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. ご訪問くださり、誠に有り難うございます *------*------*------*------* ★ うつろい ★ ひと雨ごとに 温かくなり ひと雨ごとに 冬 とおく ひと雨ごとに 暖かくなり 春は とおく ひと雨ごとに 冷え込んで 秋 ふかく ひと雨ごとに 寒くなり 雨は 雪に 恋は とおく 想いは 胸に By.星原女瑪.(2016.9.01.)2019.1.31 (注意:詩の転載を禁ずる:シェアはご遠慮下さい) *------*------*------*------* ランキングに参加しています。ポチお願い致します 小説もこちらにお願い致します。 応援有り難うございました *------*------*------*------* ★ *★ ★ ★ ★ ★ ★ ★【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きの掲載が遅れています。 執筆中ですので、もう少しお待ち下さい...🙇 *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.31
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. ご訪問くださり、誠に有り難うございます *------*------*------*------* ★ 糧 ★ 思い出の引き出しに 煌めく箱 開けたら それは 一枚の美しい絵画 あの遠い日 あの時が 輝いている 全てが至福に満ち 不安など消え失せていた 人は たった一日の思い出に 励まされ 癒され そう 私は生きられる たとえ細く乾いた道でも たとえ 覚束ない足取りでも 私は きっと 歩いてゆける あの遠い日が この胸に 輝いている By.星原女瑪...(2018.7.19.作)2019.1.27. (注意:転載を禁ずる・シェアーはご遠慮下さい) *------*------*------*------* ランキングに参加しています。ポチお願い致します 小説もこちらにお願い致します。 応援有り難うございました *------*------*------*------* 詩【糧】は、 推敲し直し書き換えました。 肩症炎が酷く、辛いです。 原因が分からず、四苦八苦している状態です。 何とか軽くなりましたら、 小説{心ゆくまで}を、掲載したいと願っています。 皆様。 大寒の候、ご自愛ください。 LAME39.2019.2.27. *------*------*------*------* ★ *★ ★ ★ ★ ★ ★ ★【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きの掲載が遅れています。 執筆中ですので、もう少しお待ち下さい...🙇 *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.27
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. ご訪問下さり、有り難うございます *------*------*------* ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました *------*------*------*------** ★ 薄氷粧 ★ 薄氷粧 割ってごらん 赤い魚が見えるから 凍える指で捕まえて 午後の陽射しに 翳してごらん 生きているなら 跳ねるから 薄氷粧 割ってごらん 水があったら 泳いでごらん 赤い魚が住んでたら 溺れたふりして 呼んでごらん 聞こえていたら 来てくれるから 大きな声で 呼んでごらん 少しは躰があたたまるから 見詰めていないで 割ってごらん 参照・薄氷粧(うすらいしょう) By.星原女瑪(2013.11.01)2019.1.17. (注意・文章と写真の転載を禁ずる) 105歳【小倉遊亀】 「赤富士」 版画6号 この作品は、氷(友情...)と赤い金魚(愛情...)が主題です。 これは、恋愛と友情の機微と共に人生を描いています。 By.星原女瑪.2019.1.17. *------*------*------*------* ★ *★ ★ ★ ★ ★ ★ ★【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きの掲載が遅れています。 執筆中ですので、少しお待ち下さい...🙇 ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンスの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 ★心ゆくまで★. 【最終章】 【最終章】(6) 柿谷貴次は運転席で再び額の汗を拭ってから、車を出した。 途中フィストフード店でコーラとホットドッグを買い求め、 『ああ腹が減った』 と春伽に笑いかけた。 駐車場でアッという間に平らげる貴次を見詰めて、 『何か気の利かない夕食ね...。貴次さん、ごめんなさい』 春伽が丁重に謝った。 『嫌だなあ。腹が減っていたら、何だって旨いさ。 心配なら要らないからね』貴次は快活に答えて、 店舗までゴミを捨てに行って来た。 港に車を止めると、クラブハウスに灯りが見えた。 クルーザーの鍵を受け取ると、 フロントの時計は既に八時半を廻っていた。 沖に出てから、貴次は不要な物を捨て、 必要な物だけを納めて道具を片付けた。それから船室に入ると、 春伽が俯いて泪していた。 『春伽姉さん大丈夫かい...。どうしたんだよ、 春伽姉さんが泣くなんて珍しいよね』 『ねえ貴次さん、私がいなくなっても泣いたりしないでね。 私は何時か、きっと会いに来るから、強く生きてね』 春香は真っ直ぐに貴次を見ながら、振り絞る様な声で話し掛けた。 その頬に、涙が零れ落ちていた。 『会うって......。ほら、僕は此処に居るじゃないか。 変な事を言って、春伽姉さん疲れたんじゃないか...』 貴次が身を乗り出して覗き込むと、 『変よね......』 春伽はひとこと呟いた。 『何か僕に出来ることが有ったら、言ってよ。 遠慮する仲でもないんだから、何でも言ってくれよ』 『ねえ貴ちゃん、外は晴れたのかしら......。 お星様は見えそうもないかしら』 柿谷春伽は頬の涙を拭いながら、訊いた。 『雨は、お経さんを上げている時に上がったんだ。 墓地で降られていたら、堪らなかったよ。憶えてないのかい......。 『まあ、それはどうでもいいさ。外は晴れ上がって、星が綺麗だよ』 『まあ、そうだったの。貴ちゃん、デッキに上がりましょうか』 『少しだけ寒いけど、気持ちが良いよ。ほら、おいでよ』 柿谷貴次が手招きすると、 春伽は彼に引かれれる様にデッキに出た。 (7)へ【続く】 2018.12.26.星原女瑪.【最終章】(5)翌日は秋雨が降り出しそうな、重い曇り空だった。柿谷家の菩提寺に遺体を映す頃には、春伽は棺に納められていた。