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その15 ~ 人工精霊2 ~



「いきなり何しやがるですか。危ねぇやつですぅ!」


翠星石はそう叫んでみたものの、虚勢にしか過ぎなかった。

間一髪で鎌の間合いから逃れたが、それだけである。


本来ならそこから反撃に移すべきなのだが手にした如雨露は接近戦用の武器にはなりえない。

しかも蒼星石の鋏のダメージがまだ残っている以上、レンピカの攻撃を受けるわけには行かない。

そして先ほどの蒼星石に向けてはなったような攻撃をするにはかなりの間合いが必要である。

それに接近戦は翠星石が不得意とするところでもあるので、状況としてはかなり不利だといえる。


それらの理由で翠星石にとってどんな手段でもかまわないからレンピカとの距離をかせぐ必要があった。





「ご冗談を。これはアリスゲームでございます。
 ゆえに私(わたくし)がシスターの代わりに戦うのは道理と言えましょう。
 翠星石様は先ほどからなにか勘違いされておりませんでしょうか?」


レンピカは庭師の鎌をかなり大振りではあるが翠星石へ向けて幾度と振り下ろす。


一つ…、二つ…、三つ…。


その大きな動作を見極めて翠星石はなんとかかわし続ける。

レンピカは攻撃が当たらずとも何も気にしない様子であった。


何一つ無駄な動きの無い蒼星石と比べればレンピカの動きは無駄が多いように感じる。

道具としての特徴なのか、ギリギリまで間合いを詰めなければ鎌としての機能を発揮できないからだ。

いかに柄が長くても庭師の鋏より体二つ分ぐらい攻撃範囲が広がっているだけである。


これならなんとかかわしきれる。そう翠星石は読んで反撃の隙をうかがった。





そう言ってレンピカから目を背けずに次々と後ろに跳び下がる。

一瞬でも目を離せば間違いなく自分はやられると感じていた。


幸いにもこの世界には障害となるものは何もない。

あるのは白い布で覆われたような空ともやに包まれた大地だけだ。

蒼星石は遥か遠くに見えるからさっきの攻撃に使った生命樹の枝葉に足を取られることもないだろう。





だがレンピカは苦も無く翠星石を追う。

執拗に攻撃を繰り返しながら、静かにこう答えた。


「信じていただかなくてもかまいません。私(わたくし)はレンピカ。
 正確にはレン・ピ・カートン・ウラウチェルトと申します。
 ホムンクルスの製造過程で偶然生まれた22人の人工精霊…、その一人が私でございます。
 人の手により生まれし者ではございますが、私の力は神々からいただいたものです。
 決してローゼンメイデンのドールに劣るとは思いませんが、いかがでしょうか?」


レンピカはまるでおしゃべりを楽しむように微笑む。

顔だけ見るなら、初対面のものに自己紹介をするような仕草だった。

しかし、腕は別の生き物のように激しく留まるところを知らない。


「くーっ! 人工精霊の分際でドールに楯突くとはいい度胸してやがるですぅ。」


翠星石は再び虚勢を張った。そして蒼星石と比べて大きく違う点に気づいた。


レンピカは明らかにスピードが速い。


それが人工精霊のなせる業なのかどうかわからないが視界に映るそれは明らかに速い。

これで無駄な動作がなければ目で追いきれない。


「その言葉、お褒めになられたものとして受け取っておきましょう。
 ですが、翠星石様がそのご様子では説得力に欠けるというものです。
 スイドリームも大人しく従っているのは哀れだとお思いになりませんか?」


「えっ!? スイドリームが?」

翠星石は一瞬、虚を突かれた。

レンピカが実体化したようにスイドリームも実体化するなど想像していなかったからだ。


すかさずそこを目がけて鎌が振り下ろされる。

翠星石はかわせなかった。

頭上から襲う鎌を如雨露で受けきるのが精一杯だった。


鈍い音を立てて、二人の動きが止まる。

「はい、もちろん彼女も22人いる人工精霊の一人でございます。
 偶然ではありますが彼女も私の双子の姉なのです。いえ、偶然ではございませんね。 
 おそらくローゼンが双子のドールを作りし際に私(わたくし)たちを選んだのでしょう。」


翠星石はかなり強い力で抑え込まれて必死で抗う。

レンピカはそれでも涼しげな顔でそう言った。


「翠星石のスイドリームはそんなんじゃねーですぅ。そんな戯言なんか聞く耳持たねーですよ!! 
 このおしゃべり女め! ごちゃごちゃぬかすなですぅ!」

翠星石の両腕がプルプルと震えだす。

少しでも気を抜くと間違いなく鎌の餌食になりかねない。


レンピカは余裕の表情でこう言った。


「これは申し訳ございません。お喋り好きなものですから。
 とは言え、私(わたくし)の場合、手が休まるものでもありませんからご心配なく。」


怒りに任せて翠星石は両腕の力を振り絞ってレンピカをはじき返した。

レンピカの体はよほど軽いのか、かなり吹っ飛ばされた。

それは翠星石にとって最初で最後のチャンスとなる。


「きぃーーーーっ!! しつこいやろうですぅ! いいかげんにしやがれですぅ! スイドリーム!」


翠星石は一瞬の不安があったが、かまうことなく反撃を返すことにした。

蒼星石に仕掛けたときと同じ攻撃がレンピカに通用するかわからない


(それでも今やらなければならんですぅ。きっと今しかネーです
 蒼星石が出てきて1対2になったら、私に勝ち目はないですぅ)


「その技は私(わたくし)には効果ありません。なぜなら…。」


そう言ってレンピカは表情を変えることなくゆっくりと立ち上がった。



                           …つづく。





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最終更新日  2006/10/07 02:23:39 AM
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