北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2005.01.21
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上海カネボウの"出勤拒否"と"販売中止"について、だいぶ状況が見えてきました。私の推測どおり、日本の本社と"現地化"された現地法人との"温度差"とコミュニケーション不足が招いた悲劇の様相を呈しています。

中国での報道 (SOHU=典型例) 、知人からの情報を総合すると、事情は以下のようです。
本社のゴダゴダもあったのでしょうが、ここ4~5年カネボウは、中国での販売事業を、日本本社籍の中国人総経理(社長)に任せっぱなしにしていました。その中国人総経理のもとで社員も頑張って、業績が上がっていったのです。ところが、日本の本社では、中国の大手製薬会社と組んで北京に新たな現地法人を設立しようとしていたのです。直前になって知らされた中国人総経理の"想い"はいかなるものだったか、容易に想像がつきます。
北京での新会社の設立に、上海の上層部はネガティブに反応したことが、日本の本社の不信を買ってしまい、いろいろ調べ始めたようです。そして販売ライセンス問題が発覚して、上海の総経理は更迭(日本の本社に異動ということですが)、日本から新たに日本人の総経理が送り込まれてきたという感じです。こうした日本本社の対応に、上海の上層部だけではなく一般スタッフも強く反発して"出勤拒否"に及んだわけです。

日本の企業は、中国事業における"現地化"を口にしています。業種によって意味に若干の違いはあるでしょうが、人材も資材も顧客もできるだけ中国国内で調達していこう、と言う考え方です。この点に関して私はまったく正しい方向だと考えています。特に"人材"について言えば、中国人スタッフのマネージメントは中国人しかできないと思いますし、販売や許認可取得においても日本人がやるよりずっとうまく行くはずですから、"ローカルマネージメント"を推進する日本企業は多いようです。様々な判断も現地に委ねて進めていくほうが、いくら頑張っても中国の状況についていけない日本の本社がいろいろ口出しするより、うまく行くことのほうが圧倒的に多いでしょう。
そうした観点から考えると、問題発生前の上海カネボウは理想的に"現地化"を推し進めていた、と言えなくも無いのです


日本の本社の関与度が低ければ低いほど、現地主導で迅速で柔軟な対応が可能です。しかし、日本の本社と現地との意思疎通が疎かになってしまい、日本と現地との考え方が次第に乖離してしまい、日本の本社としては思いもしなかった方向に現地法人が進んでいくことになりかねません。基本戦略は日本と現地とで十分すり合わせを行い両者同意の下で決定しつつ、戦術については現地に決定権を委ねることが"現地化"であるわけで、基本戦略のすり合わせも行われず或いは日本の本社の基本戦略が現地にきちんと伝えないまま、現地に任せっぱなし、では"土着化"を招くことになるでしょう。


今回の事件について、日本のマスコミは「ライセンス問題による自主的な販売中止」という基調で報道していますが、中国の報道は「人権侵害」「社員による販売中止」「日本側の圧力」という文字が目立っています。中国のマスコミ対策も現地社員のほうがうまいに決まっています。中国におけるブランド・イメージはがた落ちでしょう....
日本の価値基準で言う"問題"は必ず起こるものと覚悟して、その解決にあたっても現地の意見を十分尊重することが大切だと思います。意思疎通と相互理解無くして"現地化"などあり得ないと思うのです。





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Last updated  2005.01.21 14:38:43
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