誰もいないのを見計らい、貴次は棺に近づき、ペットボトルを差し入れた。『貴次さん、来てね。待っているわ』瞳を見開いた姉に、『大丈夫だよ、安心してくれ』そっと呟いてから、棺を離れた。『そう......。そんな事が有ったのね。 それで、それから何が有ったのか話して下さい』沙織は思わず手を取り、春伽の顔を見た。『あれから十年が経つわ。私は25歳の侭ですけどね』『まあ、私は35歳だから同い歳ね』沙織の言葉に笑みを浮かべて頷くと、柿谷春伽は再び話し始めた。土葬が済んで参列者や親族が帰途に就いたのは、四時近かった。柿谷貴次は墓地を早めに離れ、近くの喫茶店で珈琲を飲んでいた。五時を過ぎると沈んだ秋の陽と共に、夕暮れが色濃く迫って来た。時計の針が五時半になるのを見届けて、柿谷貴次は墓地に向かった。棺が露わになると蓋の上に降りて、ガラス越しに春伽の顔を覗き込んだ。そこには、目を開けて微笑んでいる姉の顔があった。2018.10.13.貴次は釘抜を使い、急いで蓋をこじ開けた。『春姉さん、大丈夫かい』『大丈夫よ。少し息苦しかったけれど、 高次さんが早く開けてくれたから助かったわ...。私ね、歩けそうよ』『そう、それは助かるよ。上に登って手を出すから上がってみて』『分かったわ。でもね、お洋服が...これじゃあ可笑しいわ』『大丈夫だよ、用意して来た。簡単に切れる様にワンピースにしたんだ。 いいよね』『貴ちゃん、何から何まで有り難う』柿谷貴次は姉を伴い洗い場で泥を落とした。それからトランクに有った革靴に履き替えた。そして、綺麗になった道具をトランクに収めた。『春姉さん、取り敢えず逗子のマリーナへ行くよ』『そう、分かったわ』春伽は軽快に答えて、助手席に乗り込んだ。バニラ色にクローバーを散らしたワンピースが、よく似合っていた。【最終章】(4)柿谷貴次が不思議な現象に遭遇したのは、通夜の晩のことだった。自宅で葬儀をする事となり、春伽は10畳の和室に横たえられていた。眠気も来ず、とても寝てなどいられない心境で、柿谷貴次は布団の傍らに座っていた。夜中の2時を過ぎた頃だった。『貴次さん、貴次さん』自分の名を呼ぶ声と一緒に膝を叩かれて、柿谷貴次は慌てて首を振った。いつの間に眠っていたのか、見ると、姉の春伽が手を伸ばして膝を叩いていた。『春姉さん、どうして......春姉さん、生きていたのかい。 一体どうしたんだ......』貴次が躊躇っていると、『私の声が聴こえるのね』『ああ、良く聞こえるよ』言ってから、柿谷貴次はあたりを見まわした。幸い人気は無く、静まり返っていた。『春姉さん、もっと声を落とさないと誰かに聞こえてしまうよ』『そうね、分かったわ』貴次の膝に載せられた手には、温もりが有った。『生き返ったのか...。医者を呼ぼうか』迷いの籠った声で呟くと、『無駄よ。たぶん私は死んだのよ...。』寂し気な春伽の声がした。そして、『でも、私の魂は生きているのよ。だから、死にきれずにいるの。 貴次さん。助けて欲しいの、何とかしてほしいの』姉の春伽は、悲痛な声を漏らした。『明日は墓地に埋葬される。僕は皆に知られない様に残って、 春姉さんを掘り起こすよ』『そう...。でも、その後はどうなるのかしら』『分からないさ。僕にだって、見当もつかないよ』その時、足音が近づいて来た。春伽の手が布団に隠れ、会話は止んだ。顔を上げると、憔悴しきった母が立っていた。『あら貴次さん、お疲れ様ね。私が変わるから、貴女は休みなさい』『お母さん。それでは、また来ますのでお願いします』貴次は居場所を失くして、仕方なく部屋に引き取った。少しの間ベッドに腰かけて考えていたが、次の瞬間、部屋を抜け出した。そして柿谷貴次は、慌てた様子で車に飛び乗った。逗子のハーバーでヨットに乗り込むと、柿谷貴次は明かりを灯した。それから、思い付く道具を、車のトランクに積み込んだ。姉の春伽の言うことが嘘の様には思えず、困惑しながらも、貴次は準備だけはしておこうと考えたのだった。【最終章】(3) 『沙織さん、初めまして。柿谷春伽です。 十年前に交通事故で命を落としましたが、 貴次さんのお陰で、こうして楽しく暮らしています。 時々この部屋に遊びに来ては貴女の事を聞いていました。 沙織さん、宜しくお願いしますね』 『柿谷さん、どうして......』 沙織が呆気に取られていると、 『貴次さん、私からお話してもいいかしら』 『ああ、春姉さんから話して貰えると助かるよ』 柿谷貴次の言葉に頷くと、 柿谷春伽は沙織の隣に座って話し始めた。 柿谷貴次が大学三年の、秋のある夜の事だった。 姉の柿谷春伽は、女友達のバースデーパーティーに出席し、 ホテルで楽しいひと時を過ごした。 その後22時ごろに、パーティーを退席した。 とても和やかな想いを胸にタクシーを拾をうと、 山下公園側に向かって、横断歩道を歩き始めた。 その時だった、急ブレーキと悲鳴が轟いた。 柿谷家に事故の一報が入ったのは、深夜0時近くの事だった。 電話に出た手伝いの明美は、手を震わせながら二階へ駆け上がった。 ドアのノックに貴次が出てみると、蒼ざめた顔の明美が立っていた。 『明美ちゃん、どうかしたのかい...』 『大変なんです。大変な......』 明美の声は、乾いたように掠れていた。 『どうしたの、いったい何か有ったのかい。落ち着いて話してくれよ』 『はい』 手伝いの明美は唾を飲み込むと、 『春伽お嬢様が車に撥ねられて、病院へ運ばれたそうです。 ただ今、警察から電話が有りました。奥様や旦那様にも、 知らせましょうか......』 『何てことだ。僕は一足先に病院へ向かうから、 父達は、そっと起こしてやってくれ。 それと、貴敬兄さんは出張でアメリカに行っているから、 僕が後で連絡しておくからと、父達に伝えてくれるね』 『はい、分かりました。どうか、お気を付けて行ってらっしゃいませ』 貴次は明美の声を背中で聴きながら、 上着を手に取り、慌てて部屋を後にした。 病室に入ると、医師と看護婦が二人、神妙な面持ちで立っていた。 『柿谷様ですね......』 『はい。弟の貴次です』 『誠に残念ですが、先ほど息を引き取られました。 23時57分の御臨終でした。お悔やみ申し上げます』 医師と共に、二人が一礼した。 『死因は何だったのですか』 『全身打撲と、腹部の出血が酷くて...。手は尽くしたのですが、 間に合わず失血死でした。もう少し早く運ばれていたら。 そう思うと...、大変に残念です】 柿谷家にとって一人娘の春伽の死は、大きな打撃だった。 遺体が実家に運ばれるまで、貴次は遺体の傍らで泪し続けた。 結局、春伽を轢き逃げした車も犯人も、 見つからぬ仕舞いであった。 (4)へ続く【最終章】(2)『沙織さん、ようこそ。お待ちしていました』柿谷は明るい声で迎え入れた。『こちらに掛けてください』マスタード色の革張りの応接セットに、案内された。柿谷の部屋は黒を基調に煙草色の配色で、落ち着けそうな雰囲気だった。『僕はビールを飲みますが、沙織さんも何か如何ですか』『そうね、トマトジュースでも頂こうかしら』『好かった。美味しいトマトジュースが冷えていますよ』柿谷はそう言って、すぐに運んで来てから、沙織のはす向かいに腰を下ろした。『あと五分もしたら沙織さんに紹介したい人が来るので、是非とも逢ってください』『えっ......。