北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

2004.11.27
XML
日本企業の多くは中国企業との取り引きで、代金がもらえない、つまり売掛金が回収できない、という心配をされていると思います。歴史的にも、日本のリース会社が700億円以上もの代金を踏み倒されてしまった、しかも中国の地方政府とグルで(!?)、というできごとがありました。中国企業にモノを売っても、代金を支払ってもらえないかもしれない、と考えるのももっともです。

ですから、一部の日本メーカーは問屋や小売店に商品を卸すときに、ニコニコ現金取引を原則としたりします。よほど競争力がある商品なら別ですが、フツーは問屋も小売店も現金の前払いなど嫌がりますから、売掛金の回収を心配して現金取引を前提とすると、当然販路が狭くなってしまいます。

そもそも、中国企業の財務(フィナンシャル)担当者は、「支払う必要のない代金はできるだけ支払わない、支払う必要のある代金でもできるだけ遅く支払う」という考えを持っています。支払いを少なくし遅くすることは、財務担当者の技量だとすら考えられています。もちろん、どこの国の企業であっても、不必要な代金は払わないでしょうし、支払いも遅ければ遅いほど良いに決まっています。でも、中国の場合は特に顕著なのです。

日本企業では、請求書ベースで会計上の処理が行われるのが一般的でしょう。請求書を発行した時点で売掛金になりますし、請求書を受領した時点で買掛金、つまり負債になります。ですから、日本の営業マンは請求書を提出した時点で、入金が保証されたように思い込むことすらあります。
でも中国では、請求書など実際は何の役にも立ちません。「発生主義」という国際会計基準を採用しているグローバル化した企業でさえも、心理的には「現金主義」のままです。つまり、現金のやり取りこそすべてで、「お金を払ってください」とお願いする請求書よりも、「実際にお金を支払いました」という領収書のほうが重要になるのです。

では中国企業(の財務担当者)が考える「支払う必要があるお金」とはどういうことでしょうか?
日本人ならモノを買ったり、サービスの提供を受けたりして、請求書を受け取った時点で「支払う必要がある」と思うでしょう。ところが中国の場合、法律上は別として、現実的には請求書などただの紙切れであって効力がありません。
契約書と納品書がしっかり整っていてこそ「支払う必要があるお金」になるのです。
契約書は、通常取り引きを始める前に取り交わします。仕事の内容、その対価(金額)、そして支払い時期を両者で約束することは万国共通です。納品書は取り引きが終了した際に取り交わします。仕事が契約書の内容どおり履行されたことを、両者で確認し合った証拠文書になります。


取引先の署名捺印済みの契約書と納品書があって、はじめて支払いを督促できる条件が整います。かと言って、支払期日までただ待っていれば入金が約束されるわけではないのです。
ここまで証拠書類が整っていれば、さすがの中国企業も、潰れかかってでもいない限り、そのうち支払わなければならない、とは思うでしょう。でも期日通りに支払おう、とは思っていないかもしれません。ですから定期的に、期日までの支払いを督促し続ける必要があります。これは取り引きの担当部門だけではなく、取引先企業の財務部門にも並行して行う必要があります。支払いの件がで財務部門にまで伝わっていない場合もありますから、場合によっては取引先企業の社内調整までやる必要があります。
遠慮がちの日本人には無理な仕事でしょうから、押しの強い中国人スタッフに委ねてしまいましょう。

最後の手段は、領収書の発行と提出です。
中国では公給領収書の管理が非常に厳格です。発行する側は乱発できませんし、受け取る側も経費処理の際に当然必要になります。お金をいただく前に領収書をお渡しするのは、できる限り避けなければなりませんが、取引先の財務担当者から「領収書をもってこい」と言われたら、しめたもので、支払いの日も近いはずです。契約書に記載された支払期限の日付で公給領収書を用意しましょう。取引先としては、この代金を原価や経費として会計処理する際には、その公給領収書が必要なのです。しかも、3ヶ月ごとに税務当局のチェックを受けますから、日付がズレるといろいろ面倒なことになります。
契約書も納品書も完備されている「支払う必要があるお金」で、支払期日付けの領収書も用意されている、とすれば、取引先の財務スタッフも、わざわざ会計処理を面倒にしてまで、支払いを引き伸ばそうとは考えないでしょう....

基本の基本と言ってしまえばそれまでですが、しっかり契約書を取り交わし、納品書にも必ず取引先の署名捺印をいただき、期日前であっても絶えずリマインダーをぶち、支払期日付けの公給領収書をちらつかせる....取引先の財務担当者に隙を与えない対応をしていれば、きっと期日通りに代金が支払われる可能性が高くなるはずです。

もちろん、取引先に支払い能力が無ければ、何をしようが、裁判で勝とうが、無理です。もうこれは、取り引きを始める前に、わかっていなければならないことですが....





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004.11.27 07:04:28
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

ぺきんのぐっち

ぺきんのぐっち

Comments

市松 通りすがりですが・・@ Re:究極の(!?)Buz Marketing in China 権力者の有無に関係なくネット掲示板を動…

Archives

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07
2025.06
2025.05
2025.04
2025.03
2025.02

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: