の研究所が宇宙空間に打上げているサテライトが偶然に録音したものだ。まあ、聞いてくれたまえ」 バルボアは録音音源のスイッチをいれる。二人の会話だった。■『それじゃ、君、6月1日を持ってプランを発動させることに、ほぼOKがでたんだね』『私の感触ではそうだ。ヨーロッパ連合の上層部のラインでもおおよそOKがでている」 『それで、アジア地域ではどんな感触なんだね』 『中国と韓国が、やや難色をしめしている。それに東南アジア各国も、もし、日本を占領するつもりなら、自国軍隊も参加させてほしいという事を裏ルートで言ってきている』 『で、イスラム国圏はどうだね』 『やや、むつかしいところだ。彼らは傍観するだろう。そして、もしなんらかの利益があるとするならば参加させてくれというに違いない』 『アフリカと中南米は』 『問題外だ。彼らは自国の事で手一杯だろう。が、旧宗主国の方からネジをまかせるから、そちら方面はたぶんOKだ』 『じゃ、日本人は、このプランが発動すると、世界中の孤児だという事がわかるわけか』 『そういう事だ。自分達が世界中からどれだけ嫌われていたかよくわかるわけだよ』 『それでAプランでいくのかね、Bプランでいくのかね』 『その辺はまだはっきりはしない。日本と同じ目にあうのではと思う国があるだろう。だから、当面は、穏便なAプランで行くだろう。時機を見て、Bプランにシフトさせればいいだろう』 『そういう事だな。とすればAプラン=占領プランのマップはどうなっている』『そう、ほばできつつある。これは第二次大戦を思わせるな』『つまりはあの時機にジャップ共をギャフンといわせておけばよかったんだよ、キーン』『おい、私の名前を出すな。盗聴されていたらどうするんだ』『すまん、ラインをもう切る』『OK、じゃ、また、あの場所で』■ 音源は途中でとぎれた。「こういう音源なんだ」 バルボアは機械の再生を切り、ケンの方を見た。ケンの体はこわばっている。「先生、これは悪い冗談でしょう」 ケンはようやく、これだけのフレーズを胸から押し出していた。「冗談だと言って下さいよ」 バルボアとジュンはとまどいの表情を見せている。「本当なんてすか」 ケンはひざをおとし、床の上に両手をついた。「なぜなんですか、なぜ日本が」「ケン、私は、このテープを聞いたあと、政府筋に探りをいれてみた。しかし、恐るべき事に、彼らはすべて、この件に関してはノーコメントと言った。さらに逆にその件をどこで知ったのかと聞かれた。ケン、日本抹殺プランの可能性はほぼ100%だ。これはトップシークレットだ」 「パパ、どうにかならないの。一国が抹殺されてしまうなんて」 「いいかね、ジュン、それにケンも聞いてほしい。君達もハイスクールで習ったと思うが、地球の人類発生後の歴史という物は、国の興亡史だ。いかなる国も永遠の生命を持つ事はできん。さらに過去に幾多の民族が地球上から消え去っている」 「しかし、先生、今は21世紀半ばなんですよ」 ケンがくぐもった声でいう。 「ケン、日本人は世界じゅうから嫌われたのだよ。アローガント(傲慢な)ジャップとしてな。それに現在の世界情勢が、噴罪の羊スケープゴーツ、を求めたんだよ。どこかの国が、世界じゅうのうらみを一身にうけて滅んでいくわけだ」 「この事を日本の領事館へ知らせます」 「無駄な事だと思う。が君の気の済むようにしたまえ」 「ジュン、気をつけてね」 ケンは、今、立っている大地が崩れおちそうな気がした。うそだろう。うそに違いない。そうあってほしい。彼は日本に住んでいる両親と妹の事を考えた。一体、この世の中は、世界は、、どうなってしまったんだ。 このどこまでも続く青空が作りもののハリボテの様にケンは感じた。 駐車場の車に乗り、研究所を出る。ハイウェイヘ出て、日本領事館へ行こうとした。 こんな事が許されてたまるものか。とにかく日本政府へ連絡してもらおう。しかし信じてもらえるだろうか。気がふれたとしか思われないかもしれない。 運転しているケンの耳に轟音が響いた。 何だ。ケンは車を駐車ラインヘ持っていく。車からおりて、後ろを見た。煙があがっていた。バルボア博士の研究所の方だ。再び轟音が響く。間違いなくバルボア博士の研究所だ。 ケンは車の流れに逆らって、センタフインを突き切って、逆方向に乗りかえた。研究所へ猛スピードでむかう。 研究所が燃えあがっている。建物の原形はとどめていない。 「ジュンー 博士!」 近くで車を止め、ケンは声を限りに叫んでいた。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所/日本人の時代山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月03日