どなたか来るのですか』『はい、楽しみにお待ちください』『きょうは午後じゅう、モネの絵を眺めていたのよ』『そうでしたか、モネの絵は好いですよね』『ええ、大好きです』『ああ、仕事の後のビールは旨いです』柿谷は、ドイツ製らしいジョッキを傾けた。間もなく部屋をノックする音がして、背の高い細身の女性が入って来た。柿谷は急いで立ち上がると、『やあ、こんばんは』と声を掛けてから、沙織の横に立った。『春伽姉さん、こちらが奥村沙織さんです』『沙織さん、僕の姉の春伽です』『あの......。まさか亡くなった筈の、お姉さまですか』奥村沙織は、あまりにも突然な事に驚き、言葉に詰まった。 2018.7.4.【最終章】(1)四月半ばの丘には遅ればせのチューリップが咲き残り、爽やかな風が吹いていた。夕方まで仕事が有るからと、柿谷は朝の五時前に出かけて行った。夕食は済ませて帰るからと言っていたから、今夜の話は大事なことだろうかと、奥村沙織は午後の窓辺でふと考えた。バロックを流しモネの画集を眺めていると、日暮れの迫るのも忘れる程に絵画の世界に引き込まれて行った。夕暮れた丘で軽い散歩を済ませると、沙織は七時前にシャワーを浴びた。部屋のベッドで寛いでいるところへ、柿谷から電話が入った。『申し訳ない。今夜の約束を九時に延ばしていいでしょうか』『大変そうですね。九時に伺いますね。 呉れ呉れも、お気を付けてくださいね。それでは』『はい、有り難うございます。それでは』ということで電話は切れた。柿谷貴次が帰宅したのは、九時過ぎだった。彼はシャワーを済ませると、二階へ上がって行った。奥村沙織はドレッサーの前に座り、自分の姿を眺めて見た。肩先に伸びた髪が軽くカールして、薄化粧にピンク色の唇をした顔が浮かんでいた。これが今の私......。あの朝に化粧と髪を整えたままの容姿で、鏡に映っている自分が不思議だった。やや経ってパンパンと頬を叩くと、沙織は立ち上がった。二階の踊り場に立つと、その先にはまだ階段が続いていた。覗くと、幅広の廊下が延びていた。そして三枚目のドアが開いていて、明かりが零れていた。柿谷の配慮を感じながら、奥村沙織はドアをノックした。【続く】2018.6.01. *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.17
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(注意:詩の転載を禁ずる:シェアはご遠慮下さい) ヒロ.ヤマガタ作.{サンライズ} ★★★ 最近は再掲が多くなり、 大変に恐縮しております。 新しい詩を産み出すことは、 詩を完成させるのは、 実に難しいです。 何度も推敲を繰り返し、出来上がります。 それでも満足な詩は、 なかなか書けません。 多分、私の力不足なのでしょう。 詩を作品として放つことには、 勇気が要ります。 詩人、萩原朔太郎は、 【詩は、言葉以上の言葉】 と言っています。 その様なものが、簡単に出来る筈もなく、 もちろん作為では出来ません。 拙い詩ですが、 読んで下さり、有り難うございました。 By.星原女瑪.(2016.1.29)2019.1.11. *★ ★ ★ ★ ★ ★ ★【 お知らせ 】 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きの掲載が遅れています。 執筆中ですので、少しお待ち下さい...🙇 ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンスの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 ★心ゆくまで★. 【最終章】 【最終章】(6) 柿谷貴次は運転席で再び額の汗を拭ってから、車を出した。 途中フィストフード店でコーラとホットドッグを買い求め、 『ああ腹が減った』 と春伽に笑いかけた。 駐車場でアッという間に平らげる貴次を見詰めて、 『何か気の利かない夕食ね...。貴次さん、ごめんなさい』 春伽が丁重に謝った。 『嫌だなあ。腹が減っていたら、何だって旨いさ。 心配なら要らないからね』貴次は快活に答えて、 店舗までゴミを捨てに行って来た。 港に車を止めると、クラブハウスに灯りが見えた。 クルーザーの鍵を受け取ると、 フロントの時計は既に八時半を廻っていた。 沖に出てから、貴次は不要な物を捨て、 必要な物だけを納めて道具を片付けた。それから船室に入ると、 春伽が俯いて泪していた。 『春伽姉さん大丈夫かい...。どうしたんだよ、 春伽姉さんが泣くなんて珍しいよね』 『ねえ貴次さん、私がいなくなっても泣いたりしないでね。 私は何時か、きっと会いに来るから、強く生きてね』 春香は真っ直ぐに貴次を見ながら、振り絞る様な声で話し掛けた。 その頬に、涙が零れ落ちていた。 『会うって......。ほら、僕は此処に居るじゃないか。 変な事を言って、春伽姉さん疲れたんじゃないか...』 貴次が身を乗り出して覗き込むと、 『変よね......』 春伽はひとこと呟いた。 『何か僕に出来ることが有ったら、言ってよ。 遠慮する仲でもないんだから、何でも言ってくれよ』 『ねえ貴ちゃん、外は晴れたのかしら......。 お星様は見えそうもないかしら』 柿谷春伽は頬の涙を拭いながら、訊いた。 『雨は、お経さんを上げている時に上がったんだ。 墓地で降られていたら、堪らなかったよ。憶えてないのかい......。 『まあ、それはどうでもいいさ。外は晴れ上がって、星が綺麗だよ』 『まあ、そうだったの。貴ちゃん、デッキに上がりましょうか』 『少しだけ寒いけど、気持ちが良いよ。ほら、おいでよ』 柿谷貴次が手招きすると、 春伽は彼に引かれれる様にデッキに出た。 (7)へ【続く】 2018.12.26.星原女瑪.【最終章】(5)翌日は秋雨が降り出しそうな、重い曇り空だった。柿谷家の菩提寺に遺体を映す頃には、春伽は棺に納められていた。誰もいないのを見計らい、貴次は棺に近づき、ペットボトルを差し入れた。『貴次さん、来てね。待っているわ』瞳を見開いた姉に、『大丈夫だよ、安心してくれ』そっと呟いてから、棺を離れた。『そう......。そんな事が有ったのね。 それで、それから何が有ったのか話して下さい』沙織は思わず手を取り、春伽の顔を見た。『あれから十年が経つわ。私は25歳の侭ですけどね』『まあ、私は35歳だから同い歳ね』沙織の言葉に笑みを浮かべて頷くと、柿谷春伽は再び話し始めた。土葬が済んで参列者や親族が帰途に就いたのは、四時近かった。柿谷貴次は墓地を早めに離れ、近くの喫茶店で珈琲を飲んでいた。五時を過ぎると沈んだ秋の陽と共に、夕暮れが色濃く迫って来た。時計の針が五時半になるのを見届けて、柿谷貴次は墓地に向かった。棺が露わになると蓋の上に降りて、ガラス越しに春伽の顔を覗き込んだ。そこには、目を開けて微笑んでいる姉の顔があった。2018.10.13.貴次は釘抜を使い、急いで蓋をこじ開けた。『春姉さん、大丈夫かい』『大丈夫よ。少し息苦しかったけれど、 高次さんが早く開けてくれたから助かったわ...。私ね、歩けそうよ』『そう、それは助かるよ。上に登って手を出すから上がってみて』『分かったわ。