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カテゴリ: Tomoest





「理紗ったら…。本当にどこまでもサプライズなんだから。」

そう言って熱いお茶をすすった。


「えへへ…。意味不明の感想ありがとう。
 せやけどお茶する時は楽しくないとなぁ、あかんと思うんよ。なあカナちゃん…。

 ああん、もう。口の周りがシロップでべとべとやんかー。
 女の子はもっとお上品に食べなあかんよ。」


理紗は金糸雀の方を見て微笑んだ後、おしぼりで金糸雀の口を拭いてあげた。

こうして見ていると仲のいい姉妹みたいだ。




金糸雀が5歳くらいの子供だとすると親子と言っても不思議のない年の差なんだけど、

やっぱり姉妹に見えちゃう。


それは私が雛苺を友達だと思う気持ちと似たようなもので、見た目の年齢は関係ないのかもしれない。



実際、金糸雀にしても雛苺にしても私たちよりは全然年上になるんだけどね。

ドールだから小さな子供の姿でも何百年も先輩だったりするんだわ。実感はないにしても…。



理紗の妹は理紗が中学生の頃に亡くなったと以前に聞かされた。

それは私が理紗と出逢ってしばらく経った頃だ。

あの頃は大阪に転勤してきて慣れない生活と職場で苦労していたっけ。

職場の先輩として毎日、理紗に飲みに連れまわされてうんざりしていたな…。

私もつい堪忍袋の緒が切れたというか、とうとう我慢の限界が来て理紗に文句を言った。


いいかげんにして欲しいって…。



私は雛苺への贖罪のために生きているって…。


たぶん酔った勢いだったと思う。

でないと普通の一般人である理紗にローゼンメイデンの話なんか絶対にしないから。

信じてもらえなくても馬鹿にされても当たり前の話だし、私はそんなことも全然気にしなかった。

ただ私が持つ悲しみと悔しさと罪悪感を全てをぶちまけた。



頭のおかしい娘と思われても仕方のないのに信じてくれた。

そして理紗が返した言葉が意外だった。

『何が友達の力になれなかったや。そのお人形さんはあんたを恨んでたんか?
 自分だけが不幸やと思ったら大間違いや。誰でもそんなん当たり前に持ってるわ。

 ええか、柏葉さん。人間ってなあ、うまい具合になってんねん。
 幸せも不幸せもバランスよく、まったく同じだけ背負ってんねんで。
 しかもそれはみんな同じ重さや。どんな人でも違いはあらへん。
 万国、全世界、老若男女の違いはない全くの共通で平等や。
 ただそれに気づくか気づかんかの違いだけやねん。

 そらあんたはそれだけ辛かったかもしれんけど、それは自分が背負う重みに気づいただけや。
 別にたいしたことあらへんがな。もともとあんたが持ってたものやからな。
 でも、それやったら同じだけの幸せがあるってことを信じらなあかんとちゃうか。
 柏葉さんかて、今までまったく幸せがなかったなんてないやろ。
 いくらなんでも20年以上生きてきてずーっと不幸でしたなんてありえへんわ。
 不幸ばっかりが目立つから幸せに気づかれへんねん。それだけのことや。
 ツライツライ言うて足元しか見んと生きてるから、それを見過ごしてしまうねん。

 ちゃんと前を向いて生きてみたらええねん。顔を上げて周りを見たらええねん。
 そしたら自分が背負っているもんがもっとようわかるわ。
 不幸と同じだけの幸せを持ってるってことになぁ。
 それを小出しにちょっとずつもらうか、いっぺんにもらうかはあんた次第やけど、
 それは必ずもらえるもんやねんで。
 それだけ人生って絶妙なバランスで出来ているもんなんや。』


そう言われて『あなたに何がわかるの』って反論した時に理紗の妹の話を聞いた。

小学校に上がる数ヶ月前に病気で亡くなったそうだ。

最後まで『お姉ちゃんと一緒に学校に行きたい。もっと生きていたい』って言って息を引き取った。

それから理紗は悲しむよりも妹の分まで生きることにしたという。

『幸も不幸も2倍楽しんで生きていくからちょっと贅沢やな』と笑った顔が忘れられない。


私はその時初めて救われた気がした。何も間違えてなかったんだって思った。

そして雛苺が最後に『ありがとう』を言った意味をその時やっと理解できた。



「金糸雀は理紗にとって妹みたいなものかもね…。」

私がそうつぶやくと理紗はこっちを見て怪訝そうに言った。

「うん? なんか言った?」

「ううん。なんでもない…。」

「なんか悪口聞こえた気がしたんやけど…。」

「えーっ、違うわよ。理紗が妹といるみたいだって言ったの。」

理紗はにっこり微笑む。

「そうやなあ。こんな可愛い妹おったら毎日が楽しいやろなぁ。
 でもな巴、ウチの妹かてカナちゃんに負けへんぐらい可愛かったねんで。
 巴のヒナちゃんなんか足元にも及ばへん。」

「あー、それ酷い。雛苺が聞いたら怒るわよ。」

「だってヒナちゃん、食い意地張り過ぎやねんもん。カナちゃんもすごいけどなぁ。
 くいだおれの人形の横に並べたらめっちゃうけるやろなぁ。」

素直に否定できないだけに二人して大笑いしてしまった。

またしても取り残されたドールがひとり、ポカーンと口を開けて二人を見ている。




                      …つづく。





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最終更新日  2006/12/28 05:39:34 AM コメントを書く
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