日本人の時代■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第2回■2022年 5月 地球カルフォルニア「ケン、ケン、待ってよ」 ケン・アサガはジュンに呼びとめられる。カルフォルニア大学バークレー校のキャンパスである。ジュンはクラスメイトであるケン・アサガを追いかけていた。 ケンは日本の情報工学大学を卒業後、カルフォルニアにある現代情報工学の講座を受けるために留学していた。ケンは日本人離れした体格の持ち主であり、日系3世といっても通りそうだった。英会話能力においては、会話学校初まって以来の成績であり、担当教師からパーフェクト=ケンのあだ名をさずけられていた。 ジュン=バルボアはカルフォルニアクイーンに、18歳の時に選ばれた事のある才媛で、22歳の今は、バークレー初まって以来の情報戦略家と教授達から見なされていた。 息せききって、ジュンはケンの広い肩に追いついていた。 「ねえ、ケン、変なうわさがあるの」 「ヘー、うわさだって。ジュン、君独特の『まやかし理論』じゃないだろうね。残念ながら僕は今、リアクションテストの端子はつけてはいないぜ」 ケンはにこやかに答えていたが、ジュンの真剣な顔にどきりとする。「どんなうわささ。君の顔色からすると、大変な事のようだな」「日本人狩りが始まるっていうのよ」「おいおい、ジュン、それこそ悪いジョークだよ。今は第2次大戦前じゃないんだぜ。今は21世紀が初まったばかりだ……」 ケンの笑声もジュンの顔を見ると、ぴたりと止まる。 「悪いけどねえ、ケン、真剣に聞いてほしいの。私のパパの専門分野を知っているでしょう」 「ああ、確か、ジュンのパパ、つまり、バルボア博士のスペシャリティはコミュケーション技術だったね」 「そう、そのパパが、ぜひともあなたに会いたいというのよ」 ジュンの表情も真剣そのものだった。 「わかった。ジュン、バルボア博士にアポイントメントをとってくれないか」「oK、ケン、ちょっとまってね。今、電話をいれてみるわ。研究所にいるかもしれないわ」 ジュンはフォーンで話、しばらくしてから、ケンへ言った。 「いいわ、ちょうど研究所にいるわ。ぜひとも来てくれって、が言ってるわ」「じゃ、わかった。車をとりにいってくる。ここで待っててくれないか」 ケンはジュンをひろい、郊外にあるバルボア博士の研究所へ向かった。バルボア博士の研究所はそれ自体の外形が旧いタイプの電子計算機の形をしていた。高台にあり、ハイウェイの遠くからでもよく目立った。 ケンは駐車場に車を入れ、ジュンと共に、研究所にはいる。 玄関の所にバルボア博士が立っていた。すらりとした長身で、顔はなぜか、ギリシアの哲学者ソクラテスを思わせた。が彼はネゴシエターとしては一流で、政府にも軍にもかなりのコネクションを持っていた。 バルボア博士はケンと握手をして、言う。 「やあ、ケン、久しぶりだね。とゆっくり話をしたいところなんだが、ジュンから聞いてもらったと思うが、君に聞いてもらいたいものがあるんだ」 バルボアはあまりいい顔色はしていない。重大な事態がおこりつつあることがケンにも感じられた。 バルボアはケンとジュンを自分のプライベートな研究室に連れていった。 「君、すまんが、少し席をはずしてくれんか。それにしばらくの間、電話はとりっがないでくれたまえ」 秘書ミス=グリーンにそう言った。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所/日本人の時代 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月02日
日本人の時代(始源)第1回 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第1回 ある一人の男の「妄想」から、そのプランは生まれた。 男は世界の経済と政治状況における一国の役割を分析した。彼は、その国が存在しないと仮定して、計算を行った。 結果は、男の推論どおりであった。 現時点で、世界が陥っているエネルギー問題や、貿易の不均衡などの問題が、わずかながらでも、良い方向に向かうと推論された。 男は結果の研究レポートを、彼の研究所をバックアップしているコングロマリットに提出していた。 男の名前はオットー=ヒュルケナー博士。 コングロマリットの名前は「ラドクリフ企業」グループ。 そして、プランは「イエロープラン」と呼ばれた。 イエロープラン発動後、地球上に宗教戦争がおこり、「VE紀元」となった。VEとはバニッニュ・アースを意味する。■VE紀元103年 オメガステーション付近 ギイにとっては、初めてのロケット飛行だ。 ギイはコックピットにすわりこんで、目の前に並んでいるモニターに見とれている。 何んてきれいなんだろう。ギイが毎日見なれている風景とは何んと違っているんだろう。暗い空の中にきれいな光点が輝いていた。ギイは片わらにいる養母に尋ねる。 「ねえ、ママ、あの光点は何なの」 「ああ、あれかい。