でもね、お洋服が...これじゃあ可笑しいわ』『大丈夫だよ、用意して来た。簡単に切れる様にワンピースにしたんだ。 いいよね』『貴ちゃん、何から何まで有り難う』柿谷貴次は姉を伴い洗い場で泥を落とした。それからトランクに有った革靴に履き替えた。そして、綺麗になった道具をトランクに収めた。『春姉さん、取り敢えず逗子のマリーナへ行くよ』『そう、分かったわ』春伽は軽快に答えて、助手席に乗り込んだ。バニラ色にクローバーを散らしたワンピースが、よく似合っていた。【最終章】(4)柿谷貴次が不思議な現象に遭遇したのは、通夜の晩のことだった。自宅で葬儀をする事となり、春伽は10畳の和室に横たえられていた。眠気も来ず、とても寝てなどいられない心境で、柿谷貴次は布団の傍らに座っていた。夜中の2時を過ぎた頃だった。『貴次さん、貴次さん』自分の名を呼ぶ声と一緒に膝を叩かれて、柿谷貴次は慌てて首を振った。いつの間に眠っていたのか、見ると、姉の春伽が手を伸ばして膝を叩いていた。『春姉さん、どうして......春姉さん、生きていたのかい。 一体どうしたんだ......』貴次が躊躇っていると、『私の声が聴こえるのね』『ああ、良く聞こえるよ』言ってから、柿谷貴次はあたりを見まわした。幸い人気は無く、静まり返っていた。『春姉さん、もっと声を落とさないと誰かに聞こえてしまうよ』『そうね、分かったわ』貴次の膝に載せられた手には、温もりが有った。『生き返ったのか...。医者を呼ぼうか』迷いの籠った声で呟くと、『無駄よ。たぶん私は死んだのよ...。』寂し気な春伽の声がした。そして、『でも、私の魂は生きているのよ。だから、死にきれずにいるの。 貴次さん。助けて欲しいの、何とかしてほしいの』姉の春伽は、悲痛な声を漏らした。『明日は墓地に埋葬される。僕は皆に知られない様に残って、 春姉さんを掘り起こすよ』『そう...。でも、その後はどうなるのかしら』『分からないさ。僕にだって、見当もつかないよ』その時、足音が近づいて来た。春伽の手が布団に隠れ、会話は止んだ。顔を上げると、憔悴しきった母が立っていた。『あら貴次さん、お疲れ様ね。私が変わるから、貴女は休みなさい』『お母さん。それでは、また来ますのでお願いします』貴次は居場所を失くして、仕方なく部屋に引き取った。少しの間ベッドに腰かけて考えていたが、次の瞬間、部屋を抜け出した。そして柿谷貴次は、慌てた様子で車に飛び乗った。逗子のハーバーでヨットに乗り込むと、柿谷貴次は明かりを灯した。それから、思い付く道具を、車のトランクに積み込んだ。姉の春伽の言うことが嘘の様には思えず、困惑しながらも、貴次は準備だけはしておこうと考えたのだった。【最終章】(3) 『沙織さん、初めまして。柿谷春伽です。 十年前に交通事故で命を落としましたが、 貴次さんのお陰で、こうして楽しく暮らしています。 時々この部屋に遊びに来ては貴女の事を聞いていました。 沙織さん、宜しくお願いしますね』 『柿谷さん、どうして......』 沙織が呆気に取られていると、 『貴次さん、私からお話してもいいかしら』 『ああ、春姉さんから話して貰えると助かるよ』 柿谷貴次の言葉に頷くと、 柿谷春伽は沙織の隣に座って話し始めた。 柿谷貴次が大学三年の、秋のある夜の事だった。 姉の柿谷春伽は、女友達のバースデーパーティーに出席し、 ホテルで楽しいひと時を過ごした。 その後22時ごろに、パーティーを退席した。 とても和やかな想いを胸にタクシーを拾をうと、 山下公園側に向かって、横断歩道を歩き始めた。 その時だった、急ブレーキと悲鳴が轟いた。 柿谷家に事故の一報が入ったのは、深夜0時近くの事だった。 電話に出た手伝いの明美は、手を震わせながら二階へ駆け上がった。 ドアのノックに貴次が出てみると、蒼ざめた顔の明美が立っていた。 『明美ちゃん、どうかしたのかい...』 『大変なんです。大変な......』 明美の声は、乾いたように掠れていた。 『どうしたの、いったい何か有ったのかい。落ち着いて話してくれよ』 『はい』 手伝いの明美は唾を飲み込むと、 『春伽お嬢様が車に撥ねられて、病院へ運ばれたそうです。 ただ今、警察から電話が有りました。奥様や旦那様にも、 知らせましょうか......』 『何てことだ。僕は一足先に病院へ向かうから、 父達は、そっと起こしてやってくれ。 それと、貴敬兄さんは出張でアメリカに行っているから、 僕が後で連絡しておくからと、父達に伝えてくれるね』 『はい、分かりました。どうか、お気を付けて行ってらっしゃいませ』 貴次は明美の声を背中で聴きながら、 上着を手に取り、慌てて部屋を後にした。 病室に入ると、医師と看護婦が二人、神妙な面持ちで立っていた。 『柿谷様ですね......』 『はい。弟の貴次です』 『誠に残念ですが、先ほど息を引き取られました。 23時57分の御臨終でした。お悔やみ申し上げます』 医師と共に、二人が一礼した。 『死因は何だったのですか』 『全身打撲と、腹部の出血が酷くて...。手は尽くしたのですが、 間に合わず失血死でした。もう少し早く運ばれていたら。 そう思うと...、大変に残念です】 柿谷家にとって一人娘の春伽の死は、大きな打撃だった。 遺体が実家に運ばれるまで、貴次は遺体の傍らで泪し続けた。 結局、春伽を轢き逃げした車も犯人も、 見つからぬ仕舞いであった。 (4)へ続く【最終章】(2)『沙織さん、ようこそ。お待ちしていました』柿谷は明るい声で迎え入れた。『こちらに掛けてください』マスタード色の革張りの応接セットに、案内された。柿谷の部屋は黒を基調に煙草色の配色で、落ち着けそうな雰囲気だった。『僕はビールを飲みますが、沙織さんも何か如何ですか』『そうね、トマトジュースでも頂こうかしら』『好かった。美味しいトマトジュースが冷えていますよ』柿谷はそう言って、すぐに運んで来てから、沙織のはす向かいに腰を下ろした。『あと五分もしたら沙織さんに紹介したい人が来るので、是非とも逢ってください』『えっ......。どなたか来るのですか』『はい、楽しみにお待ちください』『きょうは午後じゅう、モネの絵を眺めていたのよ』『そうでしたか、モネの絵は好いですよね』『ええ、大好きです』『ああ、仕事の後のビールは旨いです』柿谷は、ドイツ製らしいジョッキを傾けた。間もなく部屋をノックする音がして、背の高い細身の女性が入って来た。柿谷は急いで立ち上がると、『やあ、こんばんは』と声を掛けてから、沙織の横に立った。『春伽姉さん、こちらが奥村沙織さんです』『沙織さん、僕の姉の春伽です』『あの......。まさか亡くなった筈の、お姉さまですか』奥村沙織は、あまりにも突然な事に驚き、言葉に詰まった。 2018.7.4.【最終章】(1)四月半ばの丘には遅ればせのチューリップが咲き残り、爽やかな風が吹いていた。夕方まで仕事が有るからと、柿谷は朝の五時前に出かけて行った。夕食は済ませて帰るからと言っていたから、今夜の話は大事なことだろうかと、奥村沙織は午後の窓辺でふと考えた。バロックを流しモネの画集を眺めていると、日暮れの迫るのも忘れる程に絵画の世界に引き込まれて行った。夕暮れた丘で軽い散歩を済ませると、沙織は七時前にシャワーを浴びた。部屋のベッドで寛いでいるところへ、柿谷から電話が入った。