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『そこにあるのは現実…』その13




「だからこれだけは約束して、翠星石。

 君は君だけのマスターを見つける。そして僕は僕だけのマスターを見つける。

 僕たちは双子だけれど同じ道は歩んじゃいけない。
 僕たちはローゼンメイデンだから。アリスゲームをしなくちゃいけないから。

 この約束は双子の姉を思う双子の妹の気持ちだと思って欲しい。
 約束してくれるなら、君が僕を裏切って他のマスターと契約したことは忘れてあげるよ。

 どうだい? このまま何も言わずに約束してくれるかい? 」



そうして翠星石はその約束を蒼星石と交わした。



その約束はドールとして当然の行為ではあるが、それは二人の別れを意味することでもある。

自分と争わないために、戦わないために蒼星石は別の道を歩もうと言っているのだった。



しかしそんな約束などを吹き飛ばすかのような今の攻撃、そして目の前で謝っている蒼星石。

翠星石は何を、どれを信じていいかわからなくなってきた。

ただ一つだけ明確なのが今のままだといけないことだ。


怒りに身を任せた翠星石は力を使ってしまった。

それが何を意味するのか、蒼星石の忠告が正しければジュンの身に何かが起こるはず。

結果的にこんな形で試したことになってしまった。


「本当にお前はどうしようもないやつですぅ。」


翠星石はプイッと横を向いて悪態をついた。




だが心が揺れる…。


ずっと会いたかった妹が目の前にいる。少しでも長くここで話をしたい。

ジュンのことが気にかかる。力を使ってしまって、本当に命に関わることなのか。


それを確かめるにはどうすればいい? 一刻も早く戻らないといけない?


翠星石はその答えを出しあぐねていた。




唯一の気がかりはおとなしく蒼星石がついて来るかが心配なのだが、おそらく躊躇する時間がないと思った。


「とりあえずジュンの家に一緒に戻るですぅ。
 話はその後でよーく聞いてやるですから、覚悟しやがれですぅ。」


拘束したままならあるいは大丈夫かもしれない。

翠星石はそう考えて枝葉を緩めることにした。


「ほら、緩めてやるですからさっさと立つですぅ。」


翠星石の意思に反応して蒼星石の拘束は幾分緩くなったようだ。


「ありがとう、翠星石。助かったよ。」


蒼星石はゆっくりと立ち上がる。両腕は固定されたままだが足の拘束は解けた。

そして翠星石へ歩き出した。



「ああ、そうだ。翠星石、レンピカは連れて行ってもいいかい?」

5歩ほど歩いてから、心配そうな顔で翠星石に尋ねる。


「もちろんですぅ。ドールと人工精霊は一身一体も同然ですから。当たり前なことを聞くなですぅ。」

当然と言わんばかりに翠星石は答えて、元来た方角へ歩き出した。


「そう、そうだね。ありがとう、助かったよ…。」

蒼星石は弱々しく答えると枝葉に絡まれた鋏を見た。

こちらも枝葉が解けるとカチャンと音を立てて床に落ちた。

弱々しく光を放ちながら光点に戻っていく。

そしてフラフラと揺れながら蒼星石の後を追う。


「それで、扉はどこに開くですか、蒼星石。なんとも味の無い空ばかりでわかりづれーですぅ。」

翠星石は歩きながら空を見渡したがそれらしいものは発見できなかった。


「ありがとう…、翠星石…。」

翠星石の背後で蒼星石はそう静かに繰り返した。言った後、口元がニヤリとゆがんだ。


「イヒヒヒ………。レンピカ!!」

蒼星石は冷酷に笑って、冷たく言い放った。


「えっ!」

突然、冷気が襲ったかのような錯覚を感じて翠星石は振り返った。


そして信じられないものを見た。


視線が蒼星石の後ろに釘付けになった。

レンピカがゆっくりと光を失いながらも大きくなっていった。



                           …つづく。





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最終更新日  2006/09/28 02:59:41 AM
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