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< Scene.1-4>
There are two pines in the hill and there are a master and a doll in the hilltop.




「はぁー。鬼婆伝説ってほんまやったんやなぁ。
 ウチのアニキがここのOBなんやけど、身内にも容赦ないって言ってた。
 かなり厳しいババアなんやて。…って神楽に今さら言うことちゃうか。」

「そうだね…。現実はもっともっと恐ろしいんだから。小野田君、聞きたい?」


伝説は死んだから伝説と呼ばれるのであって、現在進行中である私にはただの体験談だ。

普通、この手の話は大いにはばかられるのだが、他人事のように話をするのは楽しい。

どうせ逃げられない境遇なのだ。少しでも楽しむ要素を見つけなきゃやってられない。




「そりゃ学校以上に厳しいのなんのって…。」

「あ、委員長来た。おおーい! 委員長!」

「ちぇっ、ごまかしたでしょ。」


ムッとした顔で教室では隣席のクラスメイトを見る。

さすがに1ヶ月以上も隣の席にいると要領をつかんでくるみたいなんだろうな。

まあそうやって女の扱いが上手くなれば、それは私のおかげなんだからね。

今日のところは勘弁してあげるわよ。


「こんにちは。あら、神楽さんも一緒なのね。バスはまだ来ていないの?」


後ろから聞き慣れた声をかけられ、振り返る。あら、本当に委員長なんだ。


「そういえばそうやな。もう5分以上遅れてんなぁ。」

「朝倉さんは何してたの? あっそうか、生徒会?」




某アニメのキャラと同姓同名とかいう理由で委員長を任された不遇の女子だ。

正確には名前の漢字が一字微妙に違うということをみんなはわかっていない。


「うん。と言っても生徒会室のお掃除だけしてきたの。」

「そっか、さすが朝倉さんだ。偉いよね。どこかの誰かと大違いね。」


委員長と言う職は必然的に生徒会執行委員を割り振られると聞いた事がある。



隣の席の奴には勤まりそうにないんだけどね。だから言葉のジャブで一発殴る。


「うっせえ。ほら、バス来たで。」

「あー、またごまかした。小野田君ひどい。」


軽くスルーされたけど気にしない。私と朝倉さんは軽く笑いあった。


やがてエンジン音が近づくのが聞こえるとバスの到着を待ち構えていた生徒たちが列を成す。

私達はそれに加わりながらおしゃべりを続けた。

なんて平和な学園風景。平凡だけどそれは幸せなことなのだ。

もし人生をやり直せるならこんな生活も悪くない。

毎日がこんな感じで良い事も悪い事も含めて普通の女の子として生きていけたら…。


なあんて、心にもない事を。

私はそんな人生なんか真っ平だ。意味もなくダラダラと過ごすなんて許せない。

理由はどうあれ人生には目的が必要なんだ。

背負わされた重みに気づけないなんて馬鹿馬鹿しい。その時点で生きる損をしている。

だから私は自分の運命を受け入れた上で生きている。

バスに乗り込みながら、ふとそんなことを思った。


幸運な事にバスの車内は空席が多く、私達は座席に座れるみたいだ。

といってもさすがに教室の外まで隣の席の奴が一緒と言うのは勘弁して欲しいし、
かと言って朝倉さんと並んで座るのも会話がもたない気がする。


「あのさぁ、神楽。ちょっと頼みがあんねんけど…。」


小野田君がひそひそ声で話しかけてきた。だからちらりと睨みつける。


「なによ。」


小野田君の普段見ることがない、はにかんだ笑顔を見てピンと来た。

こいつって意外と純情少年だったりするのかな。まっ、いいか。

理由も聞かずに隣席のよしみで気を利かせてあげることにした。


「朝倉さん。私、バスって弱いの。だから前のほうに座るね。
 あっそうそう、小野田君がね、ハゲチャビンにいいものもらったんだって~。
 見せてもらったら? すっごいのよー! 」

「いいものって? なあに?」

「お、おいっ! 神楽! その話はあかんやろ。」

「あー、私には自慢したくせに、委員長には隠すんだ。いいじゃない、見せてあげても。
 ほらバスが動くから早く座んないと。お幸せに~。」


もちろんただで気を利かすはずなんかないってものよ。

うん、がんばれ少年。恋は茨の道っていうもんね。

手で口を押さえて笑いを堪えながら前のほうの空いている一人用の席に座る。

座った途端にいいタイミングでバスが動き出した。


私的には結果オーライなのかもしれないな。

どちらかと言うと臨席の純情少年より委員長の方が苦手だったりする。まあそんな理由だ。

小野田君も憧れの委員長の隣に座れたんだから、そのほうがいいだろう。

女としては悔しいけど朝倉さんの方が美人だしね。

私みたいなちんちくりんと比べるべくもないけど……、ちんちくりん?

否定したいが客観的に見てそう思うのだから仕方ない。はぁー。


重いため息と共にバスは走り出す。

今は色気より食い気。花より団子なんだ。流れる景色に懸命に言い訳する。

バスはしばらく走って大きく右に曲がると、やがて切り立った林を抜ける道にさしかかった。

少しだけ窓を開けて風を感じる事にする。

梅雨入り前だけどまだ充分に爽やかな風が緑の匂いを伴って流れ込む。

風が気持ちよくて、ちょっとした遠足気分だ。



むっ!?

まただ…。鞄の中の大魔法使い様が暴れだした。

せっかくのいい気分なのにさ、この子はどうしてぶち壊すのかな?

もう無視無視。相手してあげない。

視線を流れる緑に移してぼんやりとすることに決めた。

余計な事は考えない。通学の見慣れた風景だけどこの林の区間だけは飽きないしね。


「ん!? 何か光った?」


一方的に後ろに流れる木々の奥で違和感のある光が見えた気がした。


 to be continue…






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最終更新日  2007/07/27 03:36:35 AM
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