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カテゴリ: Tomoest
『Tomoest』その26~悲鳴2~



「どうかしたの?」


寝室を出て廊下に向かう。ゴキブリでも出たとか? まさか…ね。


このゴキブリ対策だけは完璧な家にそれはないでしょう。

ホウ酸団子にゴキブリポイポイ、嫌避虫の魔術法程式が書いてある御札、封魔滅殺の魔法陣、
害止使のハーブ、暗緩明早の宝鈴…そして絶対封印の聖遺物。

たかがゴキブリのために科学と魔術の力が混沌とした家は世界広しと言えどもはここしかない。

魔術を扱えない私でもここまで魔術道具を集めると使える気になるんだから不思議だ。


そういうわけでこの家に越してきて以来、黒い奴を見かけていない。




それぐらい私だって苦手なんだから、もしそういう時は見て見ぬフリをするものなのよ。

いや、フリをされても困っちゃうか。ここでは存在自体が許されてないんだ。

んーっ、ありえないと思うけど……。


だったら何? 理紗が悲鳴を上げるほどの事件って?

あー勝手に事件にしてしまっている。まぁ事件よね、たぶん。



「トゥモエ~!!」


まったくなんて悲鳴を上げてんのよ。理紗の発音がおかしい。ガクガク震えてるし…。

まぁ、とにかくバスルームだ。事件はそこで起こっている。

いやできれば起こって欲しくないな………。



そんな期待を込めて、バスルームにつながる扉を開けた。

状況が状況ならかなり色っぽい光景なんだろうか?







バスタオル1枚だけで胸を隠して床にへたり込んで座っている理紗を見て、なんだか妙な不安がした。



「と、ともえ。あの…。声…。ほら、聞こえる…。」


「声?」

別に何も聞こえないと思うんだけど…。


理紗は声がすると言う方向を指差した。振り返ってその方向を見ると…。




正直、この時点で私はホッとしていた。だってアレじゃ無いもん。

振り向いて黒い奴がカサカサ動いていたらどうしようと思った。


「何もないと思うけど。」


「だって聞こえたんやもん。
 シャワー浴びてたらなんか聞こえるなぁと思て出たら女の子の声が…。
 ウチそういうの嫌やってゆうてたやん。」


そっか。理紗は私と正反対なんだ。私は虫が嫌い。理紗はお化けが嫌い。

でもこれって正反対っていうのかな? まあいいや。問題はそこじゃないのよね。


「えー、女の子!?」


「うん。あれは雛ちゃんの声と違う女の子の声や。」


まさか!? この家に? 雛苺は今、みっちゃんさんの家にお泊りだから、この家には他に誰もいない。

お化けや妖怪の類はありえないはずなんだけど、それは少し自信がない。

私は何もしていないつもりだし、本が勝手に何かを召喚なんてことはありえない。

だから…。んー…。



少し考えてその可能性も否定できないことに気づいた。


ありえないことを起こすのはありえないモノ。


その言葉の意味を知っているだけに、軽率な考えは捨てなきゃね。

せっかく良い気分で飲んでたのに、仕方ないか。

まずは現実を確かめなくっちゃ。


「気のせいだと思うけど…、見てくる。」


私って黒い奴ならともかく、そっち系はかなり耐性がついているので大丈夫なんだよね。

まずはひと安心ってところかな。かなりお気楽なのは酔っているせいだ。

でも今の騒動で少し醒めた気がした。やっぱり後でワインを開けようかな。


そんなことを考えながらバスルームを後にする。


それにしても理紗の裸は色っぽくてうらやましいと思った。

私より小柄なのに胸だってそこそこあるし、自分で太っていると言いながらウエストは細いし…。

たしかに下腹部は出てるかもしれないけど、脱がなきゃわからないレベルよね。

うん、女を磨くって、ああいうことなんだわ。

見えない部分にも気を抜かないって言うか、脱いでも綺麗って感じよね。

モデルのように綺麗とかじゃなくて、女の人として艶があるって感じ。


私も見習わなくちゃいけないのかな…。


ずいぶん長いこと鍛えてないお腹に手を当てて少し悲しくなる。

たるんでるとは思えないけど、気をつけなくっちゃね。


ん!? 確かに何か聞こえるような気がする。

気のせいじゃなかったみたいだわ。


でもこの部屋にそんな怪しいものは………ありすぎてわかんない。



とにかく図書室の扉を開いてみた。

重々しく本棚が並んでいるいつもの光景。

大量の本を整理するためだけにここに住んでいるようなものだから、この部屋だけは特別だ。


並んでいる本棚をすり抜けて奥に入る。

時折目につく本に気をとられて、これは読んでなかったっけなどと考えそうになる。

あー誘惑がいっぱい。自分の家なのに…。


一冊を手に取り小脇に抱えた。後でこれを読もうっと。

すでに目的外のことをしている。少し反省…。

でもいいんだ。酔ってる時はなんでもOK。そういうことよね。


さらに進んで、部屋の奥にある机には誰もいなかった。

当たり前じゃない。いるわけないんだから。でも…。


横に立ててあるの鏡の前に………。


「か、金糸雀!?」


金糸雀が泣いていた。どうして?


                         …つづく。





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最終更新日  2006/10/21 08:06:33 AM
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