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カテゴリ: Tomoest
その30~すきやきうどん~



「あ…。ごめんね、金糸雀。そうだったよね。」


まったく! 私って、何やってんだろ?

本当に酔っ払いってどうしようもないわね。我ながら嫌になっちゃう…。

話を聞くって言っといて、これだもんね。


「どうしたん? 何かあったん?」


急に理紗の顔が真面目になった。私と金糸雀を交互に見比べている。


「うん、ちょっとね。雛苺と金糸雀に何かあったみたいなの。」


「ふ~ん、そうなんや…。よしっ! おばちゃんがおいしいもん作ったろ。

 何がええかなあ…? そうや、クレープなんかどうや?
 あれやったらすぐ作れるし、巴のさぶいキッチンでも材料に困らんしなあ。
 ほんまはたこ焼きとかのほうがええんやけど、冷蔵庫に蛸飼ってないしなあ。   
 うん、そうしよ、そうしよ。
 巴、なんぼなんでも小麦粉ぐらい残ってるよな?」


どうしてそんなにコテコテの大阪弁!? しかも自分でおばちゃん言ってるし…。

冷蔵庫に蛸を飼うって何!? それと人んちのキッチンに『さぶい』って?

もうー! どこからつっこんでいいのかわからないから、難しいボケは止めてほしいわよ。

ええ、どうせわかってますよーだ。

こういう時はスルーだわ。


「えーっと…、それぐらいならもちろん…。」



 おばちゃん、すぐに服着てくるさかいになあ。
 それまで、そのおばちゃんにお茶でも淹れてもうといてな。
 ほな、そこのおばちゃん頼んだでぇ。」


そう言って理紗は金糸雀の頭をなでると服を着るために戻った。

そっか…。理紗的な心遣いなんだ。



私としてはお茶すればいいって思ってたけど、理紗はおいしいものなんだよね。

文化の違いというかなんというか…。



そういえば、私も悲しいことがあった時、理紗に『おいしいもん食べに行こ』って言われたっけ。

『どうして飲みに行かないの?』って聞いても、『ええから、ええから』なんてごまかされて…。

しつこく聞いたら、『お酒は楽しんで飲むものや。悲しいときは飲んだらあかん。そういう時は
おいしいもんを食べるほうがええねん。そのほうが早よ元気になるさかいな。』って答えてくれた。

二人で泣きながら『美味しいね』って、すき焼きを食べたよね。

『巴が笑顔にならんと、卵のおかわりはさせへん。』って理紗が言うから、
『じゃあ、お肉あげない。』って私が言って、『そしたら豆腐はウチがもらう。』なんて
子供のけんかみたいなことしたりしてね。

結局、『最後はうどんで締める』なんて言ってたくせに、バカ笑いしながらお酒飲んでたっけ…。



さすが理紗よね…。わかってらっしゃる。

でも理紗…、私もおばちゃん扱いなの?



そういった思い出に浸りながらも少しの疑問をはらみつつ、金糸雀を抱いてダイニングまで行った。

人間用の椅子だと大きすぎるし、ちょうど雛苺もいないので金糸雀を雛苺用の椅子に座らせる。


「ともちゃん、ここは…。」

「ええ、雛苺の椅子なの。金糸雀にもピッタリでしょ。」

「でも…。」

「いいから、いいから座ってて。どうせ雛苺いないしね。」

「うん…。」


金糸雀は難しい顔でうつむいて小さくそう言った。

よっぽど雛苺のこと、気にしているのかしらね。


「大丈夫よ、金糸雀。雛苺だってそれぐらじゃ怒んないわよ。」

「そうかしら…。あっ! それは…。」


金糸雀はテーブルの上の雛苺のぬいぐるみを見つけて指さした。


「ああ、これ? 私がね、高校生の時に作った雛苺のぬいぐるみなの。
 下手だから恥ずかしいんだけど、ずっと大切にしてきたのよ。
 これを見ながらね、早く雛苺とまた会えますようにって毎日お祈りしてたの。
 雛苺のミーディアムじゃなくてもいいから会いたいってね。」

「ともちゃん…。」

「真紅が言ってくれたの。想いが強ければ、通じる心もあるってね。
 ドールはその想いを糧に生きていられるって。
 ミーディアムじゃなくても大丈夫だって。 
 だから私ね、ずっとその言葉だけを信じて生きてきたわ。
 いつか雛苺と会えますように、ごめんなさいって謝れるように。
 そしておかえりなさいって迎えてあげれますようにってね。」

「カナはわかるかしら。それが雛苺に通じたかしら。」

「ありがとう、金糸雀。じゃあ、お茶を淹れてくるわね。」


ポットにお湯はあまり残ってないみたいだし、せっかくだから沸かすことにしよう。 

ふと振り返ると金糸雀はテーブルの上に雛苺のぬいぐるみを見つめている。

その後ろでピチカートが心配するようにフワフワ浮いたり、また金糸雀の背中に留まったりしている。


あれ!? ベリーベルは?

見回すと、以外にも私の後ろで小さく揺れながら浮いていた。

どうも金糸雀の近くだと居心地が悪いみたいだ。

私が勢いで連れてきたとはいえ、雛苺の人工精霊がここにいると雛苺は困らないかなと思ってしまった。


まあ大丈夫でしょ。普段から頼りにしていないみたいだし…。


「お待たせ、カナちゃん! これからすぐ作ってあげるからなぁ。」

理紗がパジャマ姿で元気よく入ってきた。どうやらアルコールは抜けたみたい。



                        …つづく。





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最終更新日  2006/11/04 07:08:00 AM
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