『申し訳ない。今夜の約束を九時に延ばしていいでしょうか』『大変そうですね。九時に伺いますね。 呉れ呉れも、お気を付けてくださいね。それでは』『はい、有り難うございます。それでは』ということで電話は切れた。柿谷貴次が帰宅したのは、九時過ぎだった。彼はシャワーを済ませると、二階へ上がって行った。奥村沙織はドレッサーの前に座り、自分の姿を眺めて見た。肩先に伸びた髪が軽くカールして、薄化粧にピンク色の唇をした顔が浮かんでいた。これが今の私......。あの朝に化粧と髪を整えたままの容姿で、鏡に映っている自分が不思議だった。やや経ってパンパンと頬を叩くと、沙織は立ち上がった。二階の踊り場に立つと、その先にはまだ階段が続いていた。覗くと、幅広の廊下が延びていた。そして三枚目のドアが開いていて、明かりが零れていた。柿谷の配慮を感じながら、奥村沙織はドアをノックした。【続く】2018.6.01. *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.11
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. 🎍 謹賀新年 🎍 明けましておめでとうございます。 本年も、宜しくお願い致します。 皆様の御多幸を、心より願っています。 この詩を掲載するのには、 時期が少し早いですね。 しかし初春と言う事でもあるので、 敢えて掲載しました。 星原女瑪が、気に入っている作品です。 ご一読いただけましたら、幸いです。 LAME39(2019.1.04) ★ あけぼの ★ ひと滴が 雪解けの嶺より 零れ落ち また ひと滴が 零れ落ち 嶺の谷間に 細やかな流れが 春の音色を奏でる 鹿は その匂いに誘われ 栗鼠は その調べに誘われ 乾きを癒す 獣たちよ 君らは 春の訪れを 感受する 幽弦に 緑が芽吹き 降り注ぐ雨は 炭色の里に 彩りをもたらす ああ 春よ たおやかで 強き春よ その源は 零れ落ちた ひと滴 参照= ひと滴(ひとしずく)・細やか(こまやか)・栗鼠(りす)・嶺(みね) By.星原女瑪(2015.3.26)2019.1.04. (注意・詩の転載を禁ずる;シェアはご遠慮下さい) 西尾利明・富嶽 赤富士.日本画・ * *------*------*------*------* ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました *------*------*------*------*🙇 お知らせ 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きは、もう少しお待ち下さい。~🙇. * ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンスの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 ★心ゆくまで★. 【最終章】 【最終章】(6) 柿谷貴次は運転席で再び額の汗を拭ってから、車を出した。 途中フィストフード店でコーラとホットドッグを買い求め、 『ああ腹が減った』 と春伽に笑いかけた。 駐車場でアッという間に平らげる貴次を見詰めて、 『何か気の利かない夕食ね...。貴次さん、ごめんなさい』 春伽が丁重に謝った。 『嫌だなあ。腹が減っていたら、何だって旨いさ。 心配なら要らないからね』貴次は快活に答えて、 店舗までゴミを捨てに行って来た。 港に車を止めると、クラブハウスに灯りが見えた。 クルーザーの鍵を受け取ると、 フロントの時計は既に八時半を廻っていた。 沖に出てから、貴次は不要な物を捨て、 必要な物だけを納めて道具を片付けた。それから船室に入ると、 春伽が俯いて泪していた。 『春伽姉さん大丈夫かい...。どうしたんだよ、 春伽姉さんが泣くなんて珍しいよね』 『ねえ貴次さん、私がいなくなっても泣いたりしないでね。 私は何時か、きっと会いに来るから、強く生きてね』 春香は真っ直ぐに貴次を見ながら、振り絞る様な声で話し掛けた。 その頬に、涙が零れ落ちていた。 『会うって......。ほら、僕は此処に居るじゃないか。 変な事を言って、春伽姉さん疲れたんじゃないか...』 貴次が身を乗り出して覗き込むと、 『変よね......』 春伽はひとこと呟いた。 『何か僕に出来ることが有ったら、言ってよ。 遠慮する仲でもないんだから、何でも言ってくれよ』 『ねえ貴ちゃん、外は晴れたのかしら......。 お星様は見えそうもないかしら』 柿谷春伽は頬の涙を拭いながら、訊いた。 『雨は、お経さんを上げている時に上がったんだ。 墓地で降られていたら、堪らなかったよ。憶えてないのかい......。 『まあ、それはどうでもいいさ。外は晴れ上がって、星が綺麗だよ』 『まあ、そうだったの。貴ちゃん、デッキに上がりましょうか』 『少しだけ寒いけど、気持ちが良いよ。ほら、おいでよ』 柿谷貴次が手招きすると、 春伽は彼に引かれれる様にデッキに出た。 (7)へ【続く】 2018.12.26.星原女瑪.【最終章】(5)翌日は秋雨が降り出しそうな、重い曇り空だった。柿谷家の菩提寺に遺体を映す頃には、春伽は棺に納められていた。誰もいないのを見計らい、貴次は棺に近づき、ペットボトルを差し入れた。『貴次さん、来てね。待っているわ』瞳を見開いた姉に、『大丈夫だよ、安心してくれ』そっと呟いてから、棺を離れた。『そう......。そんな事が有ったのね。 それで、それから何が有ったのか話して下さい』沙織は思わず手を取り、春伽の顔を見た。『あれから十年が経つわ。私は25歳の侭ですけどね』『まあ、私は35歳だから同い歳ね』沙織の言葉に笑みを浮かべて頷くと、柿谷春伽は再び話し始めた。土葬が済んで参列者や親族が帰途に就いたのは、四時近かった。柿谷貴次は墓地を早めに離れ、近くの喫茶店で珈琲を飲んでいた。五時を過ぎると沈んだ秋の陽と共に、夕暮れが色濃く迫って来た。時計の針が五時半になるのを見届けて、柿谷貴次は墓地に向かった。棺が露わになると蓋の上に降りて、ガラス越しに春伽の顔を覗き込んだ。そこには、目を開けて微笑んでいる姉の顔があった。2018.10.13.貴次は釘抜を使い、急いで蓋をこじ開けた。『春姉さん、大丈夫かい』『大丈夫よ。少し息苦しかったけれど、 高次さんが早く開けてくれたから助かったわ...。私ね、歩けそうよ』『そう、それは助かるよ。上に登って手を出すから上がってみて』『分かったわ。でもね、お洋服が...これじゃあ可笑しいわ』『大丈夫だよ、用意して来た。簡単に切れる様にワンピースにしたんだ。 いいよね』『貴ちゃん、何から何まで有り難う』柿谷貴次は姉を伴い洗い場で泥を落とした。それからトランクに有った革靴に履き替えた。そして、綺麗になった道具をトランクに収めた。『春姉さん、取り敢えず逗子のマリーナへ行くよ』『そう、分かったわ』春伽は軽快に答えて、助手席に乗り込んだ。バニラ色にクローバーを散らしたワンピースが、よく似合っていた。【最終章】(4)柿谷貴次が不思議な現象に遭遇したのは、通夜の晩のことだった。