北京ビジネス最前線改め中国ビジネス後方基地

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2006.06.14
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前回に引き続き、代金回収についてのお話です。
中国では、支払期日が遅れることを覚悟するくらいの度量は必要な気がしておりますが、不良債権化してしまい、 回収不可能になっては、元も子もありません....。

当たり前のお話ですが、 代金回収において最も有効な対策は、前金か現金で取引することです。
最も有効ではありますが、簡単なことではありません。前金を払ってでも手に入れたい商品やサービスで無ければ、中国の取引先は易々と前金払いなどしてくれるはずはありません。コンシュマー向け商品ならば、ブランド力があって、消費者からも強い引き合いがなければ無理でしょうし、B to Bならば、オンリー・ワンくらいの技術力やサービス力が伴わないと、前金取引きは難しいはずです。中国の経営者の多くは、支払を引き伸ばすことが、有効な経営術だと思っていますから....。

前金取引きに固執するあまり販路を広げられず、店頭に並ばない日本ブランドの商品がたくさんあります。 ウリスク・ロウリターンの典型みたいなお話ですが、前金取引きには限界があり、後払いの信用取引をしている企業が大半のはずです。ですから、支払の遅延や 売掛金の不良債権化への対策と心構えが必要 だと思います。

前回ご紹介した広告会社オグルビーのように ほぼ 最終的な対策 となります。
オグルビーの場合は、恐らく 相手先をメディアに曝してプレッシャーを与えるというパブリシティ効果も期待 して、いきなり法院(裁判所)に提訴したようですが、一般的には仲裁委員会に調停を求めるケースが多いようです。契約書の中で「問題が生じた場合、所轄の仲裁委員会の調停によって解決する」と記載する場合が多いからです。もちろん双方が同意すれば、「法院(裁判所)で紛争を解決する」という契約にしても構わないのですが、中国企業(或いは弁護士)は、仲裁委員会での調停を望むことが多いようです。

仲裁委員会に調停を求める
代金未払い事案の場合、 契約書が整っていて取引きのエビデンスがきちんと提示できれば、ほとんどの場合、"勝訴" 、つまり「早くお金を払ってやりなさい」という裁定が下るはずです(債権の全額認められるとは限りませんが)。双方がその裁定に同意すれば、支払期限や金額などを明示した双方合意の調停書が仲裁委員会によって作成されます。 これで、一件落着.....。

というわけにはなかなか行きません。 仲裁委員会には強制執行権が無い からです。
<支払をできるだけ遅らせようと企んでいた>どちらかと言うと"好意的な債務者"であれば、じたばたせずに調停書どおり支払うかもしれません。でも<もともと支払う意志の無い>"悪質な債務者"の場合、調停書どおりにやすやすと支払うことはないでしょう。
ですから、仲裁委員会で債権者側の主張が認められたからと言って、債権が回収できると安心してはいけないのです。

債務者に仲裁委員会の調停どおり支払う意志が無いようでしたら、法院(裁判所)に訴えるしかありません。法院(裁判所)の判断に逆らえば、刑事罰が待っています。
ところが、法院(裁判所)に提訴したから一安心、というわけにも行きません。 "悪質な債務者"の場合、このあたりの段階で"支払い能力"が無くなってしまっている ケースが多いのです。無くなるのではなく、 故意に 無くしているのですが。
つまり仲裁委員会に招聘されたあたりから着々と準備を進めて、提訴された企業を解散・破産させたり、別の会社に資産や事業を譲渡したり、法人代表の個人資産を親戚や知人に移転したりします。
債権者側が裁判で勝訴したとしても、債務者側に"支払い能力"が無ければ、強制執行も刑事罰も逃れてしまい、債権は回収不能に陥ってしまいます。 仲裁委員会で有利な調停を得ても、裁判で勝訴しても、取りっぱぐれる時は取りっぱぐれてしまう
なお、いきなり法院(裁判所)に提訴したとしても、"悪質な債権者”の場合、同じような状況に陥ってしまいます。

そこで知人の中国人弁護士さんからお聞きした、ちょっとだけ有効な対策をお教えします。
仲裁委員会に調停を申し込むと同時に、債務者の資産(金融口座)を差し押さえる(凍結する)という方法 です。口座差し押さえには法院(裁判所)権限による強制執行が必要になりますが、仲裁委員会への調停申請内容の合理性が高い場合、債権と同じくらいの金額の供託金(保証金)を用意することによって可能になるようです。供託金は債権の査定に差が出た場合、その分の利息に充てられますが、調停で100%債権が認められれば、全額返金されるとのこと。
仲裁委員会は債権者側が調停を申請すると、一週間ほどで債務者側に通知し招聘をかけますから、その一週間のうちに債務者側の金融口座を差し押さえることに成功すれば良いのです。債務者の金融口座に債務以上の残高があれば、債務の金額分の引き出しができなくなります。ここまでしてしまえば、債務者は仲裁委員会の調停金額を支払わざるを得なくなるはずです。
ただ、仲裁委員会の調停が下る前に、法院(裁判所)に資産差し押さえをしてもらうわけですから、債務者側の金融口座の情報など債権者側の準備も大変ですし、 それなりのコネクションやパワーが必要

端的に言ってしまえば、 契約書や取引きのエビデンスを完璧に整えておくのは基本の基本 で、あとは 仲裁委員会や法院(裁判所)と強いコネクションを持つ弁護士さんを確保する ことが肝要、ということでしょうか....。





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Last updated  2006.06.14 21:17:29
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こんにちは  
げん さん
これについては私も書こうと思っていて、今編集者のところに丁度原稿があります。私としては、取引前に信用調査を行って、相手の身元がしっかりしているか、財務状況はどうかということを知り、相手を観察することを私は薦めています。
裁判や仲裁は薦めません。裁判にまで持ち込まれるようなケースでは大方他にも債務があるでしょうし、銀行口座を差し押さえるにしても、銀行からその企業が借金をしているケースも多く、その場合には銀行が優先になってしまいますよね。弁護士費用が損になるだけです。まあ、しつこく中国人スタッフに通ってもらうとかが、現実的な策でしょうね。 (2006.07.01 13:41:14)

Re:こんにちは(06/14)  
げんさん、コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、事前にしっかり信用調査を行って、怪しげなところとは取引きしない、というのが王道だと思っています。
ただ現実的には、少々のリスクを払ってでも取引きを行わなければならないケースも出てきたりしますし、信用情報の信憑性にも注視せざるを得ないケースもあります。
訴訟や仲裁申し立ては、取りっぱぐれたときの最終手段という感じではないでしょうか。 (2006.07.11 18:37:38)

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