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その12 ~夜の風景3~



とりあえず素直に受け入れるのはワザとらしいので最初はわかんないふりからだな。

それで徐々にわかっていった感じで納得するフリだ。

最後にあいつらがどんなオチを用意しているのかわからねえが、騙された事にしてやろう。

確かに推定16歳女子高生(美少女)は魅力的だが、所詮ガキだ。

本来なら俺が過ごすはずだったコンパに比べて格段に劣る。

この際、悪魔人形は無視するにしてもだ。女子高生相手じゃ酒も飲めない。

たぶんテーブルには可愛らしくオレンジジュースでも並んでんだろ。それともコーラか?

いったい俺をいくつだと思ってんだ。干支が一巡しちまってるだろ。



ちくしょー! 今頃は楽しく乾杯でもしているんだろうな。

遅れてきた中川さんに駆けつけ3杯とかさせてるのかもしれない。

くぅーっ。妄想に入ってる場合じゃないな、小芝居しないとな。


「いや、だから、ちょっと待てって。いきなりそんなこと言われてもわかんねえよ。
 もう一度確認するが…。えーっと、じゃあなにか?
 朝までその人魂…じゃなくてセイレイ体とかだったのをわざわざ俺のために
 人間の姿に変えたってえのか? 」


さっきはかなり驚いてしまったが芝居だと思えばなんてことない。

じっくり女(女子高生役)の顔を見ようと思った…が、やはりできない。

チラッと見てすぐに目をそらしてしまった。

ここで見とれてしまうのはマズイ。ただそれだけの理由だ。他意はない、たぶん。



それだけわかってりゃ、後でじっくり拝んでやるさ。

今はいかに動揺せずにこの芝居を続ける方が先決だ。

でも終わったら後で記念写真でも撮るのを忘れずにしておこう。

なかなかこのレベルの美少女と一緒に写真をとる機会なんてないからな。


「はい。マスターのためですから。」





「それでそこの悪魔人形のマスターだから俺のこともマスターだと?」


どうだと言わんばかりの態度で立っているやつを指差す。

別にお前が威張ることじゃないと思うんだがな。


「はい。でも翠星石様は悪魔人形なんかじゃないですよ。
 誇り高きローゼンメイデンの第3ドールです。
 そして私がもっとも敬愛しているお方です。
 いくらマスターでもそんな言い方はやめてもらいたいですね。」


顔は笑っているが目はかなり遺憾を訴えている。

仕方ねえ…。ここは譲るか…。


「あ、わりぃわりぃ、つい本音が…。」

「スイドリーム、気にする事はねえですぅ。
 どうせダメ人間のことですから、言葉の意味も判らず使っているだけですぅ。」

「まあシスターがそうおっしゃるのなら、私はかまいませんけど…。
 私もマスターがそういう人だって知っていますしね。うふふ…。」


なぜだかもの凄く馬鹿にされた気がする。

それよりもほんの一瞬だけだが殺気を感じた方を気にすべきだろうか。


「事情はなんとなくわかったが、その…なんて言うか…。」

「ああ、マスターご心配なく。この身体のことですね。
 私が実体化するというのは細胞レベルまで人間と同じなんですよ。
 ですから誰が見たって構造上は人間そのものなんです。ほらね。」


そう言って女(女子高生役)はくるっと回って見せた。

俺の言いたいのはそんなことじゃないんだが。


「それよりも私って顔とか姿はどこか変じゃないですか? 
 だって、さっきからマスターは目を避けていらっしゃいます。
 私も数百年ぶりに実体化したものですから、ちょっと自信がなくて…。
 服とかもこの時代のはよくわかんないし…。」

「いや、変…じゃないと思うけど、セーラー服ってのはどうかと思うんだが…。」

「これですか? えーっと、てれびとか言うのを見て真似てみたんですけど。
 それとマスターが持ってる書物にも載ってましたし、窓から見える人間たちも
 この服の姿は多いと思いました。
 それでこの国ではこの服が一般的なのかなあと思ったんです。
 私としては実際に着てみてスカートが短いのが気になりますね。
 膝まで見える長さなんて初めてです。でも動きやすいのはいいかもです。」


そう言ってスカートの裾をつまんでひらひらさせた。

あのなー、今時の女子高生っていうのはこういうもんなのかね?

などと考えると自分がかなりおじさんになった気がする。

いかん。これでも20代後半とはいえ思考が老けてる。

かといって、こんなことで萌えとか思う年齢でもないのは確かなんだが…。


複雑な胸中とは裏腹に膝上何センチだろうかと見ていると女(女子高生役)と目が合った。

こいつ…。絶対、わざとだ。

女(女子高生役)はニターと意味ありげに笑い、爆弾をはなつ。


「ああ、中も見たいですか? 一応下着もつけた方がいいとシスターに言われて…。」

「い、いや、いい! べ、別に見たくないから。」


慌てて拒否したがここは後悔するべきとこなんだろうか? とこなんだろうな…。

でも調子に乗るほど恐ろしい事はないはずだ。拒否して正解だろう。

この年齢にして男心を見透かしたような表情は充分将来を憂う…いや有望か!?