あの光は星なんだよ」 「星って何」 養母のクラーレンスはこの種の会話にはまだ慣れてはいない。うるさいガキなんだ。なぜ私が子供を所有しなければいけないんだ。彼女は管理局をうらむ。ギイは管理局が選び、彼女クラーレンスにおしつけてきた子供なのだ。 第二級アストロノーツ・クラーレンス・ハリディにとって、それは悪夢だった。が[優生保護法」にさからうわけにはいかない。もし、この子供ギイをいじめたりしたら、管理局によって第二級アストロノーツの位は剥脱され、あのいじましい仕事、ステーション内のカーゴトラック運転手に戻されるに決まっている。ああ、いやだ。クラーレンスは身ぶるいした。やれやれ、この子のごきげんでもとろうとするかい。 「あ、あれはねえ、ステーションの大きな奴さ」 「あの光点、すべてがそうなの」 「ああ、そうさ。すべてが星なんだよ」 オメガステーションーの女傑クラーレンスさまが子供の養成とはね。管理局もどうかしているんじゃないか。 『おIい、クラーレンス、どうだい、子育ての方は』 コックピットのモニターに、仲間のハロルドの声が入ってきた。 ちえっ、ハロルドの奴、となりに船を持ってきたね。どうせ、今日のリゲルの酒場は、私の子育て物語で、皆が笑うだろうさ。それも飛び切りの大笑い。 『おだまり、ハロルド、ふざけると容赦しないよ。このクルーザーには小型ミサイルだって積んでいるんだからね』 『おやおや、おったまげた、母親だぜ、おいおい、子供がかわいそうだぜ、クラーレンスー』、 あきらかにあざけりの調子が、言葉のはしばしにあらわれている。 『本当にむこうにいかないと、こわいよ。ハロルド』 『おやおや、すごい怒りだ、クラーレンス。今日はリゲルの酒場の皆からプレゼントを持ってきたんだけどなあ』 『プレゼントだって、何だい、そりゃ』 『つつしんでさしあげます。クラーレンス嬢。皆からのプレゼント、ニックネームを決めたんだ。肝っ玉おっかあ、クラーレンスってな』『ハロルド、お待ち、なぐってやる』『それじゃなあ、クラーレンス』『お待ちったら』 ハロルドの高速艇は、それこそ、すっとんで逃げさった。『ハロルド、今度、リゲルの酒場であったらえらい目にあわせるからね』 クラーレンスは声をかぎりにマイクにむかってさけぶ。が、ハロルドの艇は、モニターから消えた。 「ああ、私しゃ、とうとう、リゲルの酒場の笑い者か」 ギイは、二人の会話をだまって不思議そうに聞いていた。それからクラーレンスに恐る恐る尋ねる。 「ねえ、肝っ玉って何」 「おだまり、ギイ。あんたは覚えなくていい言葉さ」 ギイは養母の怒りに思わず首を縮める。クラーレンスは反省する。しまった。もし彼女がいじめられたなんて報告されたら。 クラーレンスは急に笑顔を作る。 「さあ、ギイ、モニターを見ててごらんよ。気にいるものがあるかも知れないよ」 ギイはクラーレンスの表情の変化にとまどう。 ギイとクラーレンスの乗った船はやがて、「問題の場所」を通過する。 先にギイが気づく。 「ねえ、ママ、あのステーションは何なの。他のステーションとこんなに離れていて。誰が住んでいるの」 「ああ、あれかい、ろくでなしどもが住んでいやがるのさ」 クラーレンスははきすてるように言った。 「ろくでなしって」 ギイはかぼそい首をかしげる。3歳のギイは金髪がかわいい。 「いいかい、ギイ、覚えておいで。あのステーションに住んでいるやつらは、人類じゃないんだよ」 「宇宙人なの?」 ギイは不思議な物を見たかの様に尋ねる。 「それよりひどい奴らさ。日本人さ」 クラーレンスは、その辺につばをはきだしそうな感じだった。 「日本人って何なの、それ」 「大昔、地球に人が住んでいた時、経済大国とか何とか言っていばやくさっていた奴らさ」 クラーレンスの顔は醜くくゆがんでいた。 「なぜ、地球に住んでいたのに、地球人じゃなくなったの」 「大昔に、地球連邦からはじきだされたのさ。全地球人の嫌われ者がなったのさマねえヽママ、日本ってところ、地球の上に残っているの」「ヘっ、そんなところ、もうありはしない」「なくなっちゃったの」「ああ、連邦軍が占領して、バラバラにしちゃったのさ」「へえ、かわいそうな人達だね」「かわいそう ギイ、その言葉を使う相手を間違っているよ」 クラーレンスは思う。今、一番かわいそうなのは私さ。 が、クラーレンスはかわいそうな人間ではなかった。 この少女ギイ=クラーレンスはやがて、地球の救世主と呼ばれる事になる。 そして、養母クラーレンスも、地球の歴史に大きな足跡を残すのだ。(続く)1988年作品 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所/日本人の時代 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009年08月01日
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