北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2005.08.23
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広告の仕事に関して言えば、中国のやり方は欧米に近いです。逆に言えば、国際的に見ると日本だけが異質です。

1年間や3年間のブランド戦略を一つの広告会社に委ねる大きなものから、新製品のパッケージやネーミングを決めるものまで、大小さまざまな規模のピッチが繰り返されます。

ウチの会社は中国の著名ブランドのクライアントが多く、クライアントの組織も欧米企業に近い形になっています。広告宣伝を含むマーケティング活動は、マーケティング・ディレクター(MD)が責任者となります。また、ブランド戦略については、ブランド・ディレクターやマネージャーが責任者として立つ場合もあります。戦略的新製品だったり、長期間パートナーとなる広告会社を決定するような会社の将来を左右する重要な案件については、さらに上層部(総経理や総裁やCEOや董事長)などが決定権者になることもありますが、通常の業務はマーケティング・ディレクターが決定します。

ピッチの際には、クライアント側の決定権者が必ず参加して、広告会社のプレゼンテーションを受けます。プレゼンテーション後の質疑応答も実務的に突っ込んだレベルで行われ、その場で決定権者がそのプレゼンテーションを評価することも多いのです。
ですから、ピッチの結果もすぐ出ます。決定権者がプレゼンテーションに参加しているわけですから、その後の修正意見なども速く、スグに実施できる体制が整います。

大半の日本企業でも、本社ではマーケティング・ディレクター制を敷いていますが、中国法人ではまだ普及していませんし、マーケティング・ディレクター制を採っている企業でも、中国地域の"リージョナル・マーケティング・ディレクター"と言う感じが強く、権限が制約されます。ブランド・マネージャーの場合は権限と責任が更に限定的になる場合が多いようです。
ピッチの際には、通常マーケティング・ディレクターが参加します。しかし彼(彼女)が最終決定権者では無いのです。
中国法人の責任者(総経理や董事長)に上申して判断を仰ぐ場合、或いは本社のマーケティング・ディレクターに報告して判断してもらう場合、或いはその双方と相談して意見を調整し決定していくような場合、などがありますが、マーケティング・ディレクターがその場で決定できる範囲はごく限られています。


ピッチが終わっても、結果が出るまでには時間がかかります。中国のマーケティング・ディレクターは各広告会社からのプレゼンテーションを自分なりに整理して、評価して、想定される上司への質問に対処する準備を行わなければならないのです。もちろん、ディレクター一人がこの作業を行うのではなく、マーケティング部門の担当者まで借り出されるでしょう。上司からの質問を想定して広告会社に再度質問したり、社内の"通り"がスムーズに行くように修正を求めたりします。そして、社内プレゼンテーションを行うわけです。
このプロセスには時間と労力がかかります。そして、最終決定権者が広告会社のプレゼンテーションを直接は聞いていないのですから、マーケティング・ディレクターの社内プレゼンテーションの如何によっては、広告会社の意図が正確に伝わらず、実施段階でトラブルを引き起こすことにも繋がりかねません。

もちろん、こうした日本企業がすべてではありません。ローカライズが進み、国籍を問わず現地のマーケティング・ディレクターの多くの権限を委譲している企業もありますし、総経理など最高決定権者がみずからピッチに参加する企業もあります。ただ、こうしたプロセスで進めている日本企業の中国法人がまだ多いのも事実です。

こうした状況は、ビジネスの速度と言う面で圧倒的に不利です。プロセスを経る決定の仕方は日本のお得意芸かもしれませんが、スピード面では不利としか言いようがありません。
決定権者の参加しない会議は中国では必要無い、とまでは言いませんが、参加者のテンションとモチベーションを大きく引き下げてしまいます。

また、クライアント企業にとって、
(1)ローカライズ(現地化)が進まない。従って日本人を含む現地社員のモチベーションが高まらない。
(2)社内効率の低下。社内プレゼンテーションのために中間管理職が煩雑な準備作業を強いられる。
と言う点でもマイナスです。
もちろん広告会社にとっても、決定権者に直接プレゼンテーションできないのはフラストレーションになりますし、決定をいただいてないのに修正を強いられたりするのも理不尽な感じがしてしまいます。
お互いに非効率なお仕事と言うことになってしまいます。







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Last updated  2005.08.23 17:55:54
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