おとぼけ香港生活から脱皮

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「ココバナその3~金華ハムを救え~」

前日記 からの続き)
他の荷物の上にでんっと居座り
あたかも自分の存在を主張するかのように
隠し持ってきた金華ハムが
中年おっちゃん税関員の目に
「まさに!!」という感じで止まった。

なんと、金華ハムがオーラを発しているのだ。


私は鼓動が早まるのと同時に
自分の顔が一気に紅潮するのがわかったが
ポーカーフェイスを作り上げるという
私の使命の元、
おっちゃん税関員の目に映る私の顔が
赤かろうが私はポーカーフェイスを
作り続けた。


おっちゃん税関員も
何故かイケナイものを見てしまったと
いうような気さえする。
自分は客が言ってきてた味の素の白い粉を
確認したいだけだったのだと言いたげな
困った顔をしていた。

そして、おっちゃん税関員はさり気なく
カバンの中を見回し
金華ハムとは違う物に興味を示す振りをし、
最後にやぱい物と知っている
金華ハムに手を伸ばしてきた。
私の鼓動は一気に最高潮に達し
そして、さり気ない口調で
おっちゃん税関員が口を開いた。


税「・・・ん~・・これは何かなぁ?」

と言いながら真空パックされた金華ハムを
嘗め回すように手の上でこねくり返していた。
顔は真剣だが、その口調は未だに幼稚園児扱いである。

そして、私の中で出川哲郎が「やばいよ、やばいよ」と
言っている。


税「・・ん~、なんだろうなぁ?(コネコネ)」

私「・・んんんん?それは・・・」


ぐををををぉぉぉ~~、こうなったら・・・


更に首を傾げながら私は答えた。


私「・・それは・・ んん??なんでしたっけぇねぇ?」

税「う~んん・・・」←(未だに手の上で嘗め回している)

私「ええとぉ・・ なんだっけなぁ~???」

税「んんんん・・」←依然、唸ったまま

私「んー、・・・何だったか忘れちゃいましたねぇ・・・」


と白々しくそれが何だったのか
自分でも皆目検討がつかないことを
さり気なく主張したのだった。
私が正直に答えないことに
おっちゃん税関員は納得できないようでもあったが
私は金華ハムを手に持つおっちゃんの次の反応を待った。


税「・・・・・ま、いっか!」


中身が何であるか気づいている
おっちゃん税関員が諦め口調で、
いや、すっとぼけねーちゃんとのやり取りを
本当に観念したかのようにそう言うと、
手に持っていた金華ハムを
私のスーツケースの中に返した。

『ま、これはオマケだからね!』と
言いたげの雰囲気である。

こんな突拍子もない出来事が出てきてしまったので
結局はおっちゃん税関員は味の素の存在すら
忘れてしまったようだった。
味の素を確認されぬまま
私は出口に向かった。



ラッキ~~~♪


でも、なんでスーツケースを開かなければならなくなったかを
考えた時、
ガラガラに空いた税関に行く足を一旦止め、
誰にしようか迷っていたからだと私は思った。

こういう怪しげな行動をしていた客(私)を
ベテランおっちゃん税関員は見逃していなかったのだ。
侮れません、税関員。


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