自宅で葬儀をする事となり、春伽は10畳の和室に横たえられていた。眠気も来ず、とても寝てなどいられない心境で、柿谷貴次は布団の傍らに座っていた。夜中の2時を過ぎた頃だった。『貴次さん、貴次さん』自分の名を呼ぶ声と一緒に膝を叩かれて、柿谷貴次は慌てて首を振った。いつの間に眠っていたのか、見ると、姉の春伽が手を伸ばして膝を叩いていた。『春姉さん、どうして......春姉さん、生きていたのかい。 一体どうしたんだ......』貴次が躊躇っていると、『私の声が聴こえるのね』『ああ、良く聞こえるよ』言ってから、柿谷貴次はあたりを見まわした。幸い人気は無く、静まり返っていた。『春姉さん、もっと声を落とさないと誰かに聞こえてしまうよ』『そうね、分かったわ』貴次の膝に載せられた手には、温もりが有った。『生き返ったのか...。医者を呼ぼうか』迷いの籠った声で呟くと、『無駄よ。たぶん私は死んだのよ...。』寂し気な春伽の声がした。そして、『でも、私の魂は生きているのよ。だから、死にきれずにいるの。 貴次さん。助けて欲しいの、何とかしてほしいの』姉の春伽は、悲痛な声を漏らした。『明日は墓地に埋葬される。僕は皆に知られない様に残って、 春姉さんを掘り起こすよ』『そう...。でも、その後はどうなるのかしら』『分からないさ。僕にだって、見当もつかないよ』その時、足音が近づいて来た。春伽の手が布団に隠れ、会話は止んだ。顔を上げると、憔悴しきった母が立っていた。『あら貴次さん、お疲れ様ね。私が変わるから、貴女は休みなさい』『お母さん。それでは、また来ますのでお願いします』貴次は居場所を失くして、仕方なく部屋に引き取った。少しの間ベッドに腰かけて考えていたが、次の瞬間、部屋を抜け出した。そして柿谷貴次は、慌てた様子で車に飛び乗った。逗子のハーバーでヨットに乗り込むと、柿谷貴次は明かりを灯した。それから、思い付く道具を、車のトランクに積み込んだ。姉の春伽の言うことが嘘の様には思えず、困惑しながらも、貴次は準備だけはしておこうと考えたのだった。【最終章】(3) 『沙織さん、初めまして。柿谷春伽です。 十年前に交通事故で命を落としましたが、 貴次さんのお陰で、こうして楽しく暮らしています。 時々この部屋に遊びに来ては貴女の事を聞いていました。 沙織さん、宜しくお願いしますね』 『柿谷さん、どうして......』 沙織が呆気に取られていると、 『貴次さん、私からお話してもいいかしら』 『ああ、春姉さんから話して貰えると助かるよ』 柿谷貴次の言葉に頷くと、 柿谷春伽は沙織の隣に座って話し始めた。 柿谷貴次が大学三年の、秋のある夜の事だった。 姉の柿谷春伽は、女友達のバースデーパーティーに出席し、 ホテルで楽しいひと時を過ごした。 その後22時ごろに、パーティーを退席した。 とても和やかな想いを胸にタクシーを拾をうと、 山下公園側に向かって、横断歩道を歩き始めた。 その時だった、急ブレーキと悲鳴が轟いた。 柿谷家に事故の一報が入ったのは、深夜0時近くの事だった。 電話に出た手伝いの明美は、手を震わせながら二階へ駆け上がった。 ドアのノックに貴次が出てみると、蒼ざめた顔の明美が立っていた。 『明美ちゃん、どうかしたのかい...』 『大変なんです。大変な......』 明美の声は、乾いたように掠れていた。 『どうしたの、いったい何か有ったのかい。落ち着いて話してくれよ』 『はい』 手伝いの明美は唾を飲み込むと、 『春伽お嬢様が車に撥ねられて、病院へ運ばれたそうです。 ただ今、警察から電話が有りました。奥様や旦那様にも、 知らせましょうか......』 『何てことだ。僕は一足先に病院へ向かうから、 父達は、そっと起こしてやってくれ。 それと、貴敬兄さんは出張でアメリカに行っているから、 僕が後で連絡しておくからと、父達に伝えてくれるね』 『はい、分かりました。どうか、お気を付けて行ってらっしゃいませ』 貴次は明美の声を背中で聴きながら、 上着を手に取り、慌てて部屋を後にした。 病室に入ると、医師と看護婦が二人、神妙な面持ちで立っていた。 『柿谷様ですね......』 『はい。弟の貴次です』 『誠に残念ですが、先ほど息を引き取られました。 23時57分の御臨終でした。お悔やみ申し上げます』 医師と共に、二人が一礼した。 『死因は何だったのですか』 『全身打撲と、腹部の出血が酷くて...。手は尽くしたのですが、 間に合わず失血死でした。もう少し早く運ばれていたら。 そう思うと...、大変に残念です】 柿谷家にとって一人娘の春伽の死は、大きな打撃だった。 遺体が実家に運ばれるまで、貴次は遺体の傍らで泪し続けた。 結局、春伽を轢き逃げした車も犯人も、 見つからぬ仕舞いであった。 (4)へ続く【最終章】(2)『沙織さん、ようこそ。お待ちしていました』柿谷は明るい声で迎え入れた。『こちらに掛けてください』マスタード色の革張りの応接セットに、案内された。柿谷の部屋は黒を基調に煙草色の配色で、落ち着けそうな雰囲気だった。『僕はビールを飲みますが、沙織さんも何か如何ですか』『そうね、トマトジュースでも頂こうかしら』『好かった。美味しいトマトジュースが冷えていますよ』柿谷はそう言って、すぐに運んで来てから、沙織のはす向かいに腰を下ろした。『あと五分もしたら沙織さんに紹介したい人が来るので、是非とも逢ってください』『えっ......。どなたか来るのですか』『はい、楽しみにお待ちください』『きょうは午後じゅう、モネの絵を眺めていたのよ』『そうでしたか、モネの絵は好いですよね』『ええ、大好きです』『ああ、仕事の後のビールは旨いです』柿谷は、ドイツ製らしいジョッキを傾けた。間もなく部屋をノックする音がして、背の高い細身の女性が入って来た。柿谷は急いで立ち上がると、『やあ、こんばんは』と声を掛けてから、沙織の横に立った。『春伽姉さん、こちらが奥村沙織さんです』『沙織さん、僕の姉の春伽です』『あの......。まさか亡くなった筈の、お姉さまですか』奥村沙織は、あまりにも突然な事に驚き、言葉に詰まった。 2018.7.4.【最終章】(1)四月半ばの丘には遅ればせのチューリップが咲き残り、爽やかな風が吹いていた。夕方まで仕事が有るからと、柿谷は朝の五時前に出かけて行った。夕食は済ませて帰るからと言っていたから、今夜の話は大事なことだろうかと、奥村沙織は午後の窓辺でふと考えた。バロックを流しモネの画集を眺めていると、日暮れの迫るのも忘れる程に絵画の世界に引き込まれて行った。夕暮れた丘で軽い散歩を済ませると、沙織は七時前にシャワーを浴びた。部屋のベッドで寛いでいるところへ、柿谷から電話が入った。『申し訳ない。今夜の約束を九時に延ばしていいでしょうか』『大変そうですね。九時に伺いますね。 呉れ呉れも、お気を付けてくださいね。それでは』『はい、有り難うございます。それでは』ということで電話は切れた。柿谷貴次が帰宅したのは、九時過ぎだった。彼はシャワーを済ませると、二階へ上がって行った。奥村沙織はドレッサーの前に座り、自分の姿を眺めて見た。肩先に伸びた髪が軽くカールして、薄化粧にピンク色の唇をした顔が浮かんでいた。これが今の私......。あの朝に化粧と髪を整えたままの容姿で、鏡に映っている自分が不思議だった。やや経ってパンパンと頬を叩くと、沙織は立ち上がった。二階の踊り場に立つと、その先にはまだ階段が続いていた。覗くと、幅広の廊下が延びていた。そして三枚目のドアが開いていて、明かりが零れていた。柿谷の配慮を感じながら、奥村沙織はドアをノックした。【続く】2018.6.01. *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.04