少女を通り越して悪女のレベルだな。

役にハマりきってて、素人くささを感じない。そんなとこだ。

ただの小芝居と思ったが、意外と徹底した役作りに敬意を表しそうになる。

どうやらこっちも慎重に対処する必要がありそうだ。

横に立つ悪魔人形のオーラがどす黒く見えるのは錯覚じゃないはずだし。


「そうですか。私はかわいいと思ってたんですけど。ねっ、シスター?」

「スイドリームは恥じらいっていうものを学ぶ必要があるですぅ。
 人工精霊だからいいってものじゃないですよ。
 それにいつまでこんなところにいるですか。早く中に入りやがれですぅ。」


いつもどおりの機嫌悪さに安心してしまうのはこいつと1年間暮らしてきたせいなのか。

認めたくないが習慣ってのは恐ろしいもんだ。


言われるまでもなく、俺も玄関で足止めくってるのは正直いかがなものかと思う。

とりあえず動くことにした。せっかくのケーキがもったいないだろう。


「ほらよ。こいつが頼まれた買い物だ。ちゃあんとケーキもプレゼントもある。」


さっきから翠星石の視線がこればっかりに向けられているんだよな。

じらすつもりは毛頭ないので早く手が楽になるためにも両手いっぱいの
買い物袋とケーキとプレゼントの入った紙袋を差し出した。  


「ほほぉ。ダメ人間にしては珍しいですね。リストどおりに買い物したですか。」

「当たり前だろ。子供のお使いじゃあるまいし。」

「こんなにたくさん! ありがとうございます、マスター。」
 あっ、お荷物お持ちします。」


そういって女(女子高生役)は近づいて俺から荷物をすべて取り上げた。

しゃがんだ時に髪をかき上げる仕草をしたわけだがなんというか…。

これが本物女子高生ってやつの匂いなのか?

香水…というよりシャンプーの匂いか、これは。しかもえらく上等なやつだろ。

嫌味のない優しい甘い香りとでも表現すべきだろうか。

まわりの空気が緊張を解きほぐしたようなやわらかさに染まっていく。

一瞬だがほんのりと香るそれに魅了される。


それにしても干支が一巡するだけで、こうも自分がおっさんに感じられるとは。

まったく女子高生恐るべしってやつだな。


「ああ、悪い。でもこれ結構重いんだが大丈夫か?」

「はい。こう見えても私、かなり力はあるほうですよ。
 マスターなんか片手で持ち上げちゃいます。本当ですよ。うふふふ…。」


そして軽く会釈すると女(女子高生役)は部屋の奥へ消えていった。

その後姿を見送って、ぼうっと考える。

それにしても今時の女子高生というのはああなのだろうか。

いろんな意味でヤバイ小芝居だな。

俺の理性が徐々に侵食されていく感じがする。まずい。

女子高生には興味ないはずなんだが、あの娘はやばいかもしれない。

16歳くらいか…。青少年保護条例とかで捕まっちまう前に止めないとな…。

何を止めるかは想像したくないんだが…って、まだ何もやってないだろ。

昼間の件じゃないが、情熱的刺激的ボディを持て余す美人のほうがいい。

いいのだが、あの女(女子高生役)はそれを充分満たしてる。

制服の上からでも充分それがわかる。しかしだな…。

なるべくなら未成年者とは関わりを持ちたくないもんだが…。


脳内妄想がどんどん膨らんでいく。

ただその中で否定したはずの疑問が再度浮上する。


「それにしても、こいつはなんなんだ…。痛っ!」


悪魔人形が俺のすねを思い切り蹴りやがった。

意識が無理矢理現実に戻される。


「いつまでボケッとしてるですか。さっさと立って動きやがれですぅ。
 パーティの準備が残ってるですから手伝いやがれですぅ。」


心なしか嬉しそうな顔で怒鳴り込んでる顔を見て尋ねてみることにした。


「翠星石…。」

「なんですか?」

「ありゃなんだ…。」

「スイドリームですぅ。自分でそう言ったですよ。翠星石もびっくりしたですけど。」

「人間…なのか…。」

「何言ってるですか、人工精霊ですぅ。」

「そうか…? んんんん…。」


なんにせよたいした事はない。

今朝まで人魂みたいなものだったのが人間の姿に形を変えただけだ。

…って、いくらなんでもそりゃおかしいだろ! いったいなんでだよ!

誰か否定してくれよ!


                         …続く





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最終更新日  2007/04/19 02:59:47 AM
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