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カテゴリ: Tomoest
 その31 ~哀れな青年~



「牛乳、牛乳! たまご! たまご! 小麦粉! 小麦粉!」

理沙の軽快な歌声でどんどん作業が進んでいく…。

まぁーかなりの本気モードだわ…。

髪を中途半端に乾かしたままなのでシャンプーとリンスのいい匂いが伝わってくる。


それにしても手早い!

いったい何の料理番組なんだと横目に見ながら思った。


私も今度やってみよう。

でも理紗みたいに目分量だけで作るのなんて今の私には絶対無理だわ。



こうして見ている分には簡単そうなんだけど、実際は厳しいんだろうな…。


それより今の私にはやるべきことがあるんだわ。

私はやかんを火にかけてから、そーっとキッチンの隅に行く。

理紗は料理に夢中だし、ここからじゃ死角で見えない。

カウンター越しに金糸雀の姿を確認

手招きしてベリーベルを呼び寄せ、ちょっと憎らしげに話しかけた。

周りに聞こえないようにひそひそと声を潜めながら。


「あなたがついていながら、まったく何やってんのよ。」


ベリーベルは申し訳なさそうにゆらゆら揺れている。


「あなたがしっかりしないと雛苺はどうなるの?
 ドールを見守り、お世話をするのが人工精霊の役目ってものじゃないの?

 だったら仲良くすればいいんじゃないの?」


ベリーベルも何か言いたげであったけど、普通の人間には人工精霊の声は聞こえない。

つまり一方的に私が問いただしているだけだ。

まったく…、怒らないと自分で言っておきながら…。困った酔っ払いだわ。

これだから不名誉なあだ名をつけられてしまうのかしら。



 一応、あなたも男だったらさ、ビシッと決めるもんでしょ。」


ギッと睨みつけてそう言ってやった。

あー、ベリーベルが弱々しく点滅して小刻みに揺れている。

今にも泣き出しそうになっている男の人の顔を想像してしまった。

たぶん、実体化したらその通りだろうな…。


「フフフ…、なんてね。ちょっと言い過ぎたかな?」


顔を崩してニンマリと微笑んであげると今度は抗議するように強く点滅してくる。

いけないことだと思いながらも人工精霊をからかうのは楽しい。

実際、金糸雀は泣いているんだから間違ったこと言ってないよね。うん。



そういうわけで一人で納得していると理紗の持つフライパンから甘くていい匂いが流れてくる。

さすが甘いものは別腹といった格言が正しいことを証明しているみたい。

さんざんビールを飲んだ後でも恋しく思ってしまうのはどういう理由なのか全くわからないが、

そんなことはどうでもいいんだ。


甘い香りにすっかり心がときめいてしまったから…。


こちらも負けじとお茶を4杯いれて準備完了だ。

私と理紗と金糸雀、そしてベリーベルの分。もちろん金糸雀には小さめのカップで。

ベリーベルはちゃんと話が出来るように実体化させなくてはならないし、お茶ぐらいはいれてあげないとね。





                        …つづく。





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最終更新日  2006/11/13 02:42:58 AM
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