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. ご訪問下さり、有り難うございます *------*------*------*. 🎍 謹賀新年 🎍 明けましておめでとうございます。 本年も、宜しくお願い致します。 皆様の御多幸を、心より願っています。 ★ 翠い風 ★ 愛しく纏わり この頬に口付する 愛しく纏わり この髪に戯れる 君よ その源が何処か 知らない 何処で産まれ 何処から来るのか 水無月の窓辺に 愛しく吹き寄せる 風よ 雨上がり 窓辺に佇み 両手を広げて 君を抱こう ああ 自然の息吹が 天然へと誘う さあ吹いて来い 翡翠色の 濡れた風よ By.星原女瑪.(2014.7.21)2018.1.01.. (注意・詩の転載を禁ずる:ブログのシェアはご遠慮下さい) * *------*------*------*------* ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました *------*------*------*------*🙇 お知らせ 短編小説・心ゆくまで・は、下段に記載しています。 続きは、もう少しお待ち下さい。~🙇. * ***------*------*-----*------*------*------*------*** 短編小説 ミステリーロマンスの世界へ、ようこそ。 拙い小説ですが、読んで戴けましたら幸いです。 ★心ゆくまで★. 【最終章】 【最終章】(6) 柿谷貴次は運転席で再び額の汗を拭ってから、車を出した。 途中フィストフード店でコーラとホットドッグを買い求め、 『ああ腹が減った』 と春伽に笑いかけた。 駐車場でアッという間に平らげる貴次を見詰めて、 『何か気の利かない夕食ね...。貴次さん、ごめんなさい』 春伽が丁重に謝った。 『嫌だなあ。腹が減っていたら、何だって旨いさ。 心配なら要らないからね』貴次は快活に答えて、 店舗までゴミを捨てに行って来た。 港に車を止めると、クラブハウスに灯りが見えた。 クルーザーの鍵を受け取ると、 フロントの時計は既に八時半を廻っていた。 沖に出てから、貴次は不要な物を捨て、 必要な物だけを納めて道具を片付けた。それから船室に入ると、 春伽が俯いて泪していた。 『春伽姉さん大丈夫かい...。どうしたんだよ、 春伽姉さんが泣くなんて珍しいよね』 『ねえ貴次さん、私がいなくなっても泣いたりしないでね。 私は何時か、きっと会いに来るから、強く生きてね』 春香は真っ直ぐに貴次を見ながら、振り絞る様な声で話し掛けた。 その頬に、涙が零れ落ちていた。 『会うって......。ほら、僕は此処に居るじゃないか。 変な事を言って、春伽姉さん疲れたんじゃないか...』 貴次が身を乗り出して覗き込むと、 『変よね......』 春伽はひとこと呟いた。 『何か僕に出来ることが有ったら、言ってよ。 遠慮する仲でもないんだから、何でも言ってくれよ』 『ねえ貴ちゃん、外は晴れたのかしら......。 お星様は見えそうもないかしら』 柿谷春伽は頬の涙を拭いながら、訊いた。 『雨は、お経さんを上げている時に上がったんだ。 墓地で降られていたら、堪らなかったよ。憶えてないのかい......。 『まあ、それはどうでもいいさ。外は晴れ上がって、星が綺麗だよ』 『まあ、そうだったの。貴ちゃん、デッキに上がりましょうか』 『少しだけ寒いけど、気持ちが良いよ。ほら、おいでよ』 柿谷貴次が手招きすると、 春伽は彼に引かれれる様にデッキに出た。 (7)へ【続く】 2018.12.26.星原女瑪.【最終章】(5)翌日は秋雨が降り出しそうな、重い曇り空だった。柿谷家の菩提寺に遺体を映す頃には、春伽は棺に納められていた。誰もいないのを見計らい、貴次は棺に近づき、ペットボトルを差し入れた。『貴次さん、来てね。待っているわ』瞳を見開いた姉に、『大丈夫だよ、安心してくれ』そっと呟いてから、棺を離れた。『そう......。そんな事が有ったのね。 それで、それから何が有ったのか話して下さい』沙織は思わず手を取り、春伽の顔を見た。『あれから十年が経つわ。私は25歳の侭ですけどね』『まあ、私は35歳だから同い歳ね』沙織の言葉に笑みを浮かべて頷くと、柿谷春伽は再び話し始めた。土葬が済んで参列者や親族が帰途に就いたのは、四時近かった。柿谷貴次は墓地を早めに離れ、近くの喫茶店で珈琲を飲んでいた。五時を過ぎると沈んだ秋の陽と共に、夕暮れが色濃く迫って来た。時計の針が五時半になるのを見届けて、柿谷貴次は墓地に向かった。棺が露わになると蓋の上に降りて、ガラス越しに春伽の顔を覗き込んだ。そこには、目を開けて微笑んでいる姉の顔があった。2018.10.13.貴次は釘抜を使い、急いで蓋をこじ開けた。『春姉さん、大丈夫かい』『大丈夫よ。少し息苦しかったけれど、 高次さんが早く開けてくれたから助かったわ...。私ね、歩けそうよ』『そう、それは助かるよ。上に登って手を出すから上がってみて』『分かったわ。でもね、お洋服が...これじゃあ可笑しいわ』『大丈夫だよ、用意して来た。簡単に切れる様にワンピースにしたんだ。 いいよね』『貴ちゃん、何から何まで有り難う』柿谷貴次は姉を伴い洗い場で泥を落とした。それからトランクに有った革靴に履き替えた。そして、綺麗になった道具をトランクに収めた。『春姉さん、取り敢えず逗子のマリーナへ行くよ』『そう、分かったわ』春伽は軽快に答えて、助手席に乗り込んだ。バニラ色にクローバーを散らしたワンピースが、よく似合っていた。【最終章】(4)柿谷貴次が不思議な現象に遭遇したのは、通夜の晩のことだった。自宅で葬儀をする事となり、春伽は10畳の和室に横たえられていた。眠気も来ず、とても寝てなどいられない心境で、柿谷貴次は布団の傍らに座っていた。夜中の2時を過ぎた頃だった。『貴次さん、貴次さん』自分の名を呼ぶ声と一緒に膝を叩かれて、柿谷貴次は慌てて首を振った。いつの間に眠っていたのか、見ると、姉の春伽が手を伸ばして膝を叩いていた。『春姉さん、どうして......春姉さん、生きていたのかい。 一体どうしたんだ......』貴次が躊躇っていると、『私の声が聴こえるのね』『ああ、良く聞こえるよ』言ってから、柿谷貴次はあたりを見まわした。幸い人気は無く、静まり返っていた。『春姉さん、もっと声を落とさないと誰かに聞こえてしまうよ』『そうね、分かったわ』貴次の膝に載せられた手には、温もりが有った。『生き返ったのか...。医者を呼ぼうか』迷いの籠った声で呟くと、『無駄よ。たぶん私は死んだのよ...。』寂し気な春伽の声がした。そして、『でも、私の魂は生きているのよ。だから、死にきれずにいるの。 貴次さん。助けて欲しいの、何とかしてほしいの』姉の春伽は、悲痛な声を漏らした。『明日は墓地に埋葬される。僕は皆に知られない様に残って、 春姉さんを掘り起こすよ』『そう...。でも、その後はどうなるのかしら』『分からないさ。僕にだって、見当もつかないよ』その時、足音が近づいて来た。春伽の手が布団に隠れ、会話は止んだ。顔を上げると、憔悴しきった母が立っていた。『あら貴次さん、お疲れ様ね。私が変わるから、貴女は休みなさい』『お母さん。それでは、また来ますのでお願いします』貴次は居場所を失くして、仕方なく部屋に引き取った。少しの間ベッドに腰かけて考えていたが、次の瞬間、部屋を抜け出した。そして柿谷貴次は、慌てた様子で車に飛び乗った。逗子のハーバーでヨットに乗り込むと、柿谷貴次は明かりを灯した。それから、思い付く道具を、車のトランクに積み込んだ。姉の春伽の言うことが嘘の様には思えず、困惑しながらも、貴次は準備だけはしておこうと考えたのだった。【最終章】(3) 『沙織さん、初めまして。柿谷春伽です。 十年前に交通事故で命を落としましたが、 貴次さんのお陰で、こうして楽しく暮らしています。 時々この部屋に遊びに来ては貴女の事を聞いていました。 沙織さん、宜しくお願いしますね』 『柿谷さん、どうして......』 沙織が呆気に取られていると、 『貴次さん、私からお話してもいいかしら』 『ああ、春姉さんから話して貰えると助かるよ』 柿谷貴次の言葉に頷くと、 柿谷春伽は沙織の隣に座って話し始めた。 柿谷貴次が大学三年の、秋のある夜の事だった。 姉の柿谷春伽は、女友達のバースデーパーティーに出席し、 ホテルで楽しいひと時を過ごした。 その後22時ごろに、パーティーを退席した。 とても和やかな想いを胸にタクシーを拾をうと、 山下公園側に向かって、横断歩道を歩き始めた。 その時だった、急ブレーキと悲鳴が轟いた。 柿谷家に事故の一報が入ったのは、深夜0時近くの事だった。 電話に出た手伝いの明美は、手を震わせながら二階へ駆け上がった。 ドアのノックに貴次が出てみると、蒼ざめた顔の明美が立っていた。 『明美ちゃん、どうかしたのかい...』 『大変なんです。大変な......』 明美の声は、乾いたように掠れていた。 『どうしたの、いったい何か有ったのかい。落ち着いて話してくれよ』 『はい』 手伝いの明美は唾を飲み込むと、 『春伽お嬢様が車に撥ねられて、病院へ運ばれたそうです。 ただ今、警察から電話が有りました。奥様や旦那様にも、 知らせましょうか......』 『何てことだ。僕は一足先に病院へ向かうから、 父達は、そっと起こしてやってくれ。 それと、貴敬兄さんは出張でアメリカに行っているから、 僕が後で連絡しておくからと、父達に伝えてくれるね』 『はい、分かりました。どうか、お気を付けて行ってらっしゃいませ』 貴次は明美の声を背中で聴きながら、 上着を手に取り、慌てて部屋を後にした。 病室に入ると、医師と看護婦が二人、神妙な面持ちで立っていた。 『柿谷様ですね......』 『はい。弟の貴次です』 『誠に残念ですが、先ほど息を引き取られました。 23時57分の御臨終でした。お悔やみ申し上げます』 医師と共に、二人が一礼した。 『死因は何だったのですか』 『全身打撲と、腹部の出血が酷くて...。手は尽くしたのですが、 間に合わず失血死でした。もう少し早く運ばれていたら。 そう思うと...、大変に残念です】 柿谷家にとって一人娘の春伽の死は、大きな打撃だった。 遺体が実家に運ばれるまで、貴次は遺体の傍らで泪し続けた。 結局、春伽を轢き逃げした車も犯人も、 見つからぬ仕舞いであった。 (4)へ続く【最終章】(2)『沙織さん、ようこそ。お待ちしていました』柿谷は明るい声で迎え入れた。『こちらに掛けてください』マスタード色の革張りの応接セットに、案内された。柿谷の部屋は黒を基調に煙草色の配色で、落ち着けそうな雰囲気だった。『僕はビールを飲みますが、沙織さんも何か如何ですか』『そうね、トマトジュースでも頂こうかしら』『好かった。美味しいトマトジュースが冷えていますよ』柿谷はそう言って、すぐに運んで来てから、沙織のはす向かいに腰を下ろした。『あと五分もしたら沙織さんに紹介したい人が来るので、是非とも逢ってください』『えっ......。どなたか来るのですか』『はい、楽しみにお待ちください』『きょうは午後じゅう、モネの絵を眺めていたのよ』『そうでしたか、モネの絵は好いですよね』『ええ、大好きです』『ああ、仕事の後のビールは旨いです』柿谷は、ドイツ製らしいジョッキを傾けた。間もなく部屋をノックする音がして、背の高い細身の女性が入って来た。柿谷は急いで立ち上がると、『やあ、こんばんは』と声を掛けてから、沙織の横に立った。『春伽姉さん、こちらが奥村沙織さんです』『沙織さん、僕の姉の春伽です』『あの......。まさか亡くなった筈の、お姉さまですか』奥村沙織は、あまりにも突然な事に驚き、言葉に詰まった。 2018.7.4.【最終章】(1)四月半ばの丘には遅ればせのチューリップが咲き残り、爽やかな風が吹いていた。夕方まで仕事が有るからと、柿谷は朝の五時前に出かけて行った。夕食は済ませて帰るからと言っていたから、今夜の話は大事なことだろうかと、奥村沙織は午後の窓辺でふと考えた。バロックを流しモネの画集を眺めていると、日暮れの迫るのも忘れる程に絵画の世界に引き込まれて行った。夕暮れた丘で軽い散歩を済ませると、沙織は七時前にシャワーを浴びた。部屋のベッドで寛いでいるところへ、柿谷から電話が入った。『申し訳ない。今夜の約束を九時に延ばしていいでしょうか』『大変そうですね。九時に伺いますね。 呉れ呉れも、お気を付けてくださいね。それでは』『はい、有り難うございます。それでは』ということで電話は切れた。柿谷貴次が帰宅したのは、九時過ぎだった。彼はシャワーを済ませると、二階へ上がって行った。奥村沙織はドレッサーの前に座り、自分の姿を眺めて見た。肩先に伸びた髪が軽くカールして、薄化粧にピンク色の唇をした顔が浮かんでいた。これが今の私......。あの朝に化粧と髪を整えたままの容姿で、鏡に映っている自分が不思議だった。やや経ってパンパンと頬を叩くと、沙織は立ち上がった。二階の踊り場に立つと、その先にはまだ階段が続いていた。覗くと、幅広の廊下が延びていた。そして三枚目のドアが開いていて、明かりが零れていた。柿谷の配慮を感じながら、奥村沙織はドアをノックした。【続く】2018.6.01. *------*------*------*------*------*------*------* . *----* *------*------*------*------*ご訪問くださり、誠に有り難うございました ランキングに参加しています。ポチお願い致します。 . 小説もこちらにお願いします。 応援有り難うございました ★宜しかったら 又お立ち寄り下さい★ http://ping.blogmura.com/xmlrpc/qv94i9tevul1 http://blog.with2.net/link.php?1832603a
2019.01.01
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